日本オリンピック委員会(JOC)は5月19日、味の素ナショナルトレーニングセンターウエストで、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。年間を通じて「説明会」を複数回実施し、企業に対してトップアスリートの就職支援を呼びかけています。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに211社/団体343名(2022年5月19日時点)の採用が決まりました。
今回の説明会ではJOC主催のもと、8社12名が参加しました。
最初に主催者を代表して岩渕健輔JOC理事が、アスナビ説明会に参加した企業に対する感謝の言葉を述べました。続けて「同じ年度に東京、北京と2回のオリンピックが行われ、ナショナルトレーニングセンターでトレーニングしたアスリートたちが多くのメダルを獲得しました。アスリートがメダルをとるためにはたくさんのサポートが必要ですが、ぜひとも皆様にはTEAM JAPANの一員となってアスリートを支えていただきたいと思います」とアスリートの採用を呼びかけました。
続いて、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターがアスナビの概要ならびに、過去にアスナビを通じて採用されたアスリートと採用企業の担当者のコメントを動画で紹介。さらに、資料をもとに雇用条件、夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート活用のポイント、採用後のカスタマーサポート、これからの進め方などを説明しました。
続いて、採用企業の選手活用事例として、米沢茂友樹選手(陸上競技・円盤投)、勝山眸美選手(陸上競技・ハンマー投)を採用した株式会社オリエントコーポレーションより、白倉里美 人事部ダイバーシティ推進室兼キャリア開発室室長が、トップアスリートを社員として採用する理由やアスリート社員の業務について紹介しました。同社では「何かをかなえようとする全ての人に、もっと寄り添う存在でありたい」という全社員に掲げているスローガンがあり、アスリート採用に力を入れる一番の目的は「高みを目指すアスリートを社員が一丸となって応援することで一体感の醸成に繋げていくこと」であると語りました。
また、アスリート社員による企画として、リラックス体操やスキマ時間のストレッチ、セルフヘルスケア、イブニングセミナー、同社陸上競技部Facebookページの活動などを映像やスライドで紹介しました。昨年は大会の入場制限や中止などで会場の応援が難しいこともありながら、本年度からは緩和の動きもあり、応援に行ける流れになっていることから、「あらためて会社一丸でスローガンを共有して応援していきたいと考えております」と語りました。
その後、就職希望アスリート5名がプレゼンテーションを実施。映像での競技紹介やスピーチで、自身をアピールしました。
■谷地宙選手(スキー/ノルディック複合)
「小学5年生の時、いわてスーパーキッズ発掘・育成事業に合格し、アルベールビル1992冬季大会の金メダリスト三ケ田礼一さんの『人は自分の思い描いた人生を歩むことができる。夢は叶えられると思います』と熱く語る姿に魅了されて、いつか私も世界トップレベルの選手になって『夢は叶えられるよ』と多くの人へ伝えられる大人になりたいと思いました。
それから中学1年生で競技を本格的に始め、高校3年生で全日本強化指定入りをし、世界ジュニア選手権の団体戦6位入賞を達成。その後、大学2年生でW杯デビュー、3年生ではシーズン通してフル参戦し、そして北京2022冬季大会のノーマルヒル個人に出場しました。結果は30位でしたが、私は競技を通じて粘り強くやり遂げ、目標達成する力を身に着けてきました。競技開始から8年、毎日欠かさず練習日誌を書いて内省し、地理的なハンデを言い訳にせず、少ない時間でも効率的に練習を進めて励んだ結果、目標の一つであったオリンピック出場を果たしました。
2026年のオリンピックでは、金メダルを含む複数個のメダル獲得を目指します。これから多くの壁や困難が待ち受けていると思いますが、それでも達成し、乗り越えていく姿を見せて、企業の一体感、醸成、イメージアップに貢献したいと思っています。ぜひ私と共に企業・日本を盛り上げていきましょう。本日はご清聴ありがとうございました」
■藤田華恋選手(スキー/スノーボード)
「私は中学1年生の時、2014年開催のソチオリンピックで、スノーボードクロスの迫力やスピード感に魅力を感じ、世界で活躍する選手になりたいと思いました。それから家族の協力を得ながら、体作りやオフシーズンも技術向上に必要なトレーニングに励み、連盟主催の合宿に積極的に参加し、高校2年生からは海外遠征に参加、大会にも出場できるようになり、2018年に全日本スキー選手権大会で5位、2019年には同大会3位と成績を少しずつ伸ばせました。
