東京2020大会のアーチェリー男子個人で銅メダルを獲得した古川高晴選手が8月1日、記者会見に出席し、メダル獲得から一夜明けた心境を語りました。
■「こんなに応援してもらったことは経験がない」
――はじめに個人戦での銅メダル獲得から一夜明けての感想をお願いします。
古川選手 皆さん、おはようございます。また皆さんの前に戻ってこられたことが非常に嬉しいです。きのうメダルをとることができて、思いはきのうから変わっていません。本当に嬉しいんですが、それ以上に今回は感謝の気持ちがたくさんあります。予選は本当にボロボロ、今まで経験したことがないような順位からスタートしたんですが、そこで支えてくれたのは家族、大阪で応援してくれている指導者、それからボランティアの方々。本当に多くのボランティアの方が関わってくださっていて、皆さんから応援・声援をいただいて、ここまで来ることができたと思います。本当に感謝のひと言の大会でした。
予選が本当に悪くて、その日は悔しくてなかなか寝付けずに夜中に何回も目が覚めたんですが、近畿大学の山田秀明監督からは「もう終わってしまったことは仕方ないから、そこから切り替えて行け」と言われ、また、近畿大学の金清泰コーチは「そこから挽回して古川の力を見せつけるんだよ。そこから調子上げていくのが古川だよ」と声をかけてくれました。そして、家族に連絡して、妻も「もうここまで来たらやるしかないから、敗者の振る舞いではなく勝者の立ち居振る舞いをして、楽しんで頑張ってね」とメールしてくれて、その言葉が本当に励みになりました。
それ以上に、会場でたくさんのボランティアの方々がこの大会期間中、この10日間で何回「頑張ってください!」と声をかけてくださったか、本当に数えきれないくらい、こんなに応援してもらったことは経験がないです。それはやはり自国開催、東京での開催だからこそだと思いますし、今回は私自身5回目のオリンピックになりますが、今までになかった経験でした。
あの会場に初めて立ったときも、あそこが更地で何もなかった状態を僕は知っているので、本当にたくさんの方が携わって、関わってくださって出来上がった会場だな、本当に色々な人の思いが詰まった会場だなと思って、そこでプレーすることがまず嬉しくて、感動しました。
そして、その東京オリンピックで結果を残すことができて、嬉しい気持ちはありますけど、一番最初に言いましたように、嬉しさよりも感謝の気持ちが大きいというのがこの大会でした。
■「収穫と言えば今後への自信が一番」
――今大会で得られた収穫などを改めて教えてください。
古川選手 まず間違いなく収穫としてあるのは、今後への自信です。前々回のロンドン大会で銀メダルをとれた後も、僕の調子が良ければ国際大会での個人戦のメダルに手が届くと自信が持てました。今回に関しても、調子が悪くても予選でボロボロでもそこから復活して、決勝までに調子を上げて個人戦でメダルがとれるまでいけると自分自身の力に自信を持つことができました。それと、団体戦のメダルに関しても、僕、武藤(弘樹)選手、河田(悠希)選手だけではなくて、日本の力が国際大会、オリンピックのメダルに手が届くんだと自信が持てましたので、収穫と言えば今後への自信が一番にあります。
――メダル獲得から一夜明けて、ご家族と何かやり取りはありましたか? また、青森県民へのメッセージをお願いします。
古川選手 まず家族については、一番最初に妻に連絡しました。本当に喜んでくれていて、きのうは妻の実家で妻の両親といっしょに応援してくれていたみたいですが、3回戦のときは子供は寝ていたみたいです。でも、3位決定戦のときはきちんと起きてくれていて、夕方、妻に電話したときは泣き声が聞こえてきたので、きっと何か気持ちが届いて応えてくれていたのかなと思います。本当に喜んでくれていて、改めて振り返ると、一番そばで苦しいときも励ましてくれて、頑張ったときは褒めてくれて、自信をさらに持たせてくれたのは妻でした。次に連絡したのは僕の両親で、きのうはコロナウイルスの感染状況のために会場の近くには来ずに、ホテルで応援してくれていたみたいですが、電話したときに「私たちの息子は本当に誇らしい」と褒めてくれました。また、父は「本当によくやった。心が震えた」と言ってくれて、それも嬉しくなりました。両親からしたら、きっと自慢の息子になれてきているのかなと思います。
