パリ2024オリンピックのブレイキン・Bガールで金メダルを獲得した湯浅亜実選手が8月10日、記者会見を行い、競技終了から一夜明けての心境を語りました。
会見の冒頭、選手の前に置かれた輪島塗のタンブラーの紹介がありました。石川県輪島漆器商工業協同組合よりご協力いただき、今年1月1日の能登半島地震をパリで戦っているメダリストも忘れず、被災された方々も一緒に頑張ろうというメッセージが発信できたらという思いで用意されました。
■AMI選手「TEAM JAPANのメンバーに会えたこともオリンピックを目指して良かったと思うことの一つ」
――一夜明けた感想をお願いします。
AMI選手 まだ夢みたいな気持ちというのが率直なところです。すごく嬉しいですし頑張ってきて良かったという気持ちはありますが、まだ夢のようでふわふわした気持ちが続いています。こうしてメディアの皆さんの前で喋る機会をいただき、TEAM JAPANの皆さんに「おめでとう」と言ってもらえて、少しずつ本当に金メダルを獲得できたのだなと実感しているところです。
――競技を終えてからどのように過ごされましたか?
AMI選手 昨日は夜も遅くあまり時間がなかったため選手村の食堂でお腹が空いていたのでご飯を食べて帰っただけなので、お祝いはまだできていません。会場で家族に会えたのでうれしい気持ちになりましたが、まだバタバタしていてゆっくりは過ごせていない状態で今を迎えています。
――寝るときに金メダルはどちらに置いていましたか?
AMI選手 金メダルは今日持ってこなければならなかったので鞄にしまっていました。大事に包んでしまっていました。
――初めての大会で金メダルを獲得したことについてどう思うか?
AMI選手 すごく光栄なことだと思います。16人全員が努力をして自分のスタイルを磨き上げてあのステージにきていて、皆が金メダルの権利があるくらいハイレベルな中で、その日の自分の調子のよさと運も味方につけて獲得できたメダルだと思います。また、家族や友達、TEAM JAPANのサポートがあって獲得できた金メダルだと思うので、嬉しい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。
――オリンピックの舞台、雰囲気はいかがでしたか?
AMI選手 会場は歓声もすごくて盛り上がっていたので、会場からのエナジーを受けながら踊ることができたと思います。一方でいつものイベントと違う面でいうと、ブレイキンを初めて見に来てくれた方が多かったのかなと思います。いつもと反応が来る場所が異なって驚いたりすることもありましたが、自分はやるべきことをやるだけと、自分に集中しつつ歓声をパワーにしつつといった感じでやっていました。
――決勝で出すムーブを準決勝で出したとおっしゃっていましたが、戦略だったのかその時の気持ちだったのでしょうか?
AMI選手 その時の気持ちだったと言うほうがあっているかなと思いますが、元々はそのムーブは自分にとってとても大事なムーブで、自分の師匠でもあるKATSU ONEさん(石川勝之コーチ)から引き継いで大切な時に使っているムーブでした。そのムーブは決勝でやりたいなと思っていたのですが、TOP8に勝ってTOP4の直前に「ここでやった方が良いのでは?」と直感で思って、「ここでやった方が後悔しないかも」、「ここでこのムーブを使いたいかも」と思いました。その直感に従ってやることを決めて、そのラウンドを取れて、そのおかげでTOP4を通過できたと思うので、切り替えてやって良かったなと思っています。
――ブレイキンという競技はメッセージ性があると思いますが、このオリンピックでどういうものを伝えられたか?
AMI選手 OQS(オリンピック予選シリーズ)が終わってからオリンピックまでの間に、自分の良さは何だろう?自分らしさをより出すためにはどんなところを詰めたらいいのだろう?と自分と向き合う時間が多かったです。ステージの上では緊張していてどのようなムーブをしていたかは覚えていませんが、それを詰めて練習してきたから出せたのではないかと今は思っています。自分だけではなく16人全員がそれぞれ自分たちのスタイルを出してやっていたので、ブレイキンの十人十色の「みんなちがって、みんないい」というところが、イベント全体、1日を通して少しでも多くの人に伝わっていたらいいなと思っています。
――これからどんな姿を見せていきたいか?
