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2019.07.31 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
プレゼンテーションを行った7選手。前列左から吉村美穂選手、島田務選手、宮崎集選手。後列左から杉本りさ選手、藤田渓太郎選手、榊原利基選手、高原宜希選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
平岡英介JOC副会長兼専務理事(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は5月14日、東京都千代田区の経団連会館でトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに178社/団体277名(2019年5月14日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は、日本経済団体連合会(経団連)の会員企業/団体を対象に行われ、48社67名が参加しました。

 最初に主催者を代表し、平岡英介JOC副会長兼専務理事が挨拶に立ち、2010年にアスナビが始まった経緯やこれまでの選手の採用状況を説明。また、大会本番まで437日と迫った東京2020大会に向けたアスリートの現状について「過酷な戦いはすでに始まっています。大会が行われるのは来年ですが、選手にとって今年は出場資格を獲得できるか勝負の1年となっています」と話すと、「今日は来年の東京2020大会、そして3年後の2022年北京オリンピック、5年後の2024年パリオリンピックを目指す7名の選手がスピーチをします。ぜひ彼らの背中を押していただけますようお願いします」と、アスリート支援を訴えました。

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
経団連の井上隆常務理事(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
郵船ロジスティクス株式会社人事総務部人材開発課の宮澤知子課長(写真:アフロスポーツ)

 続いて、経団連を代表して井上隆常務理事が挨拶し、企業によるスポーツへの貢献、東京2020大会の成功に向けてのアスリートの雇用促進、セカンドキャリアの形成支援など経団連が取り組んでいる活動を紹介しました。また、これまでアスナビを通じて採用されたアスリートから「自身の活躍で会社を元気にしたい。社員としてもキャリアを積んで、引退後も会社に貢献したい」といったコメントが多く聞かれるなど、企業とアスリートの間で良好な関係が築かれていると言い、「これからアスリートへの注目はますます高まりますが、選手の雇用が企業に根付き、これが東京2020大会のレガシーになればと思っています。皆さまご協力よろしくお願いします」と呼びかけました。

 次に、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュール、選手活用のポイントなどを紹介。また、JOCアスナビチームがアスリート採用企業向けに実施している情報交換会などのサポート事例が語られました。

 続く「アスナビ」採用企業の事例紹介では、競泳の平井彬嗣選手、小松巧選手の2名を採用した郵船ロジスティクス株式会社の人事総務部人材開発課の宮澤知子課長が登壇。採用に至った経緯や担当業務に加え、社会貢献活動の一環として2人が中心となって行っている水泳教室について語りました。また宮澤課長は、2人と同期の社員について「皆で集まって応援に行くなど、プライベートでも仲が良く、強い絆を感じます。2人は社内での一体感の醸成に良い影響をもたらしています」と、アスリート採用の有用性を述べました。

 続いて、就職希望アスリート7名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介などで自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
杉本りさ選手(左)、藤田渓太郎選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
吉村美穂選手(左)、宮崎集選手(写真:アフロスポーツ)

■杉本りさ選手(空手)
「私は小学校4年生から13年間、空手道に励んでいます。高校では強豪校に進学し、ナショナルチームのコーチをしている監督の下で練習を行ってきました。大学進学後は、1年生の時に出場した関東学生体重別空手道選手権大会で優勝し、2年生からナショナルチームに所属しています。チームでの練習は大学の内容とは異なり、悩むこともありました。しかし高校時代に身につけた小さな積み重ねを続ける努力と、諦めない気持ちを持って、自身で工夫し頑張った結果、国際大会で成績を残すことができるようになりました。私の長所は小さな努力の積み重ねができること、粘り強さ、諦めない気持ちです。これらは競技だけでなく、業務の中でも生かせると信じています。就職後は、競技と業務の両立をしながら、社会に貢献できる人材になりたいと思っています」

■藤田渓太郎選手(陸上競技)
「私には10年間の競技生活で培った3つの大きな力があります。1つ目は、高校3年生の時、単身でスウェーデンに1ヶ月滞在した際、大会のエントリーはじめ日常生活まで全て英語で行い身につけた、何事にも恐れずにチャレンジする力です。2つ目は、マイナスなことでもプラスにとらえ、ポジティブに考えられる力です。現在、大学まで往復4時間をかけて通っていますが、通学の間に大学の課題を行ったり、競技を撮影した動画の分析を行うなど時間を有効活用しています。そして3つ目は、自ら考えて行動できる力です。大学入学後の約1年半、記録が伸び悩んだ時期がありました。しかし、日本中の様々な先生を訪問し、トレーニングメニューの大幅な改善を行った結果、オリンピック強化選手に選出されました。これらは競技だけでなく業務にも生かせると思います」

