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2018.06.18 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
プレゼンを行った7選手。左から奥田選手、安部選手、岩佐暖選手、岩佐明選手、大久保選手、佐藤選手、平松選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
福井烈JOC常務理事(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は6月6日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。年間を通じて「説明会」を複数回実施し、企業に対してトップアスリートの就職支援を呼びかけています。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに150社/団体222名(2018年6月6日時点)の採用が決まりました。

 今回は東京都との共催で行われ、45社63名が参加しました。

 最初に主催者を代表し挨拶に立った福井烈JOC常務理事は、トップアスリートが世界の舞台で活躍するには、練習場や宿泊、食事施設のハード面だけでなく、経済面でも安心して競技に打ち込める環境が必要不可欠であることを説明しました。そのことを踏まえ、「皆さまの日々のサポートが明日のアスリートをつくります。一方で、アスリートが真剣に戦う姿や、日々全力でトレーニングをしている姿を見ていただくこと、そして応援したいただくことで、大きな刺激や勇気、元気を感じていただいて、それが社員の皆さんの士気向上につながると確信しています」と述べると、東京2020大会、2022年北京冬季オリンピックに向けたアスリート支援のさらなる協力を求めました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
東京都オリンピック・パラリンピック準備局スポーツ推進部の河野和久事業推進課長(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
サコス株式会社の木本隆総務部次長(写真:アフロスポーツ)

 続いて、共催者を代表して、東京都オリンピック・パラリンピック準備局スポーツ推進部の河野和久事業推進課長が挨拶し、「私どもは東京2020大会に向けて全力で準備をしておりますが、本日のアスナビ説明会も重要な位置づけとなっております。ぜひとも今日の説明会で若いアスリートたちのお話を聞いていただき、一人でも多くのアスリートが雇用され、2020年に向けて大活躍してもらうようにお力添えをいただければと思います」と、参加企業に呼びかけました。

 次に中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュール、選手活用企業のポイントなどを紹介しました。

「アスナビ」採用企業の事例紹介では、2016年4月にレスリングの阿部宏隆選手、2018年4月にセーリングの北村勇一朗選手、カヌーの橋本将都選手を採用したサコス株式会社の木本隆総務部次長が登壇。阿部選手を例に、採用の背景やきっかけ、入社までの経緯、勤務日程や仕事の内容、応援体制などを紹介しました。その中で、木本次長が採用の意義として強調したのが「社員の一体感・連帯感の醸成に阿部選手が大きく貢献している」こと。また、アスナビを通じてアスリートを初めて採用してから2年が経過し、今年の4月には新たに2名を採用していることから、「アスリートはいい人材だと思いますし、精神的に強い人も多い。採用して間違いなく損はないだろうと思います」と強調すると、アスリートを受け入れる企業の心構えとして「サポートは必要ですが、営業でもなんでもどんどん仕事に参加させた方がいいと思います」とアドバイスを送りました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
谷本歩実さんが応援メッセージ(写真:アフロスポーツ)

 続いて行われたオリンピアンからの応援メッセージでは、柔道女子63kg級で2004年アテネオリンピック、2008年北京オリンピックと2大会連続で金メダルを獲得し、現在はコマツ女子柔道部助監督を務めている谷本歩実さんが登壇。コマツの正社員として週に3回、本社に出社して働きながらオリンピックを目指した経験の中で、最も大きかったものとして挙げたのは、応援の力でした。北京オリンピックのおよそ半年前、腰の負傷を抱えながら出場した試合中に症状が悪化。思うように立ち上がることもできず、棄権寸前にまで追い込まれた畳の上で目に入ったのが、コマツ社員による応援団だったそうです。「“頑張れー!”という声も聞こえて、その瞬間、試合中なのに涙が出てきました。私はここで棄権なんかできない、戦い抜こうと思いました」と谷本さん。その試合は敗れてしまいましたが、「最後まで戦い抜いたことも評価されて、オリンピックの舞台に立つことができました。なので、あの時に社員の皆さんの応援がなかったら、きっと北京オリンピックの金メダルはなかったと思います」と述べると、試合に勝つための要因の中で一番大きかったのは応援による支えだったと振り返りました。また谷本さんは、現役時代ばかりではなく引退した後のキャリアも含めてのアスリート支援を呼びかけ、応援メッセージを締めくくりました。

 最後に、就職希望アスリート7名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介や競技のデモンストレーションなどで、自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
大久保琳太郎選手(左)、安部慶輝選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
佐藤光選手(左)、平松祐司選手(写真:アフロスポーツ)

■大久保琳太郎選手(水泳・競泳)
「私は競泳の平泳ぎを専門としています。小学4年生のときに全国大会初優勝を経験し、それからは各年代の主要大会において常にトップレベルの成績を収めてきました。他のトップ選手たちと違い、私がこれまで行ってきたトレーニング環境は決して恵まれたものではありませんでしたが、それらの壁を乗り越えることで、自立性と適応性を身につけることができました。現在、私は2020年東京オリンピックのメダル獲得を視野に、日々トレーニングを積んでいます。日本の平泳ぎは世界レベルの争いを繰り広げています。私はそのレベルの高い争いに挑戦し、4年に1度、そして人生においては1度きりになるかもしれない母国開催のオリンピックの切符を何が何でも手に入れたいと思っています。さらに社会人としても、目の前に困難なことがあってもポジティブに考え、日々研鑽を重ねることで達成できるということを、会社の仲間とともに実践していきたいと考えています」