青森県の皆さんに向けては、本当に青森の皆さんからの応援は僕の心に届いています。実際に青森に帰省できるのは、このコロナの状況もありますし、いつかは報告会を開いて皆さんにメダルを披露したいと思っているんですけど、なかなかその機会がいつになるか分かりません。今年は9月に世界選手権、10月に全日本選手権、11月にナショナルチームの選考会があり、それが来年のアジア競技大会につながっていくので、いつ帰省できるか分からないですけど、帰省したときには皆さんきっと僕の顔を知ってくださっているのかなと思っていますので、ぜひ声をかけていただけたら「古川です!」とお答えできると思います。
また、僕はメールなどで青森の方から激励の言葉をたくさんいただいていますが、それ以外にも青森の新聞などで僕に声援を送ってくださる方はたくさんいらっしゃると思うので、遠く離れた大阪で、青森を離れて18年、19年目になりますが、それでも応援してくださっていることがありがたいと思います。遠く離れたところでも古川が頑張って、努力すれば報われることもあるとお伝えできればと思います。
■「アーチェリーの魅力は十分伝えることができた」
――古川選手の活躍以外にアーチェリーの競技人口を増やすためのアイデアなどがもしありましたら教えてください。
古川選手 テレビでたくさん良い企画をしていただければと思います。ただ的を撃つだけではなくて、僕は色々なチャレンジをさせていただいています。鉛筆削りを射抜いたり、時計の秒針を止めたりなど。そうした色々な面白い企画を考えていただいて、そこに僕を呼んでください。そうしたら「アーチェリーってかっこいいなぁ!」と、実際にそのチャレンジは競技とはかけ離れていますが、アーチェリーの魅力、見ているときの緊迫感は伝えることができると思います。まず、僕ができること、考えられることはたくさんメディアに出させていただいて、アーチェリーという競技を知っていただくことが一番だと思いますので、ぜひお願いします。面白い企画を考えていただいて、ぜひ僕を出演させてください。よろしくお願いします。
――今大会で古川選手がおっしゃっていた「アーチェリーのかっこよさ」は伝わったでしょうか?
古川選手 アーチェリーの魅力というのは、まず競技をやっている側からすれば70m先の10点に矢が刺さったときの爽快感が魅力です。見ている側にとっても日本の通常の試合であればなかなかテレビ放送がなかったりするので、どこに飛んで行ったのか、刺さったのか分からないと思うのですが、オリンピックでは撃ってすぐに的がアップで映し出されて、どこに刺さったか分かると思います。きのう、お祝いのメールの中で「最後の10点、しびれました」という声をたくさんいただいて、僕はきのうのあの10点で日本のたくさんの皆さんをしびれさせたんだなと思いました。「見ているこっちがドキドキした」とか「しびれました」とか、それが感動を届けることなのかなと思いますし、アーチェリーの魅力、それは僕がチームメートの試合を見ていても、最後に10点、10点、10点と来れば「おー、来たー!」となりますので、見ている方も楽しめる。それがアーチェリーの魅力だと思います。それはきのうの試合の最後、9点じゃなくて10点で締めくくることができたので、アーチェリーの魅力は十分伝えることができたと思います。
――今回は無観客開催でしたが、今までの大会と比べてどのような部分がチャレンジングだったと思いますか。
古川選手 まず、無観客の会場で試合をしたときに感じたのは違和感でした。普通であれば入場の前のタイミングで会場が見えたら、「うわぁ、たくさん人が入っている。あそこに日本の国旗があるな」とか思うんですが、それを入場のタイミングで感じなかったので、これはオリンピックなんだろうけどオリンピックじゃないような感じという違和感を持ったまま試合をしていました。実際、観客がいらしたら、日本の方が多かったと思うので、日本の選手への応援はやっぱりたくさんあったのかなと思います。期待していたのはその声援の力で、普段の僕の力以上の力を与えてくれるんじゃないかなと期待はしていました。ただ、反面、そのたくさんの観客の前で僕が緊張してしまって、ミスにつながるようなことになってしまうのかなという恐れもあったので、それは結果を見てみないと分からないことだと思います。どちらが良かったか、悪かったかというのは、もう1回やってみるとか、無観客だったからこのような結果を残せたのか、それは今は分からないと思います。ただ、無観客という中でも観客席にボランティアの方が座っていらして、1、2回戦よりも、きのうの3回戦以降の方がボランティアの方からのたくさんの拍手が聞こえたので、その皆さんに感動を届けることはできたのかなと思っています。
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