それでもW杯出場基準のクリアには時間がかかり、少しでも早く経験値を積むため、大学1年生ではチリへ個人遠征をして二試合で優勝し、出場権を得ることができました。
私の目標は2026年、2030年のオリンピックに出場し、メダルを獲得することです。たくさんの方にサポートしていただいていることへ感謝の気持ちを忘れず、スノーボードクロスの迫力や駆け引きといった魅力を伝えていきたいと思っています。応援してくださる方々には勇気や感動を与えられる選手になれるよう、日々努力して行きます。そして、社員の方々と一緒に仲間として支え合い、高めあえて行けたらと思っています。ご清聴ありがとうございました」
■吉松琳果選手(フェンシング)
「私は幼い頃からさまざまなスポーツをやって、何が出来ていないのか、何が足りていないのか、自分の弱さに向き合って改善していく先に成長があることを学びました。大学卒業後の一年は、練習とアルバイトを両立しながら成績を上げて、アスナビにエントリーできるようになることも一つの目標でした。フェンシングは高校生から始めたので、ほかの選手と比べると経験が浅く、日本代表の一員としてナショナルトレーニングセンターで練習ができるようになったのも一年ほど前からです。この1年間で色々なことを吸収し、国内ランキングを上げて、今日こうして登壇できていることをとても嬉しく思っています。
企業にご採用いただき、会社の一員となった際には、信頼関係を築くこと、応援される選手になることを目標にしています。担当職務を全うすることはもちろん、積極的に仕事の幅を広げて、社員の皆さまとのコミュニケーションを何より大切にし、オリンピックを目指して戦っている姿を通して、喜びと感動をもたらしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」
■馬場晴菜選手(フェンシング)
「私は、父の影響で10歳からフェンシングを始めました。大学進学後にエペを専門種目とし、現在は日本代表7年目になります。私は初めて会う人から大人しそうと言われますが、実際は思ったら即行動、とことん挑戦する性格です。学生時代には無性にフェンシングが強くなりたい思い、単身でイタリアとコスタリカに武者修行をし、サテライト大会で優勝もできました。
昨年開催された東京オリンピックでは、世界ランキングのポイントがわずか1点及ばず出場できませんでしたが、原因と向き合い、挑戦して乗り越えた先にはとてつもない達成感があり、わずか1点は『とても尊い1点』と考えるようになりました。結果はいずれも自分の行動によって変わり、動き出さなければ何も変わらないことを学びました。
どんなことにも熱意を持って取り組む、『やればできる』という挑戦する気持ちを武器に、支援していただける皆様と一体となって挑戦します。東京オリンピック出場を逃した経験は、私の競技人生において大きな財産になりました。 2年後に開催されるパリオリンピックでメダルを獲得した時の達成感にとてもワクワクしていますし、簡単に達成できる目標ではありませんが、皆様と一体となって挑むことで達成できると信じています。限界を乗り越え、一人でも多くの方を笑顔にできるよう、精一杯取り組みます。どうぞよろしくお願いいたします」
■オトパウリネ恵美里選手(ビーチバレーボール) ※ビデオ登壇
「私の父はトンガ人でラグビー日本代表として活躍し、母はバレーボールの名門八王子実践高校で全国大会に出場していました。そんな両親の影響もあり、私は幼い頃から、二人のようにスポーツで活躍できる選手になりたい、日本代表として日の丸をつけて、世界と戦える選手になりたいと思っていました。
そして大学の進学先を決める際、自分が主役になって日本一を取りたいと思い、自分の努力次第で結果がついてくるビーチバレーへ転向し、大学2~3年生の時は、現在トヨタ自動車に所属する山田紗也香選手とペアを組み、日本一という同じ目標に向かって、切磋琢磨し、大学選手権二連覇をすることができました。
今はけがを治すことが第一ですが、復帰した時には今よりもレベルアップした姿をお見せします。企業に入りましたら一社員として、一人の選手として、一人の人間として応援される選手を目指し、企業様やその地域の皆様に貢献できるように精一杯頑張ります。私の目標は2028年開催のロサンゼルスオリンピックでメダルをとることです。やると決めたら、最後まで諦めずにやり抜くことができる。そんな私、オト恵美里をどうぞよろしくお願いいたします」
プレゼンテーション終了後には、司会進行を務めた柴真樹 JOCキャリアアカデミー事業アシスタントディレクターから就職希望アスリート5名へ「壁の乗り越え方」について質問を実施。その後、アスリートたちによる一言アピールが行われました。
説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。
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