日本オリンピック委員会(JOC)は1月11日、東京芸術劇場コンサートホールで「オリンピックコンサート2020 プレミアムサウンドシリーズ」東京公演を開催しました。
オリンピックコンサートは、全世界で行われているオリンピックデーイベント(オリンピックデーは6月23日)の一環として日本独自に開催しているイベントです。スポーツファンのみならず、普段スポーツやオリンピックに親しみのない方にもオリンピックの価値や素晴らしさを実感してもらうことを目的に、JOCのオリンピック・ムーブメント事業として1997年より毎年開催しており、感動的なオリンピック映像と壮大なシンフォニーオーケストラの共演は、毎年多くの方にご好評いただいています。
「オリンピックコンサート2020 プレミアムサウンドシリーズ」は、およそ半年後に迫った東京2020大会への機運醸成と日本代表選手へのエールを全国で呼び起こすべく、JOCゴールドパートナーである株式会社三井住友銀行のご協力の下、今回の東京公演からスタートし、全国6都市での開催を予定しています。
本公演は昨年のオリンピックコンサートに続き「輝く夢に向かって」をテーマに、指揮は海老原光さん、演奏は「THE ORCHESTRA JAPAN」が担当。オリンピアンで俳優の藤本隆宏さん(水泳/競泳・1988年ソウルオリンピック、1992年バルセロナオリンピック出場)がナビゲーターを務め、ゲストオリンピアンとして有森裕子さん(陸上競技・1992年バルセロナオリンピック銀メダル、96年アトランタオリンピック銅メダル)、星奈津美さん(水泳/競泳・2012年ロンドンオリンピック銅メダル、16年リオデジャネイロオリンピック銅メダル)、小谷実可子さん(水泳/シンクロナイズドスイミング※ 1988年ソウルオリンピック銅メダル、92年バルセロナオリンピック出場 ※現アーティスティックスイミング)が参加しました。
コンサートは、1964年10月10日の東京オリンピック開会式で高らかに鳴り響いた今井光也作曲『オリンピック東京大会ファンファーレ』で開幕。続いて、同じく東京1964大会開会式の選手入場行進の際に演奏された古関裕而作曲『オリンピック・マーチ』に合わせて、ゲストオリンピアンの有森さん、星さん、小谷さんが観客の皆さんからの盛大な拍手に迎えられて入場しました。
コンサートの本格的なスタートとなる3曲目は、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲の歌劇『運命の力』序曲。オペラの傑作としても人気が高い名曲に乗せて、スクリーンでは日本が東京1964大会を通して世界に示した戦後からの真の復興の様子を当時の映像で紹介。高速道路や新幹線に代表される高度成長期の社会、旧国立競技場の建築、街を挙げての聖火リレー、そして日本人アスリートたちの活躍を含めた東京1964大会の開幕から閉幕までが映し出され、東京1964大会の歴史が凝縮されたプログラムとなりました。
4曲目は、映画『E.T.』からジョン・ウィリアムズ作曲『地上の冒険』。映画で描かれた異星人と地球の子供たちの時空を超えた交流のストーリーをなぞるように、映像では1968年メキシコオリンピックから前回の2016年リオデジャネイロオリンピックにかけて世界中を熱狂させたアスリートたちの夢の軌跡、名シーンがおよそ半世紀の時空を超えて共演。かつてのオリンピックの感動と興奮がよみがえる演出となりました。
第1部の最後となる5曲目は、ミハイル・グリンカ作曲の歌劇『ルスランとリュドミラ』から序曲を演奏。明るく軽快なリズムに乗せて、星さんの競泳をはじめ、柔道、陸上競技、レスリングなど、日本代表選手団として史上最多となる41個のメダルを獲得したリオデジャネイロオリンピックを振り返る映像が次々と展開していきました。
第2部は、ジャック・オッフェンバック作曲の喜歌劇『天国と地獄』序曲でスタート。ここではライバルたちの熱きドラマをテーマに、友情のメダルとして感動を呼んだ1936年ベルリンオリンピック男子棒高跳の西田修平さんと大江季雄さん、競泳男子の萩野公介選手と瀬戸大也選手、柔道の山下泰裕JOC会長と斉藤仁さん、また陸上競技男子100mのアメリカ対ジャマイカなど古今東西のライバル物語の数々が、運動会などでもおなじみのフレーズに合わせて映し出されていきました。
