公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)アスリート委員会は7月31日、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)を目指すアスリート等を対象に、各々の取り組みや東京2020大会の準備状況等の共有を通じ、モチベーション維持を目的とするオンラインミーティングを開催しました。ミーティングには19競技61名のアスリートが参加。東京2020大会に向けた現在のトレーニング状況や気持ちの変化などを報告・共有し、また、アスリートから社会に向けて発信する活動のアイデアなどについて意見交換しました。
はじめに、主催者を代表してJOCアスリート委員会の澤野大地委員長が挨拶し、4月にJOCアスリート委員会が実施したSNS施策の1つである「#いまスポーツにできること」プロジェクトに対し、多くの医療関係者の方々、自宅待機を余儀なくされている方々から感謝の言葉をいただいたことを報告しました。それにより「改めて、アスリートの持つ力、影響力というものを感じさせられた施策となりました」と語った澤野委員長は、SNS施策に参加、協力したアスリートたちに感謝の言葉を述べました。
一方、アスリート委員会として活動していく中で、東京2020大会の1年延期によりアスリートが不安な気持ちを抱えていることや、またモチベーションを維持することの難しさへの声を多く聞いたことから、「少しでもアスリートが前向きになれる機会を設けられればという思いで、このミーティングを計画しました」と、本ミーティング開催の目的を説明しました。
■各アスリートの現状についての意見交換
澤野委員長の挨拶の後、最初のプログラムとして「各アスリートの現状についての意見交換」を行いました。まず澤野委員長が、東京2020大会を目指す現役選手という立場を踏まえて、東京2020大会の延期が決定してから現在までの練習状況や心境の変化を語りました。「新型コロナウイルスが拡大し始め、大会も次々と中止・延期となった2~3月ごろは、本当に東京2020大会が開催されるのかと不安な気持ちの中、トレーニングにも集中できない日々が続いていました。3月24日に国際オリンピック委員会(IOC)が東京2020大会の1年延期を発表した時、非常にほっとしたのを覚えています。今の精神状態で東京大会に向けて頑張り切れるのか不安なところでしたが、気持ちを新たに切り替え、リスタートできると一歩踏み出せたような気がしています」と、当時の心境の変化を振り返りました。
その後、緊急事態宣言が発令されると、澤野委員長も自粛生活を余儀なくされ、「スポーツができることは当たり前のことではなく、本当に幸せなことであることに気づかされました。来年の今頃には、安心・安全な中、皆さんと東京2020大会で戦っていることを祈りたいと思います」と参加者にメッセージを送りました。
そして、7月23日に行われた東京2020大会開幕1年前プログラムで発信された、「逆境から這い上がっていく時には、どうしても、希望の力が必要だということです。希望が、遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる」という言葉を引用し、「来年の今頃、新国立競技場で希望の光となる聖火が輝くことを信じ、東京2020大会に向けて皆さんと一緒に今できることを行いながら、トレーニングに励んでいきたいと思います」と述べました。
続いて、複数の選手から現在の状況やモチベーションなどの精神面について報告。それぞれの選手が澤野委員長と同様に、今は気持ちを切り替えてトレーニングに集中できており、また秋以降に大会開催が決まった競技の選手からは、その直近の目標に向けてモチベーションを高めていることが語られました。
■東京2020大会組織委員会からの準備状況報告及び質疑応答
次に「東京2020大会組織委員会からの準備状況報告及び質疑応答」として、東京2020大会組織委員会から室伏広治スポーツディレクターより、2021年の開催に向けた方針、ロードマップ、大会日程、大会の新型コロナウイルス対策などの項目に分け、それらについての状況を説明しました。
また、同じく東京2020大会組織委員会から中村英正ゲームズ・デリバリー・オフィサーが参加し、選手との質疑応答を行いました。
最後に室伏スポーツディレクターから、『虚室生白』という荘子の言葉を紹介。これは、空っぽの部屋にも太陽の光が差し込んで自然と明るくなることから、「人間も心を空っぽにして何にもとらわれずにいれば、普段は気が付かなかったことでも自ずと気が付くようになります。こういう時だからこそできることもあると信じ、自分自身を向上させることができると考えて日々取り組んでください。みんなが皆さんを応援しています。視野を広げて、また頑張ってもらいたいと切に願います」とアドバイスを送りました。
■東京2020大会に向けてアスリートができること等の意見交換
次に、本ミーティングの最後のプログラムである「東京2020大会に向けてアスリートができること等の意見交換」が行われました。ここではまず澤野委員長が、ミーティングの冒頭の挨拶で触れたSNS施策の詳しい内容や、世間からの反応、応援の声などを紹介。一方で、この施策のみにとどまらず、東京2020大会に向けて「今は特に応援してくださる方々への感謝の気持ちを、目に見える形で行動に移していくことが求められます」と伝えたところ、複数のアスリートから今できる活動について様々なアイデアが発表され、活発な意見交換が行われました。
澤野委員長はこれらの意見について、実現に向けてアスリート委員会で検討し進めていきたいと述べ、「アスリートの皆さんの意見、アイデアは非常に貴重です。また、競技の垣根を越えたアスリート同士の交流は今後のスポーツ界にとってもプラスになると信じています。非公式の場で生まれる意見やアイデアもたくさんあるかと思いますが、ぜひ公式の場でご提案いただいて、実現させていくということが必要だと考えています」と話し、引き続きアイデアの募集を呼びかけました。
■山下JOC会長「できることから実行していきたい」
全プログラム終了後、ミーティングを視聴していた山下泰裕JOC会長がゲストとして参加し、アスリートへ感謝の言葉を送るとともに、「素晴らしい提案をたくさんいただきました。できることから実行していきたいと思います」と述べました。東京2020大会について、「世界のアスリートが集える安全・安心な形で、オリンピックが開催できると信じています」と述べると、「十分とは言えない状況にあるかもしれないが、与えられた環境の中でベストを尽くしてほしい。最高の舞台で最高のパフォーマンスを発揮してほしいと考えております」と述べました。
続けてアスリートファーストの思いは選手強化本部長在任時より強くなっていると話し、「アスリートの声を謙虚に受け止め、澤野委員長と強く連携しながら、できることを実行していくJOCであり続けたい。皆さんの頑張りが多くの人の希望、光になるように、我々もやれることをしっかりとやって皆さんを応援していきます。悔いのない選手生活を送ってください」とエールを送りました。
最後に澤野委員長より、今後はJOCアスリート委員会が国内競技団体のアスリート委員会とも連携を取りながら、あらゆることに前向きに力を注いでいきたいと語ると、「来年の東京2020大会が安心・安全な形で開催されることを、我々アスリートは絶対に信じて、今できることをしながら日々のトレーニングに取り組んでいきたいと思います。私自身も東京2020大会を目指すアスリートの一人として、全力であと1年、頑張っていきたいと思います。皆さん、引き続き東京2020大会に向けて頑張っていきましょう」と呼びかけて、ミーティングを締めくくりました。
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