日本オリンピック委員会(JOC)は12月11日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、「第17回アスナビ採用企業情報交換会(アスナビ社員の育成を考える)」を行いました。
アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに195社/団体305名(2019年12月11日時点)の採用が決まりました。
今回の情報交換会では、アスナビを通じてアスリートを採用した企業から30社44名が参加。採用企業の選手活用事例やアスリートから見た企業支援などについて、情報が共有されました。
はじめに、主催者を代表して中森康弘JOC強化第二部部長が登壇。「選手の活躍は国民に、そして将来を担う子供たちに夢や希望を与えてくれます。皆さんには引き続き彼らのサポート、そして社会人として育てていただけますようよろしくお願いします」とあいさつしました。
次に、鈴木徳子JOCキャリアカデミー事業アシスタントディレクターから、アスナビを通じてアスリート社員を採用した企業同士のネットワークの構築、選手採用後の課題の共有など本交換会の目的が語られました。
続いて、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターがアスリートと採用企業向けに行ったアンケートから、出社日数の平均や選手が入社後に抱えている業務への不安などの課題を共有。「JOCアスナビチームでは企業とアスリートのwin-winの関係になることを目指しています。本日はご一緒に課題解決に向けて話し合えればと思います」と呼びかけました。
次に、各社の出席者による自己紹介が行われた後、2015年6月にアイスホッケーの岩原知美選手、ビーチバレーボールの藤井桜子選手を採用した株式会社市進ホールディングスで統括本部副本部長・法務部部長・人事部部長を務める七戸仁氏から、アスリート採用に至った経緯や雇用形態、出勤状況のほか、選手が大学受験生や社会人向けに行っている講演などの業務内容が語られました。また、アスナビ採用企業情報交換会をきっかけに、岩原選手が他企業のスポーツ教室に参加していることを紹介。「1つの会社ではやれることは限られます。アスリートを通じて企業間同士のネットワークを広げて、様々な活動をしていきましょう」と訴えました。
続いて、アスリートのキャリア事例紹介として、アスナビを通じて2012年に東海東京フィナンシャル・ホールディングスに入社し、同年のロンドンオリンピック女子近代五種に出場した黒須成美さんが登壇。2018年の引退直後の心境について「競技をやり切った充実感があった一方で、競技ができなくなる喪失感がありました。さらに、社員としてやっていけるかという不安を抱えていました」と語ると、「半年が過ぎると業務にも慣れ、現役時代にサポートをしてもらったので、アスリートで培ったものを生かして貢献したいと思うようになりました」と気持ちの変化があったことを紹介。また、引退後に会社で必要となる資格の取得に向け勉強をしていることや、アスリートの経験を生かし、社員向けにモチベーションの維持をテーマに講演を行っているなどの現状が説明されました。
最後は参加者がグループに別れ、JOCアスナビチームのメンバーを交え、分科会を実施。情報交換会の前にアスナビを通じてアスリートを採用した企業向けに行われたアンケートの内容が共有されたほか、選手とのコミュニケーションや仕事内容など各社が抱える課題や、どのような方針でアスリートを育成していくのかについて、活発な意見交換が行われました。
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