東京2020大会に出場した卓球日本代表選手団が7日、記者会見に出席し、競技終了から一夜明けての心境を語りました。
女子の伊藤美誠選手は混合ダブルス金メダルに輝き、団体で銀メダルとシングルスで銅メダルを獲得。石川佳純選手と平野美宇選手は団体で銀メダルを獲得しました。
男子の水谷隼選手は混合ダブルス金メダルに加え、団体で銅メダルを獲得。張本智和選手と丹羽孝希選手は団体で銅メダルを獲得しました。
■張本選手「シングルスで負けてしまった思いを団体戦に」
――まずは今大会でメダルを獲得した感想を教えてください。
伊藤選手 出場した全種目でメダルが獲得できて、とてもうれしいです。目標は金3つだったので、悔しい部分もあります。ただ、最後まで楽しく戦えたので良かったです。
石川選手 団体で銀メダルを獲得できて、うれしいです。自分自身としては3大会連続のメダルになったので、その点でもすごくうれしかったです。
平野選手 私も団体で銀メダルをとることができて、とてもうれしいです。コロナ禍の中で試合ができたことに感謝して、楽しく戦えたのですごく幸せなオリンピックでした。
水谷選手 混合ダブルスで金、団体で銅メダルを獲得できてうれしいです。苦しい試合もたくさんありましたが、それを乗り越えて最高の形で終えることができて、本当に良かったです。
張本選手 シングルスで負けてしまった思いを団体戦にぶつけて、初めてのメダルを獲得できてとてもうれしいです。
丹羽選手 大会前からメダルを獲得することを目標に頑張ってきたので、うれしいです。3位決定戦ではすごくプレッシャーもありましたが、勝つことができて本当に良かったです。
――男子選手の皆さん、競技終了から一夜明けていかがですか?
水谷選手 昨日のお昼過ぎに試合が終わってから、選手村に行ったりとかすごくバタバタしていて、寝たのが朝4時くらいで、まだ実感がないですね。今日こうやって記者会見を開いてくださったりなどで、だんだん実感が湧いてくるんじゃないかなと思います。
張本選手 僕も昨日は本当に忙しくて実感がなかったんですが、今日テレビに出させていただいたとき、画面越しでメダルをぶら下げている自分を見て、「メダリストになったんだな」という実感が少し湧いてきました。
丹羽選手 一夜経った今もすごくうれしいんですけど、昨日の表彰式でメダルを首にかけた瞬間が一番うれしかったです。
――女子選手の皆さん、長期間に及ぶ戦いを終えての感想は?
伊藤選手 私自身は一番長く試合をして、長くコートに立てていることが本当に幸せでした。ただ、ミックスと個人戦が終わったあとは、実際かなり疲労もあって、私ひとりでは乗り越えられない部分がたくさんありました。試合会場にいなかったスタッフさんにも毎日ケアをしてもらったり支えてもらって、そういう方たちのおかげで団体戦に良い状態に持っていくことができて、楽しくしっかり試合をして終わることができました。
石川選手 個人戦から団体戦まで本当に長い戦いになりましたが、前回はリオ、前々回はロンドンと海外でのオリンピックだったので行く人数も限られていました。今回はコロナ禍で制限はありましたが、それでもたくさんの練習相手だったり、ケアしてもらえる状況だったり、十分な体制を作ってもらいましたし、すごく地の利を感じました。そのおかげで万全の状態で試合に臨めましたし、この大会でプレーできたことをうれしく思っています。
平野選手 シングルスのときはずっと練習していたので、一番最後に試合が始まったと思います。みんなのシングルスの試合を見ながら自分の調整を1週間していて、その中でいろんな方と練習してサポートしていただいたからこそ、初戦からかなり良いプレーをできたなと思っています。また、日本開催だからこそ食事だったり、かなり充実した生活を送れていたので、いろんな方に感謝の気持ちを持っています。
■石川選手「声に出して自分自身に言い聞かせる」
――混合ダブルスで日本卓球界初となる金メダルを獲得しました。中国の壁を一つ破ったことで、今後の卓球界への影響は?