AMI選手 ブレイキンが大好きだからこそここまでやってこられたので、いい意味で今までと変わらずに自分がやりたいと思ったことに全力でまっすぐに挑んでいきたいと思っています。オリンピックに向けて新しいことに挑戦するよりも、今できることを磨き上げる時間に使ってきましたが、一旦ひと段落ついたので新しいものを作り上げたりする練習にも時間を割きたいと思っています。
――ロサンゼルス2028オリンピックでブレイキンが開催されないことについてどう思うか?
AMI選手 アメリカという国がブレイキン発祥の国ということもあり、すごく残念だなという気持ちがあります。せめてロスまではやって欲しかったとたくさんのBボーイ・Bガールたちが言っていて、アメリカが発祥なのでそこでやることで今回とは違う盛り上がりがあると思っていました。今回もBガールバトルはすごく盛り上がっていたので、それが無くなってしまうのはすごく残念だなと思います。見に来てくれた方も初めて「見たけどすごく面白かった」と言ってくれた方もいたので、そこに関しては残念に思います。ただ、ブレイキンのシーン自体はオリンピックが全てではないので、オリンピックが無くてもブレイキンのシーンは引き続き盛り上がっていくと思っています。そこに関しての不安点はありません。
――大会が終わりひと段落して、どのように考えているか?
AMI選手 練習は今すぐでもしたいです。バトルや大会に向けての練習が多かったのですが、私はブレイキンをやっているときの新しいことを考えている時間が好きなので、そのような練習を早く帰ってやりたいというワクワクの気持ちはあります。でも、一旦大会を終えて家族や友人との一息つく時間を大切にしたいと思っています。
――味の素から食のサポートがあると伺っていますが、今回のパフォーマンスにいい影響がありましたか?
AMI選手 食事は大事だと思っていて、私は少し胃が弱いので脂っこいものを食べたりすると激しいラウンド練習が上手くできなかったりとか、逆にそういう食べ物を食べて体重が増えてしまうと自分の身体が持ち上げられなかったりするので、食事のことは気にしていました。味の素さんが練習場所にも入ってくれていたので、今まで通り日本食を食べられましたし、栄養管理もしてくれていたのですごくありがたかったです。毎日味の素さんの食事をいただけたのですごく感謝しています。
――チームとしての強さを感じましたがそれについての感想と、今日試合のある男子についてアドバイスのようなものがあれば教えてください。
AMI選手 ブレイキンのTEAM JAPANの皆に対しては家族のように思っています。最初の方はカルチャーもあり衝突することもありました。スポーツとカルチャーの差で選手側が戸惑ったりすることもありましたが、スタッフの皆さんも選手側の意見を聞いてアドバイスをくれました。もちろん個人競技なのでTEAM JAPANにいるなかでAYUMIさんやRikoちゃんと対戦しなきゃいけないこともありましたが、対戦することになったら勝つぞと言う気持ちでいました。皆でずっと合宿をしたことで全員が頑張っていることを知っているので、説明が難しいですが、お互いにリスペクトがあるというか、だからこそ築き上げられたチームワークなのではと思っています。皆が自分のやりたいことに真っすぐで素直で協力的なので、すごくいいチームだと思っています。このTEAM JAPANのメンバーに会えたこともオリンピックを目指して良かったと思うことの一つで、それくらい自分にとっては大切なことです。一緒に旅をしていくうえで、TEAM JAPANの皆の心の支えがなかったら途中で折れてしまっていたと思うので、本当に感謝しています。Bボーイに関して、アドバイスというよりは、ステージを楽しんでほしいなというのが一番です。それぞれが苦労してオリンピックのチケットを獲得したと思うので、あまり結果を気にせず自分の踊りをステージに置いてきて欲しいと思っています。私自身もその気持ちで戦ってきました。結果を気にするとかではなく、自分が磨き上げてきたものをオリンピックのステージに置いて帰るという気持ちだったので、そのような形で二人にも楽しんでほしいと思いますし、全力で応援したいです。
――パリ2024オリンピックを通じて一番新鮮だったことは?
AMI選手 このパリ2024オリンピックに限らず杭州アジア大会のときもそうだったのですが、選手村でのピンバッチ交換がすごく楽しくて、何のスポーツをやっているか分からない人に「ピン持ってる?」と話しかけたりしました。そこからその人のスポーツが分かったり、そういったコミュニティが面白いと思いました。ブレイキンだけやっているとブレイキンのことしか分からないですし、他のストリートのスポーツは分かっても他のスポーツで知らないことがたくさんあるので、国だけではなく他のスポーツとの境も超えられると思い楽しいと思いました。あとは開会式に初めて出たのですごく感動しました。
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