パリ2024オリンピックのフェンシング・男⼦エペ個⼈で金メダルを獲得した加納虹輝選手が7月29日、記者会見を行い、競技終了から一夜明けての心境を語りました。
会見の冒頭、選手の前に置かれた輪島塗のタンブラーの紹介がありました。石川県輪島漆器商工業組合よりご協力いただき、今年1月1日の能登半島地震をパリで戦っているメダリストも忘れず、被災された方々も一緒に頑張ろうというメッセージが発信できたらという思いで用意されました。
■加納選手「絶対に負けたくないという気持ちで戦っていた」
――メダルを獲得した率直な感想をお願いします
加納選手 未だに僕自身実感を得られていませんが、パリ2024オリンピック前からずっと金メダルを獲得すると口に出してきていたので、有言実行できて非常に嬉しく思います。金メダルを獲れるということが半信半疑だったとしても、口に出すことによって実際に金メダルを獲得できるということを身に染みて感じることができました。ただ、まだ個人戦が終わったあとに団体戦があるので僕自身全く気は抜けていませんし、団体戦では東京2020オリンピックに引き続きパリ2024オンピックでも金メダルを獲得できるよう、これからまた準備していくところです。本当に皆さま、昨日は夜中から朝方まで応援ありがとうございました。
――前回大会の団体での金メダルから個人での金メダルとなりました、何か違いはありますか?
加納選手 東京2020オリンピックが終わり、パリ2024オリンピックでは団体そして個人戦でも金メダルを獲得したいと思っていましたし、そう言ってきました。今回個人戦で金メダルを獲得することは、男子エペは非常にレベルも高いので難しいということは分かっていました。その中で実際金メダルを獲得できたことは本当に自信にもなりましたし、自分でも驚いているぐらいです。今回金メダルを獲得した後、嬉しさはかなりありましたが、前回東京2020オリンピックで金メダルを獲得したときと比べて若干の孤独感がありました。自分で獲得した金メダルですけども自分が喜んでいるという状態で、もしこれが団体戦であれば4人で喜びを分かち合うことになると思うので、そのあたりが大きな違いかなと思います。
――決勝の相手のボレル選手は見延選手、山田選手に勝って上がってきた選手ですが、試合前にお二人と会話はあったのでしょうか?
加納選手 特に会話はしませんでした。ボレル選手とは僕も含めみんな何度も試合をしてきていますし、僕たちはそれぞれプレースタイルが違うので、見延さんと優さんのアドバイスがない方が僕自身も自分のベストなパフォーマンスでボレル選手と戦えると思ったので、そこはアドバイスなしで戦いました。
――二人の思いを背負ってというような思いはいかがでしょうか?
加納選手 本当に気持ちの部分が大きくて、日本人二人が同じ選手に負けて三人目が負けるわけにはいかないなと。三人目も負けてしまったら一人の選手に日本人選手が全員負けてしまうということになるので、絶対に負けたくないという気持ちで戦っていました。
――(ボレル選手に対する)地元の大歓声がありましたが、そのあたりはいかがでしたか?
加納選手 あそこまでの歓声の中での試合というのは僕自身初めてで、審判の声が聞こえづらいぐらいの凄い歓声だったなと思っています。その様な中でも僕はあまり歓声に気を紛らわされず、自分自身に集中することができたと思っています。
――決勝で登場するときの階段を下りているときはどのような気持ちでしたか?
加納選手 階段を下りて入場するというのは、僕のフェンシング人生の中でも最初で最後だなというように思いました。階段では踏み外す可能性も出てくるので、絶対にあそこで踏み外すなよと言われたりもしたので、気をつけていました。
――冷静でいられたということですね?
加納選手 そうですね。言われてみればそのようなことを考えているぐらいだったので、かなり冷静だったのかなと思います。
――フェンシング発祥の地フランスで獲得した金メダルは、フェンシング界にとって非常に大きなと感じますが、そのあたりはいかがでしょうか?