水谷選手 決勝戦で中国ペアと対戦しているとき、すごく緊張している自分を感じました。特に最終ゲームの追い上げられているときは、「正直もう無理かも」と思ったくらい極限の状態でしたが、そこで伊藤選手が点を取ってくれて助けられましたし、自分ひとりだったらそこで逆転負けしていたんじゃないかなと思っています。それくらい中国選手を倒すということは、とてつもなく苦しくて、改めて大きな壁だなと認識しました。ただ、オリンピック決勝で破ったということも事実ですから、これから先も中国選手を倒せるんじゃないかという期待も持っています。
伊藤選手 私自身は特に準々決勝(ドイツ戦)で水谷選手に支えてもらいました。決勝戦では私も支える方になって、お互いに助け合えたことが勝利につながったと思います。オリンピックの決勝戦で中国の選手に勝ったということは、本当に自信になります。シングルス、団体戦で負けましたけど、ミックスで勝ったということは忘れてはいけないですし、その自信を持って前に進んでいきたいと思います。
――水谷選手と石川選手は長い間卓球界を引っ張ってきましたが、今後については?
水谷選手 東京でオリンピックが開催されることが決まってから、僕はこの大会が集大成になると思ってずっとやってきましたし、もし東京じゃなかったらリオが最後だったかもしれませんし、最高の結果に終わって良かったと思います。今後は張本選手がすごい活躍をしてくれていますし、他にも頼もしい後輩たちもいるので、パリオリンピックでは頑張ってほしいという気持ちでいっぱいです。
石川選手 ロンドンオリンピックから約10年間、日本代表でプレーできたことをうれしく思います。日本のレベルもすごく上がっているので頑張り続けないと難しいですし、そういう中でプレーできたこともうれしく感じています。今後のことについては、ずっと東京オリンピックを目標にしてきましたし、試合が終わってまだ2日間しか経っていなくて自分でも分からないので、ゆっくり休んで考えたいと思います。
――試合中のメンタルコントロールはどのように行っていましたか?
石川選手 コートに立つときは基本1人か2人なので、声に出して自分自身に言い聞かせることがすごく多いです。それによって少し気持ちが落ち着いたり、弱気な気持ちが消えたりしていると思うので、自分自身を励ましたり、叱咤激励することが多いですね。
伊藤選手 今回はすべての試合を自信を持って戦えたので、緊張することが少なかったんですけど、追い詰められた場面などでは深呼吸したり、上を向いたり、ジャンプをしたり体を動かすことが多いです。
平野選手 ダブルスでは石川さんにたくさん声をかけてもらって、自信を持ってプレーできました。シングルスも2-0で回ってくることが多かったので、あまり結果を意識せずに内容に集中することを心がけました。
■水谷選手「悔しいですけど自分の冒険はここまで」
――今大会を通して学んだことは?
水谷選手 僕はこの先、競技を続けることはないと思いますが、やはりオリンピックの怖さを改めて感じました。1点の重みというか、普段のワールドツアーと違って1本のミスが勝敗を左右するというプレーが多かったです。今回は逆転勝ちが多くて、良い意味でその怖さを体験できました。
張本選手 水谷選手を間近で見て、その怖さの中で自分をコントロールできるのが水谷選手で、自分にはまだ逃げてしまうところがあると感じました。その怖さと向き合って、次のオリンピックでは個人戦でも勝てるように頑張っていきたいです。
丹羽選手 ドイツ戦の2-2でラストで回ってきたとき、昨日の3位決定戦など、非常に緊張感のある中でプレーできました。他の大会ではなかなか経験できないことなので、良い経験になりました。
――今大会でのプレーを見ると、もう少し日本代表で水谷選手を見たいという声も多いと思いますが?
水谷選手 自分としてはこの先40歳でも50歳でも卓球を続けていきたい、という強い気持ちがあります。ただ、そういった中で今回で競技人生を終えてしまうことは、悲しいし残念ではあります。ただ、今回のオリンピックで張本のプレーを見ていて、頼れる後輩がいるということはすごくうれしいですし、卓球界の男子はこの先も明るいんじゃないかなと思っています。
張本選手 昨日の試合後からはほぼ水谷さんと一緒にいたので、一日かけて自分なりに説得してみたんですけど、やっぱり水谷さんの意志は固いですし、それぐらいの覚悟で臨んだからこその金メダルや団体戦で最後決めてくれたりというのもあったんだと思います。今はもう拒否はしませんし、水谷さんの意思を尊重したいと思います。
――水谷選手、代表だけではなく現役も退くのか、現時点で決まっていれば教えてください。
水谷選手 まだ最終的な判断はできていないのですが、今の自分の気持ちとしては完全に卓球から離れると思います。正直、目が完治するならば40歳でも50歳でもやりたいですが、現状では治療法もないですし、悔しいですけど自分の冒険はここまでかなと思います。
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