日本オリンピック委員会(JOC)は8月3日(土)、埼玉県川越市のウェスタ川越 大ホールで「オリンピックコンサート2019 in 川越」を開催しました。オリンピックコンサートは、全世界で行われているオリンピックデーイベント(オリンピックデーは6月23日)の一環として日本独自に開催しているイベント。感動的なオリンピック映像と壮大なシンフォニーオーケストラの共演は、毎年多くの方にご好評いただいています。
2015年から4年続けて川越での開催となった本公演は「輝く夢に向かって」をテーマに、指揮は粟辻聡さん、演奏は「THE ORCHESTRA JAPAN」が担当。元NHKエグゼクティブアナウンサーで夏と冬を合わせて計14回のオリンピックに携わった工藤三郎さんがナビゲーターを務め、ゲストアスリートとして、2016年リオデジャネイロオリンピックに出場した中村知春選手(ラグビーフットボール)、プロゴルファーの中嶋常幸さん、深堀圭一郎さんが出演しました。
コンサートは、東京1964大会のために作られた今井光也作曲『オリンピック東京大会ファンファーレ』で開幕。続いて、同じく東京1964大会開会式の選手入場行進で演奏された古関裕而作曲『オリンピック・マーチ』に合わせて、ゲストアスリートの中村選手、中嶋さん、深堀さんが観客席の皆さんの拍手の中、会場を回り、挨拶をしました。
続く3曲目のジュゼッペ・ヴェルディ作曲の歌劇『運命の力』序曲では、はじめてアジアで開催されるオリンピックとなった東京1964大会に向け、高速道路の建設や新幹線の開通など交通機関の整備が進んでいった様子や、旧国立競技場が建てられていく模様など、戦後の焼け野原から急激に復興が進む、そして活力にあふれた当時の日本の状況が映像で紹介されました。
4曲目は、映画『E.T.』でおなじみのジョン・ウィリアムズ作曲『地上の冒険』。約40年前に公開されて以降、今も多くの人に愛される映画のように、オリンピックでの数々のドラマは人々を魅了し続けています。映像ではカール・ルイス選手が1996年アトランタオリンピックの走幅跳で獲得した自身最後の金メダルや、世界中が注目したウサイン・ボルト選手のオリンピック3大会連続3冠達成など、東京1964大会以降のメキシコオリンピックから、中村選手が出場した2016年リオデジャネイロオリンピックまでの夏季オリンピックの名シーンが映し出されました。
第2部は、セルゲイ・ラフマニノフ作曲『交響曲第2番ホ短調作品27から第3楽章』でスタート。全4楽章の中で最も有名な美しい緩徐楽章にのせて、日本で初めて冬季オリンピックが開催された1972年札幌オリンピックから2018年平昌オリンピックまで冬季オリンピックでの名勝負にスポットが当てられました。日本中が沸いた1998年長野大会でのスキー・ジャンプ団体の大逆転劇、伊藤みどりさん、荒川静香さんから羽生結弦選手まで歴代のフィギュアスケーターの華麗な演技など、雪と氷の夢の舞台に繰り広げられた美しく、スピード感ある競技映像が展開されました。
次に、川越市の川合善明市長、川越市議会の三上喜久蔵市議会議長、川越商工会議所の立原雅夫会頭、霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村希一理事長が登壇。川合市長が川越駅前の周辺施設やアクセス道路の整備を進めていることや、海外からのゲストに全ての言語で対応できるような体制作りを行っているなど、東京2020大会に向けての準備状況を説明。また、木村氏が「しばらくプレーをしていなかった方や、若い方がオリンピックを機会にゴルフに関心を持ってくれることを期待しています」と、大会への思いを述べました。
続くトークコーナーにはゲストアスリートの3人が登壇。中村選手が2016年リオデジャネイロオリンピックの出場について「アスリートにとっては何があってもオリンピックは人生のハイライトになります。映像を見て、芝生の匂いや聞いていた音楽など全てを思い出しました。本当に聖地のような場所です」と話すと、東京2020大会へ、「先日は会場となるスタジアムでの練習も行いましたし、暑さ対策もしています。リオデジャネイロオリンピックも経験しましたが、自国開催の来年には特別な思いがあり、気合が入っています」と、意気込みを語りました。
次にゴルフ競技の話になると、中嶋さんが前回のリオデジャネイロオリンピックを振り返り、「優勝したジャスティン・ローズが金メダルを首にかけてもらっていた時には、全米オープンに勝った時とは違う笑顔、喜び方をしていました。やっぱりオリンピックは特別な物だと感じました」と語ると、「松山英樹選手はじめ、メダルを狙える日本人選手がいますし、世界のトッププレーヤーも素晴らしいプレーを見せてくれると思います」と、来年の展望を述べました。また、深堀さんが会場の霞ヶ関カンツリー倶楽部について「日本ジュニアゴルフ選手権競技の会場で、学生時代は本当に憧れの場所でした。そこが会場になるのは特別な思いがあります」と話すと、「地元というと石川遼選手は埼玉県出身ですし、さらに2018年賞金王の今平周吾選手はコース近くの出身です。彼は特に来年へかける強い思いを持っています。代表争いはこれから激しくなると思いますが頑張って欲しいです」と、埼玉県出身の選手への期待を語りました。
この日の6曲目に演奏されたのはピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲の幻想序曲『ロメオとジュリエット』。夢を諦めずに怪我や挫折を乗り越え、栄光を勝ち取った日本人アスリートたちの喜び、その裏にあった苦悩と葛藤にフォーカスした映像が展開していきました。
続く7曲目のエンニオ・モリコーネ作曲、映画『ミッション』のメインテーマでは美しいメロディにのせて、卓球の伊藤美誠選手ら東京2020大会を目指すアスリートが激しいトレーニングに励む姿が紹介されました。演奏後には、選手の心に秘めた熱い想いが伝わった多くの観客の皆さんから拍手がわき起こりました。
最後は、地元の川越高校・川越南高校・星野高校・川越女子高校の生徒が、スピロ・サマラ作曲の『オリンピック讃歌』を合唱。映像では来年の大会に向けて改修された霞ヶ関カンツリー倶楽部が紹介され、曲のラストでは客席前方から金のテープが勢いよく飛び出し、会場は大きな歓声に包まれました。
盛大な拍手が鳴り止まない中、アンコールではモリコーネ作曲の映画『ニュー・シネマ・パラダイス』が演奏されました。日本中が歓喜した東京2020大会開催決定時の様子や、陸上競技の有森裕子さん、高橋尚子さんが現役時代に小出義雄コーチと行っていた練習シーンなど、選手とコーチが二人三脚で取り組む姿が映し出され、選手だけでなくコーチや関係者はじめ、全ての人にとってオリンピックの舞台が輝く夢であるというメッセージを伝え、コンサートは幕を閉じました。
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