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2019.03.18 その他活動

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
「平成30年度総務本部フォーラム」を開催(写真:フォート・キシモト)
女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
松丸喜一郎JOC総務本部長/常務理事が開会の挨拶(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は2月27日、「平成30年度総務本部フォーラム」を味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で開催しました。本フォーラムは総務本部の各専門部会における取り組み並びにJOC加盟団体(NF)と情報交換を行う場として実施。今回は「女性スポーツ専門部会」、「アントラージュ専門部会」、「スポーツ環境専門部会」の3専門部会合同で開催され、それぞれのテーマに基づいたパネルディスカッション、グループディスカッションなどが行われました。なお、今年度はJOC、NFの役職員ら約120名が参加しました。

 はじめに、松丸喜一郎JOC総務本部長/常務理事が開会の挨拶に立ち、総務本部が担う最も重要な役割としてオリンピック・ムーブメントの推進を挙げました。そのオリンピック・ムーブメントの常設の発信場所として今年9月にオープン予定の「日本オリンピックミュージアム」の詳細をVTRを交えて紹介。松丸本部長は「東京2020大会を間近に控えて、アスリートが獲得するメダルに国民の皆さんの注目が集まっていますが、本来のオリンピズムというものはそれが目的ではなくて、大会はあくまで手段であるということをこのミュージアムでは発信していきたいと思います」と、オリンピックミュージアムの役割を説明しました。

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
山口香JOC理事/女性スポーツ専門部会長(写真:フォート・キシモト)
女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
山口理恵子JOCスポーツ専門部会・ワーキンググループリーダー(写真:フォート・キシモト)

■女性理事・役員の割合30%を目指して

 本フォーラムは3つの専門部会のパートに分けて実施され、まず午前中に行われた女性スポーツ専門部会では、山口香JOC理事/女性スポーツ専門部会長による挨拶と趣旨説明の後、前日の26日に開催された「スポーツ団体女性役員カンファレンス」の内容が共有されました。「女性の役員のみが集まり、生の意見を聞くことができました。大変意義深い会議でした」と振り返った山口部会長。一方で、内閣府男女共同参画局は「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」を掲げていますが、スポーツ界はJOCが18.2%、NFの平均が12.6%という現状が山口理恵子JOCスポーツ専門部会・ワーキンググループリーダーから報告されました。26日のカンファレンスでは、その目標達成に向け「スポーツ団体の女性を取り巻く環境と課題」と「次の一歩をどうするか」について議論が交わされており、本フォーラムにも出席したカンファレンス参加者からは、各所属団体で実際に行われた課題解決策や取り組み、また新たに生まれたアイデアなどが次々と紹介されました。

 最後に山口部会長は女性スポーツ専門部会のまとめとして、「これは女性の役員のみのことではなくて、スポーツ界がこれから未来に向けて発展していくためのプロセスだとぜひ共有していただいて、これから先に進んでいく皆さまとともに発展していければと思っております」と、女性役員の広がりとスポーツ界の発展に向けたさらなる協力を求めました。

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
高橋尚子JOC理事/アントラージュ専門部会長(写真:フォート・キシモト)
女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
松下雄二監督(左)と吉村祥子コーチが「望ましいコーチ像と保護者との関係構築について」をテーマにパネルディスカッション(写真:フォート・キシモト)

■コーチと保護者の関係構築について

 情報交換会を兼ねた昼食休憩の後は、アントラージュ専門部会によるプログラムが行われました。最初に、高橋尚子JOC理事/アントラージュ専門部会長が本年度事業報告ならびに来年度活動について説明。その中で高橋部会長は、アントラージュ(監督、コーチ、家族などアスリートを取り巻く人々のこと)の観点から、今年度は「子どもと保護者、またコーチと保護者との関わり方」を軸に活動したことを報告し、「NFの皆さんと保護者の方が今後どのように関わっていくか、本フォーラムを通じて感じていただいて、間口を広げていただきたいと思います」と、趣旨を説明しました。

 次に、日本ユニセフ協会「子どもの権利とスポーツの原則」について、日本ユニセフ協会広報・アドボカシー推進室の中井裕真さんが解説しました。これは日本初・ユニセフ発となる子どもとスポーツに関する原則で、スポーツの中で子どもたちが暴力や身体への過度な負担などマイナスの影響を受けることがないように、子どもとスポーツに関わる全ての人たちに協力してもらうための10の指針が示されています。これら10の指針を1つずつ説明した中井さんは、「日本初・ユニセフ発として世界に広めていければと思っています。日本のレガシーとして、皆さまにお力添えをいただきながら残していきたいと思っています」と今後の展望を語りました。

