公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は8月29日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、「第10回アスナビ採用企業情報交換会(フェンシング)」を行いました。
アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに152社/団体226名(2018年8月29日時点)の採用が決まりました。
今回の情報交換会では、日本フェンシング協会から9名、フェンシング選手を採用した企業から7社13名が参加し、それぞれ情報を交換、交流しました。
はじめに主催者を代表して、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが登壇し、本情報交換会の目的、アスナビの就職実績、採用企業側から挙がった選手採用後の課題などを紹介。そして、アスナビを通じて採用された226名のうち、昨年度と一昨年度でその半数にあたる113名が就職を決めたことを報告すると、「就職後も今回お集まりいただいた企業様とアスリート、そして競技団体がwin-win-winになるよう繋げていくことが我々の目指している使命だと考えています」と話し、「先ほど挙がった採用後の課題について、今回の発表いただく事例にいろいろなヒントが出てくるかと思います。今日は最後までよろしくお願いします」と挨拶しました。
■幅広い場面での選手活用を
次に、「競技団体からの情報提供」として、日本フェンシング協会の太田雄貴会長が登壇し、同協会の活動方針や、2年後に迫った東京2020大会に向けての代表選考方法などについて、情報を共有しました。また、現在同協会ではさまざまな改革に取り組んでおり、競技会においてLEDパネルを導入したり、選手によるサイン会を実施するなどして、エンターテインメント化を進めていることを紹介。そして、「選手の採用のみならず、『こういうタイアップがしたい』『会社のPRにフェンシングを使えないか』など、何かご一緒できることがあれば、私たちのリソースをどんどん使ってください」と述べ、選手採用のみならず、企業活動の幅広い場面での選手の活用や協会との連携を呼びかけました。
続いて、同じく日本フェンシング協会の宮脇信介専務理事が、選手強化の観点から、世界における日本の立ち位置、フェンシングの競技特性とアスナビとの関係、強化戦略と企業協力などについて説明しました。宮脇専務理事は、選手が現役引退後も社会で活躍していくには「社会性が必要」と強調した上で、集まった採用企業に対して「選手と企業様のwin-winの関係を持続するためにも、選手と話し合っていただいて、選手が社会性を維持するためにはどういった業務課題を与えたらいいのかを、ぜひお考えいただけたらと思います」と訴えました。
次に、採用企業によるアスリートの活用事例の紹介が行われました。まず、全日本空輸株式会社(ANA)の國分裕之取締役常務執行役員が登壇し、ANAグループ企業におけるアスナビ選手採用についてプレゼンテーションを行いました。
ANAグループには現在、フルーレで活躍する柳岡はるか選手をはじめ、19名の社員アスリートが在籍しています。國分氏はまず、選手に関する社内プロモーションやグループ一体になっての応援、柳岡選手によるフェンシング教室の様子、アスリート同士の応援・サポート、アスリートがもたらす効果などの事例を共有しました。「東京2020大会、北京2022大会がありますが、それ以降が大切」と、引退後を見据えたアスリート支援・成長機会の創出の重要性を訴えた國分氏。そのための工夫・努力の事例として、同社では与えられた仕事の進め方や割り振り、予算調整や管理などをアスリート自ら考え、実施させていることなどを紹介しました。
続いて、現在、山田あゆみ選手と久良知美帆選手の2名のフェンシング選手を含む6名のアスリートが所属する城北信用金庫人事部の小野裕美さんが登壇。同金庫の採用状況や雇用・勤務形態、選手へのサポート体制、業務内容、職員向けイベントや観戦イベントなどについて説明しました。また、最近アスリートの業務として、日報を導入したことを紹介。「どんな小さなことでも仕事につながることを実感してもらいたい」との思いから、業務内容だけでなく練習内容も記載してもらい、面談等に役立てていることを報告しました。そして、「我々がアスリートを採用して6年目になりました。ご紹介した事例は昨日今日で始まったわけではありません。地道にコツコツやってきたことが今、結果として現れてきました」と話し、所属する選手に対して「企業アスリートとして、そして人として成長することで、競技成績も上がり、地域のお客様や職員からも愛される選手になってくれると思います」と期待を寄せました。
■選手活用に向けて情報交換
最後に、日本フェンシング協会やキャリアアカデミーのスタッフを交えて情報交換会が行われました。参加者は3グループに分かれ、フェンシング選手の活用について気になる事(不安、不満など)、各社の工夫、担当者の考え・アイディアなどを共有。各グループでは「国内の大会が少ないため、社員の応援はどうすべきか」「フェンシングならではの応援の仕方や、横断幕などのグッズ作成時に注意すべきこと」「アスリートをどう活用したらいいか」など多岐にわたるテーマが話し合われ、参加者はそれぞれの立場からの意見やアドバイスに耳を傾けていました。
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