日本オリンピック委員会(JOC)は3月16日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「平成30年度第3回JOCオリンピアン研修会」を開催しました。
この研修会はJOCオリンピック・ムーブメント専門部会所管の下、同アスリート委員会が中心となって行っているもので、オリンピアン自身がオリンピズムやオリンピックの価値をあらためて学び、アスリート間のネットワーク構築を進めることにより、オリンピック・ムーブメント事業への積極的な参加を促すとともにアスリート自身の今後の活躍に役立てることを目的としています。昨年6月の長野、同12月の福岡に続き、今年度最後の開催となった東京会場には、オリンピアン、パラリンピアン合わせて73名が参加しました。
はじめに、本研修会の司会進行を務める千田健太JOCアスリート委員が開会のあいさつに立ち、「ぜひ多くの方と交流し、オリンピアン自身がオリンピックの歴史、理念、価値を再確認して、JOCのオリンピック・ムーブメント活動や皆さまの今後の活動に役立ていただければと思います。東京2020大会まであと500日を切りましたが、ホスト国のオリンピアンの役割は大変重要だと思っておりますので、ぜひ我々の力で大会開催に向けてさらに盛り上げていければと思います」と参加者に呼びかけました。
■オリンピック、パラリンピックについて学ぶ
参加オリンピアン、パラリピアン同士の自己紹介に続き、JOCオリンピック・ムーブメント専門部会員の來田享子中京大学教授による講義「オリンピックについて」が行われました。本講義のねらいについて來田教授は、オリンピアンとして社会のために何ができるのかを考えるとともに、「ここにいる皆さんは社会にとって“時代の記憶”、それぞれの時代に生きた人たちの記憶を担う一部の人になっている。そういう人たちが子どもたちに対して何かを伝えようとする力はとてつもなく大きいと思います。オリンピックに出場したという自分の経験をうまく言葉にする材料にしていただければと思います」と強調。その上で、「近代オリンピックの父」と呼ばれるクーベルタンの理念や、オリンピズムとオリンピック・ムーブメント、オリンピック憲章の憲法的性格、オリンピックバリュー(価値)である「エクセレンス(卓越)」「フレンドシップ(友情)」「リスペクト(敬意/尊重)」の意味を説明し、最新の国際的な動向として国際オリンピック委員会(IOC)総会で承認された「アスリートの権利と責任宣言」を紹介しました。
続いて、講義「パラリンピックについて」では、競泳で2004年アテネ大会に出場したパラリンピアンであり、JOCアスリート委員会オブザーバーでもある杉内周作さんが講師を務め、パラリンピックの基礎知識としてパラリンピックの歴史や価値などを説明。また、パラリンピックにもオリンピックと同じように「勇気」「強い意志」「公平」「インスピレーション」の4つのバリューがあり、杉内さんは「3つのオリンピックバリューと合わせて1つのスポーツの価値として伝えることができるのではないか。そして、それをするのが我々スポーツを愛してきたオリンピアン、パラリンピアンの役目ではないかと思います」と話しました。
■JOC実施諸事業、東京2020組織委員会の取り組みについて報告
昼食休憩の後、午後最初のプログラムとして、JOCアスリート委員会オブザーバーの小塚崇彦さんがスペシャルオリンピックスについて紹介。スペシャルオリンピックスとは、知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織で、その歴史や活動に関して動画を交えて紹介した小塚さんは「彼らアスリートが頑張っている姿を見守っていただけると、本当にスポーツが好きなんだなという気持ちを思い出せると思うので、ぜひ皆さんも大会会場に足を運んでいただければと思います」と、積極的な参加を呼びかけました。
続いて、JOCアスリート委員会オブザーバーの小口貴久さんが登壇し、JOCが実施しているオリンピック・ムーブメント推進の取り組みについて説明。オリンピック・ムーブメント推進事業であるオリンピックデーラン、オリンピック教室などのハローオリンピズム事業やオリンピックコンサート、東日本大震災復興支援事業であるオリンピックデー・フェスタなどの活動内容を紹介しました。続いて、JOCオリンピック・ムーブメント推進部の浜崎佳子オリンピックミュージアム準備室長より、今年9月にオープンを予定している日本オリンピックミュージアムの展示物や活動イメージなどを説明。最後に小口オブザーバーより「NOC(国内オリンピック委員会)が主導して運営するミュージアムは世界初なので、ここに来ればオリンピアンに直接触れ合える、そのような機会を作っていきたい。ぜひご協力をいただければと思います」と呼びかけました。
次に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)の取り組みについて、オリンピアンで東京2020組織委員会の職員でもある伊藤華英さんが、東京2020大会のビジョンである「スポーツには世界と未来を変える力がある」をもとに、大会の概要をはじめ、競技数、参加人数などの大会基礎情報、また、東京2020大会の約5000個の金・銀・銅メダルを全国各地から集めた小型家電・リサイクル金属で作る国民参画型プロジェクト「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を説明。続いて、組織委員会広報局より公式チケットの販売スケジュール、ID販売などについて情報共有や、競技のセッションスケジュール、テストイベントについて説明。「東京2020大会まで1年というタイミングを迎えて、皆さんも様々な場所でお話される機会が増えてくると思います。ホスト国のオリンピアン、パラリンピアンの皆さんの影響力は本当に大きなものだと思いますので、この機会をフルに活用して、オリンピック・パラリンピックの価値、スポーツの価値を世の中に発信していただければと思います」と締めくくりました。
■「NFアスリート委員会の活動」についてディスカッション
続いて、本研修会の最後のプログラムとして、「NF(国内競技団体)アスリート委員会が今後行っていくべき具体的な施策について」をテーマにグループディスカッションが行われました。ディスカッションに先立ち、本プログラムで進行を務めたJOCアスリート委員会の寺尾悟委員が、JOCアスリート委員会やNFアスリート委員会の概要、役割、取り組みについて説明。加盟66団体のうち30団体がアスリート委員会を設置しており、同委員会が主体となってファンイベントを開催するなど積極的に活動している委員会もあるが、どのような活動に取り組むべきか悩んでいる委員会も多くあり、寺尾委員は「NFアスリート委員会が取り組むべき活動について、オリンピアンだからできること、後輩選手や若手選手に向けてどのような手助けをできるかなど、アイデアをいただければと思います」とディスカッションのテーマを投げかけました。
9つのグループで行われたディスカッションでは、オリンピアン、パラリンピアンがともに活発な議論を展開。発表の場では「アスリート委員会の作り方・取り組みに関するNF間を越えた情報共有」、「他競技との横のつながりのためのパイプ役をJOCアスリート委員会に担ってほしい」、「NFと選手の関係性向上」など、多種多様な意見、アイデアが発表されました。
これらの意見や研修会で学んだプログラムの内容を踏まえ、最後に寺尾委員は「議論だけして意見を伝えられないのでは進展がないと思います。これを次のステップにつなげていきたいと思いますし、今日出てきた意見を全てまとめて、各NF、もしくはアスリート委員会にヒント、アイデアとして情報提供させていただきたいと思います。その上で我々も改善できるところはしっかり改善していきたいと思います」とまとめ、本研修会を締めくくりました。
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