 続いて、「望ましいコーチ像と保護者との関係構築について」をテーマにパネルディスカッションが行われました。大阪体育大学の土屋裕睦教授の進行のもと、松下雄二卓球男子ホープスナショナルチーム監督(U-12、U-10、U-8統括)、吉村祥子JOCエリートアカデミー女子レスリングコーチがパネリストとして参加。「保護者との関係も含めうまくいった事例」「指導が難しかった事例」「アントラージュとして大切にしていること」について、それぞれの立場や経験をもとに意見を交わしました。
 当初、選手選考などについて松下監督は、自分の感覚だけで取り仕切っており、保護者からの問い合わせが多かったそうですが、「自分の考えを保護者に伝えるようにした」という現在は、選考基準や年間スケジュールといったクラブのルールを透明・明確にするため文書化。それにより保護者からの問い合わせがなくなり、良好な関係を築いているとのことです。また「母親目線で考えることが大事」とも付け加えました。一方、吉村コーチは選手、保護者ともにフレンドリーな関係で接しているとのことですが、「半分コーチで半分ファミリー。でも密になり過ぎない。一線は引いています」と述べ、「私という人間を理解してもらいながら歩んでいっています」と、コーチとしての選手や保護者に対するスタンスを話しました。

 その後、参加者からは「選手選考の説明の難しさ」など、実際に指導の現場で起きている保護者との関係を築く上での質問が多数寄せられ、それについて一層深い意見交換、共有がなされました。最後にまとめとして、高橋部会長は「保護者の方は本当に熱心で、勉強したいという思いを持っています。今、若年層の育成はすごく大切な時代になっていきますので、保護者の方にもぜひ目を向けていただいて、ぜひ皆さんの競技団体で保護者向けのセミナーなどを開催し、保護者との良い関係が増えていけばと思います」と呼びかけました。

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
野端啓夫JOC理事/スポーツ環境専門部会長(写真:フォート・キシモト)
女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
環境保全に関してのグループワークでは次世代を見据えた意見が多く挙げられた(写真:フォート・キシモト)

■スポーツ環境保全は啓発から実践活動へ

 本フォーラムの最後に行われたスポーツ環境専門部会では、はじめに、野端啓夫JOC理事/スポーツ環境専門部会長が、環境保全に関する今後の展望として「東京2020大会のその先に向けて、今までは啓発活動を主体としてきましたが、これからは実践活動を進めていきたいと思います」と開会挨拶を行いました。
 次に、荒田有紀JOCスポーツ環境専門部会員より「東京2020大会と持続可能性に配慮した運営計画」について情報提供があり、気候変動対策、資源管理、大気・水・緑・生物多様性等に関する東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の取り組みが解説されました。

 続いて、藤森涼子NPO法人気象キャスターネットワーク代表が「未来の天気予報」として、100年後の気象予測を紹介。環境保全に関してこのまま何の対策もしなければ、夏は日本各地で40℃を超える猛暑日が当たり前のように続き、また、猛烈な台風・大雨による氾濫やがけ崩れ、反対にまったく雨が降らない地域の干ばつも頻繁に起こるようになると警鐘を鳴らしました。このような地球温暖化が進む未来に向けて藤森代表は、ひとり一人ができることとして「CO2を減らしていく緩和策」と「地球温暖化に備える適応策」の2つの考え方を提示。また、環境省の地球温暖化対策キャンペーン「COOL CHOICE」の実践も呼びかけました。

 その後、野端JOC理事/スポーツ環境専門部会長が本年度事業報告を行い、来年度活動について環境啓発ツールの開発や、国内外環境に関するスポーツ界の国際情勢について説明を行いました。

 また、これらの情報提供を踏まえ、「各競技団体が東京2020大会以降のスポーツ環境を維持向上するための環境啓発・保全活動について」をテーマにグループディスカッションを実施。コーディネーターを務めた玉利聡一JOCスポーツ環境専門部会員の進行のもと、各グループからは「子どもたちに考える場を設ける」「子どもたちに問題意識を広める」など次世代を見据えた意見が多く出る一方、「競技団体のSNSを通じた環境啓発の実施」「競技に使用するウェアや器具にエコ素材を用いる」「環境保全活動に取り組む人員不足や費用がかかる等の課題があるため、活動内容に工夫を凝らさなければならない」といった具体策や課題も挙げられるなど、様々な意見が取り交わされました。

女性理事の増加、コーチと保護者の関係構築、スポーツ環境保全をテーマに「平成30年度総務本部フォーラム」を開催
塚原光男JOC総務副本部長/理事が閉会の挨拶(写真:フォート・キシモト)

 全てのパート終了後、本フォーラムのまとめとして塚原光男JOC総務副本部長/理事が閉会の挨拶。「スポーツは未来を変える力を持っています。その意味でも、あと1年4カ月と迫った東京2020大会を目指して、皆さんとともに情報交換をさせていただいて、より良いスポーツ環境を作っていきたいと思います。JOC総務本部としましても、ぜひ皆さん方のご支援をしっかりやっていきたいと思います」と述べ、今年度の総務本部フォーラムを締めくくりました。

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