加納選手 このフェンシングの発祥地、さらにはグラン・パレという素晴らしい会場で試合をできたこと自体が非常に嬉しかったですし、さらにその中で決勝のピストに立つことができ、金メダルまで獲得することができたのは本当にこれ以上ない幸せです。
――フェンシングの魅力や伝えたいことは?
加納選手 今回多くの方がフェンシングのエペを観てくれていただろうという中で、皆さまがルールをどれだけ理解してくれているかはわかりませんが、僕はルールがわかりやすいと思っているので、観てくれた方もかなり理解してくれたのではないかと思っています。その中でフェンシングではやはり駆け引きというものが常に行われており、先に突いたら得点が入るというシンプルなルールだからこそ深い戦術が出てくると思うので、そのあたりが魅力だと思っています。
――金メダル獲得の経験が団体戦に活かせること、団体戦に向けての意気込みを教えてください。
加納選手 決勝まで行ったことでグラン・パレの舞台でたくさん試合をできたので、あの場に慣れているということもありますし、昨日は尻上がりで調子が上がってきていたので、このまま団体戦でも慣れている上に調子が良い状態で臨めるのではないかなと思います。
■加納選手「オリンピックを見て少しでも勇気や感動を届けられたら」
――冒頭でありました輪島塗のタンブラーの感想、能登半島地震で被災された方へのメッセージをいただけますでしょうか。
加納選手 フェンシングで結果を残して皆さまに勇気や感動を届ける。それが被災者の方々に向けて僕が今できることだと思っているので、今回のオリンピックを見て少しでも勇気や感動を届けることができたら嬉しく思いますし、また自分たちも頑張ろうと思ってもらえたら嬉しいです。
――団体戦でどのような役割を果たしたいか、どういうふうにプレーしたいか?
加納選手 展開にもよると思いますが、前半は自分が攻めてポイントをたくさん取りにいけるよう、そしてチームをリードさせられるように取り組んでいきたいと思っています。
――団体戦ではさらにアウェイの雰囲気になることが予想されますが、チームのメンバーに伝えたいこと、どんなことに注意して戦っていくか教えてください。
加納選手 チームの皆はもちろんわかっていると思いますが、やはり序盤は緊張もあり、特に1回戦は固くなりがちだと思うので、やはりそこでいかにリラックスをするか、ミスがあっても他のメンバーで支え合うかということが大事だと思っています。もちろん言わなくても皆わかっていると思うので、全く心配はしていないです。
――金メダルを獲得からまだ十数時間しか経っていませんが、ここまでの過ごし方やチームメンバーからどのような祝福を受けたましたか?
加納選手 昨日は終わってからチームのメンバーや家族と写真を撮り、そのあとすぐに様々な対応があったのですがそれが長引いてしまい、選手村に戻ったのは夜中の1時半ぐらいでしたので、もう皆ほぼ寝ていました。
――写真撮影した以外では感想を言われたり、一人で祝勝をしたりということはありますか?
加納選手 昨日の夜はメッセージなどの返信をしていました。ただ今朝起きたときに、同部屋の人たちに金メダルを見せたり、お祝いのお言葉をいただいたりしました。
――東京2020オリンピックの団体戦で金メダルを獲得して背負ったものと、個人で獲得して背負ったものに違いはありますか?
加納選手 団体戦では4人で背負っていますが、やはり個人戦となると1人で背負わなければならない部分があるので、そのあたりで少し重みを感じています。また、これからの試合でも期待がかかってくると思うので、そこは重みを受け止めながらやるしかないと思っています。
――東京2020オリンピックの団体戦のあとからかなり重いものを背負っていた?
加納選手 そうですね。東京2020オリンピックが終わったあとの1年間は非常に重かったです。ただそれと同時に自信もついていたので、世界ランキングは常に上位で居続けることができました。
――重いものを背負いながら世界ランキング上位という自信もかなりついたのでは?
加納選手 そうですね。自信もついているのでそのあたりはとても楽しみにしています。
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