■吉村美穂選手(フェンシング)
「私は小学校4年生の時、3歳から始めた器械体操の先生に誘われフェンシングに出会いました。中学3年生の時から日本代表選手としてユースオリンピックなどに出場。昨年はジャカルタ・パレンバンアジア大会、世界選手権の代表に選ばれました。現在は東京2020大会に向け世界ランキングを上げるべく、海外を転戦しています。中学、高校ではフェンシング部の無い学校を選択し、練習内容、メンタル面、食事管理など日常生活の充実、競技力向上のための自己管理能力を身につけました。また、全ての機会をチャンスととらえ、状況に応じて臨機応変に対応できる力も私の強みです。採用いただけましたら競技で培ったこれらの力を生かし、結果で応えるのはもちろん、応援したいと思える選手になりたいと思っています」

■宮崎集選手(トライアスロン)
「私は小学校、中学校で競泳、高校では陸上競技に打ち込んできましたが、競泳や陸上競技では、あと一歩というところで全国大会への出場を逃し、悔しい思いをしてきました。この悔しさをどうしても晴らしたいという気持ちに加え、今までの経験が強みになると思い、大学入学と同時にトライアスロンを始めました。私は高い目標や難しいことにも恐れずに挑戦することを大切にしています。競技を始めると決めた時、大学在学中に国際大会へ出場し、将来はオリンピックに出るという目標を決めました。しかし実際にレースに出場すると、上位は幼い頃からトライアスロンをやってきた選手ばかりという厳しい現実を目の当たりにしました。それでも挑戦しないと何も始まらないと自分自身を奮い立たせて、厳しい練習に励んだ結果、わずか2年で国際大会に出場することができました。大学での競技生活を通じ身につけた、目標を達成するために必要なことを考える力や、目標から逆算して計画を立て実行する力は企業でも生かせると思います。どうぞよろしくお願いいたします」

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
高原宜希選手(左)、榊原利基選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
島田務選手(写真:アフロスポーツ)

■高原宜希選手(スキー・スノーボード)
「私は5歳でスノーボードを始め、12歳でスノーボードクロスに出会いました。17歳からは世界を転戦するようになり、今年で4年目になります。私の夢はオリンピックで金メダルを獲得することです。スノーボードクロスを始めた当時、周りの方からは世界で活躍するのは難しいなどと言われました。しかし、不可能なことはないと思い続け、試行錯誤しながらトレーニングを行ってきた結果、今シーズンのワールドカップで日本人、またアジア人として史上最高の4位という順位を記録できました。また、ユニバーシアード大会でも3位という日本人選手として過去最高の結果を残せました。今後はこの成績に満足することなく、もっと安定して大会で上位に入れるよう努力していきます。私の長所は1度決めたことは絶対にやり遂げるまで続ける力です。企業に入社した後は競技だけではなく、社会人として仕事もしっかり行える人材になりたいと思っています。よろしくお願いします」

■榊原利基選手(トライアスロン)
「2016年に競技を始めてからは、とにかく練習した分だけ結果が出ると考え取り組んできました。仕事をしながらどのように練習時間を確保するかを考え、効率よく作業し、最善の行動を取り続けた結果、残業時間を減らすことに成功し、仕事と競技を両立してきました。そして競技を始めて1年が経った2018年2月の記録会では、強化指定選手の標準記録を突破することができました。現在もシステムエンジニアとして働きながら、業務前後や休日を利用して、強化選手として競技活動を続けています。私の目標はオリンピックでメダルを獲得することです。これまで培った効率よく、最善の行動を取り続けることで、世界一の練習を行い、必ず目標を達成します。私の夢を一緒に目指していただける企業の下で働けたらと思っています。ぜひご支援のほど、よろしくお願いします」

■島田務選手(パラバドミントン)
「私は16歳の時に事故に遭い車椅子生活になりました。はじめは車椅子バスケットボールや車椅子テニスなどをやっていましたが、妻に出会ったのをきっかけにパラバドミントンに真剣に取り組むようになりました。また競技とは別に、日本障がい者バドミントン連盟が行っている学校やスポーツ施設への訪問に積極的に参加し、パラバドミントンを知ってもらえるように活動を行っています。車椅子になって多くの困難を乗り越えてきました。周りの方に勇気や一緒に頑張ろうという気持ちを与えられる存在になれると思います。採用のご検討よろしくお願いします」

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
大林素子さんが応援メッセージ(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
説明会終了後には選手と企業関係者が名刺交換などで交流を深めました(写真:アフロスポーツ)

 最後に、バレーボールで1988年ソウルオリンピック4位入賞、1992年バルセロナオリンピック5位入賞、1996年アトランタオリンピック出場の大林素子さんが応援メッセージを送りました。大林さんはアスリートの努力する姿勢について、「参加企業の皆さんも今までの人生の中で、苦しいことを経験したり、困難を乗り越えてきたことはあると思います。しかし、彼らは極限まで体を追い込むことをしています。何があっても頑張りきれる、絶対に乗り越えていく力があります」と述べると、「私はオリンピックに3回出場しましたが、メダルを獲得することはできませんでした。スポーツは勝つことが求められます。2位ではダメなんです。トップを目指して頑張っている彼らは会社にとって特別な存在になれる人材です。ぜひ選手の話を聞いてもらえればと思います」と参加企業に訴えました。

 また、説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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