■安部慶輝選手(フェンシング)
「私とフェンシングとの出会いは、父がフェンシングのオリンピック選手で、私も父のようになりたいと思い、小学校1年生のときに父が経営するクラブチームに参加したことがきっかけでした。また、中学校3年生のとき、これまでの成績が認められJOCエリートアカデミーに入校しました。私が競技生活を通して得た強みは、問題解決に対して工夫する力です。良かった部分は継続し、さらに工夫を重ね、小さなことをコツコツと積み重ね、大きな舞台に立てるように日々精進してまいりたいと考えています。もし私を採用していただけたら、常に高い志を持ち、競技面でも仕事面でも様々なことに工夫し、チャレンジし、常に高いレベルを目指したいと考えています。また、職場の皆さまに少しでも感謝の気持ちと活力を与えられるような存在になれるよう、結果を残し、勝つために取り組む姿勢をお見せしたいと考えています」

■佐藤光選手(カヌー)
「私は高校入学をきっかけにカヌースプリントを始め、昨年、今年と日本代表選手に選出されました。今年は4年に1度のアジア競技大会があり、私はカナディアンペア1000mに出場します。現在、そこでメダルが獲得できるよう、日々の練習に取り組んでいます。私の強みは3つあります。1つ目は、一度決めたことは継続してやり続けることができる精神力です。2つ目は、コミュニケーション力があります。3つ目は、明るい笑顔です。私の今後の目標は2020年の東京オリンピックでメダルを獲得することです。そのためには、まず今年のアジア競技大会で結果を残し、自信をつけていきたいです。私はこれからもカヌーを続けることができる環境を探しています。採用企業のイメージアップや認知度向上のためにも、仕事は精一杯頑張らせていただきます。東京オリンピックでメダルを獲得し、恩返しできるよう日々努力します。どうぞよろしくお願いします」

■平松祐司選手(陸上競技)
「走り高跳を専門としています。私は小学校1年生から中学校3年生までサッカーをしていました。陸上競技を始めるきっかけとなったのが、中学校の陸上部顧問の先生より勧誘をいただいたことでした。顧問の先生からは『お前は日本一になれる』と言っていただき、日本一を目標に掲げ、高校から陸上競技を始めました。大学1年生時には、18歳以下の日本最高記録である2メートル28センチをクリアし、日本記録にあと6センチと迫っております。陸上競技では、自身の課題を解決する力と、リーダーシップに磨きをかけてきました。それに加え、どんな状況であろうとも現状を受け入れ、耐え抜く忍耐力と覚悟で競技に取り組んできました。これら全てを最大限に生かし、企業に貢献していきたいと思っております。前回のリオオリンピックでは参加標準記録にたった1センチ届かず、出場することはかないませんでした。なんとしても東京オリンピックには出場し、入賞したいです。どうかこれらの目標を達成できる環境とご支援のほど、よろしくお願いいたします」

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
奥田啓祐選手(左)、岩佐明香選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
岩佐暖選手(写真:アフロスポーツ)

■奥田啓祐選手(陸上競技)
「私は陸上競技を中学から始め今年で10年目、大学から十種競技を始め今年で4年目となります。私の目標は2020年東京オリンピック、2024年パリオリンピックに出場し、入賞することです。その目標は十分達成可能だと考えております。一昨年の自己記録が6886点なのですが、先日行われました関東インカレで7415点。1年半で約600点と大幅に自己記録を更新しています。世界で戦うためには8000点以上が必要になってきますが、そこまで600点弱、1種目あたりに換算しますと約60点となります。それら小さな差を埋めていけば、自ずと8000点以上の記録が期待できると考えています。私を採用していただけましたら、目標達成や成長へのどん欲な気持ちを忘れず、十種競技で培った忍耐力、柔軟性のある考え方、コミュニケーション力を生かし、与えられた仕事に満足することなく、自らの意見をしっかり発信し、社内を明るくして企業に貢献したいと思います」


■岩佐明香選手(スキー・ジャンプ)
「私はノルディック複合選手だった父の影響で小さいころからジャンプ台に通う機会が多く、私もこのジャンプ台を飛ぶのだろうと思っていました。ジャンプをやりたいと自分の口から家族に伝え、9歳から13年間、弟と一緒に切磋琢磨、競技を続けています。15歳で全日本メンバーに入ったことをきっかけに、世界で戦いたいと強く思うようになりました。そして来年、大学卒業後も競技を続け、私は北京オリンピックに出場したいです。北京オリンピックまでの過程として達成させたい目標は、ワールドカップ優勝、国内ランク3位以内、世界選手権で入賞・優勝です。これらのことに最後までチャレンジし続けられる自信があります。かつ、自分のパフォーマンスに自信を持ち、自分のジャンプで挑戦し続けていきます。もし、入社することができましたら、私の名前にもありますように、明るい雰囲気を会社や日本中に吹き込める選手になりたいです」

■岩佐暖選手(スケート・ショートトラック)
「私は5歳のときに相模原のスケート教室でショートトラックに出会い、今年行われた平昌オリンピック出場を目指して競技を続けてきましたが、シーズン始めの練習中に足首を骨折する大けがをしてしまい、オリンピック出場の夢は途絶えてしまいました。さらに、私と同じチームで小さいころからずっと一緒に競技を続けてきた同期がオリンピック代表に選ばれ、とても悔しい思いをしました。しかし、私はそこで諦めることはありませんでした。私は北京オリンピックで必ずメダルをとります。平昌オリンピックに出られなかった悔しさと、今まで培ってきた経験を生かして、この4年間再び戦い抜くことを決意しました。応援していただく方への感謝の気持ちを忘れず、オリンピックでメダルをとる夢を追う姿を皆さんにお見せすることで、勇気を感じていただけるよう精一杯頑張ってまいります。ぜひご支援のほど、よろしくお願いいたします」

 説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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