次に行われたトークコーナー「輝く夢に向かって」では、ゲストオリンピアンの有森さん、星さん、小谷さんがステージに登壇。自身の現役時代を振り返り、オリンピック出場までの道のり、オリンピックを通して得た経験など、それぞれ思い出話やエピソードを交えながら話しました。
そして、この日で残り195日と迫った東京2020大会に向けて、有森さんは「マラソンは札幌で開催されることが決まりました。コースが東京よりもフラットになることで高速レースになり、男女ともオリンピックレコードが出るのではないかなと思います。日本の選手、世界中の選手が北の大地を走る姿と、東京2020大会でオリンピックレコードが出ることをぜひ楽しみにしていただければと思います」とマラソンの見どころと展望を解説。一方、星さんは「現在の競泳チームのエースは瀬戸選手ですが、休養から戻ってきた萩野選手も復活してきています。先ほどの映像でも紹介されていましたが、もう一度、この東京の大舞台で2人の対決が見たい」と話すと、「私もそうでしたが、悔いを残さずに日々を過ごしていけば、自分が出した結果に納得できると思います。選手の皆さんにはそういう思いで過ごしてほしいですし、応援しています」と東京2020大会を目指すアスリートへエールを送りました。
また、小谷さんは1998年長野冬季オリンピックから長年携わってきたオリンピック招致活動について「ジャック・ロゲ前IOC会長の『TOKYO』という発表がついこの間のことのようです。コンサートの映像でアスリートの極限の努力の姿を見ましたが、東京2020大会招致メンバーの努力も本当に極限でした」と振り返り、本番の東京2020大会では「応援する皆さんと参加する選手と、もっともっと大きな形でワンチームになりたい」と、全員団結を呼びかけました。
トークコーナーが終わり、この日の7曲目に演奏されたのはピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲の幻想序曲『ロメオとジュリエット』から。ここでは力強い調べの音楽とともに、有森さんをはじめ、サッカー、バレーボール、体操、バドミントンなど、夢を諦めなかった日本人アスリートのレジェンドたちにスポットを当てた映像が展開されました。そして、東京2020大会を目指すアスリートをはじめ、すべての人たちの夢が輝くようにという願いを込めて8曲目に演奏されたのは、映画『ミッション』からエンニオ・モリコーネ作曲のメインテーマ。情感あふれるオーボエの旋律や後半パートのNHK東京児童合唱団の歌声に乗せて、卓球、バスケットボール、フェンシングのほか、新たに実施される空手道、スポーツクライミング、サーフィンなど、東京2020大会に向けて懸命に努力するアスリートたちのシーンが次々と映し出されると、会場からは大きな拍手が送られました。
最後は、NHK東京児童合唱団がスピロ・サマラ作曲の『オリンピック讃歌』を合唱し、華やかにフィナーレ。鳴り止まない拍手の中、アンコールではモリコーネ作曲の映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマが演奏され、スクリーンの映像は小谷さんも携わった東京2020大会招致活動から開催決定までの道のりから始まり、有森さんを指導した陸上競技の小出義雄さん、アーティスティックスイミング日本代表の井村雅代ヘッドコーチ、新体操日本代表の山崎浩子強化本部長ら指導者やトレーナー、また家族の視点で展開。東京2020大会はアスリートのみならず、それを支えるすべての人たちの輝く夢であるというメッセージを伝え、2時間に渡るコンサートは盛況のうちに幕を閉じました。
「オリンピックコンサート2020 プレミアムサウンドシリーズ」の次回公演は、2月2日(日)愛知県芸術劇場コンサートホールで開催します。
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