日本オリンピック委員会(JOC)は11月28日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)にて「平成29年度JOC/NF国際フォーラム」を開催しました。
JOC/NF国際フォーラムとは、JOCが推進する国際連携に関する最新情報を各NFに提供するとともに、各国際競技団体(IF)において日本に求められる役割を再認識し、2020年以降を見据えた国際スポーツ界における日本の国際力の更なる向上を目指すものです。今年度は各NF等から160人が出席し、登壇者のプレゼンテーションに熱心に耳を傾けました。
■新しい形のオリンピック・ムーブメント
本フォーラムは前・後半の2部構成で進められ、最初に竹田恆和JOC会長があいさつし、本フォーラム前に国際協力プログラム「IOCオリンピックソリダリティ 東京2020特別プログラム」の発表を行ったことを報告。「今後もJOCではIOCと連携して国際スポーツ界における、さまざまな貢献をしてまいりたい」と力強くコメントしました。そして、「東京2020大会開催に向けた準備は今後ますます加速していくものと思います。今後一層、国際力を向上させ、日本のスポーツ界が一丸となって東京2020大会を成功させなければなりません。今回のフォーラムをNF間、そしてJOCとの連携や情報交換の場として活用いただければと思います」と語りました。
次に、ペレ・ミロIOC副事務総長・OS局長が登壇し、「オリンピック・ムーブメント、OSの果たす役割」と題した基調講演を行いました。ミロOS局長はまず、「東京2020特別プログラム」について触れ、「このプログラムはJOCがOSとともに立ち上げましたが、NFのサポートがあってこそできることです。このユニークなプログラムは、IOCにとっても初となります。JOCやNFの皆さま方に感謝しています」と話しました。
続いて、IOCが2014年に採択した「オリンピック・アジェンダ2020」について説明しました。ミロOS局長は、このアジェンダ2020が、世界が抱える問題解決への一助となるよう、今の時代に合わせた新しい形のオリンピック・ムーブメントのあり方を示したものであることを強調。そして、その中で重要となる「信頼性(Credibility)」「持続性(Sustainability)」「若者(Youth)」という3つのキーワードと5つのポイントについて、それぞれ解説し、「現在は20年前、40年前、100年前とは状況が違います。今の時代に合わせて、オリンピック・ムーブメントを見直す必要がありました。ぜひ皆さんで現状を考えてみてください。そして、それぞれの地域やIFで、人々のニーズを満たすためにどうしたらいいか考えてください」と呼びかけました。
■JOC国際人養成アカデミーを37名が修了
後半の部の最初に、平成29年度JOC国際人養成アカデミーの修了式が行われました。各NFから推薦を受けてアカデミーを受講し、本年度修了した37名(うち出席者23名)に、齋藤泰雄JOC副会長・国際専門部会長から修了証が贈られました。
■IF会長の仕事内容とは
次に、国際体操連盟の渡辺守成会長が「IF会長とは(IF会長の業務紹介)」をテーマに特別講演を行いました。渡辺会長は、会長選挙の勝因分析やIF会長に必要な資質、会長業務などについて、自身の体験談をまじえて話しました。また、スライドを用いながら、今後スポーツが果たす役割についての考えを発表。イギリスで始まった産業革命を引用しつつ、少子高齢化に伴う社会保障費の増加が問題となる今、スポーツには大きなチャンスであると強調しました。そして、「なぜイギリスで産業革命が起こったか。それは、野心を持った多くのイノベーターがいたからです。2020年を期に日本でもイノベーターがスポーツを変革し、スポーツを産業化しないといけないと思っています。そして東京2020年大会が終わった後に、多くの関係者がイノベーターとして日本のスポーツを変えたと、そして少子高齢化の中でスポーツが日本を救ったと歴史に書かれればと思います」と力を込めました。
■アスリートの国際力強化へ
続いて行われたプログラムでは、パネリストにJOC国際専門部会の小谷実可子副部会長、有森裕子部会員、田中ウルヴェ京部会員、コーディネーターに竹内浩部会員を迎えて、「日本スポーツの国際力強化のためのアスリートの国際力強化」をテーマにパネルディスカッションを実施。オリンピックメダリストであり、競技キャリアの早期から海外志向を持っていた3人ですが、いずれも当時は国際性の必要性を強く意識していたわけではなかったと言います。しかし、現在の選手や指導者の取り巻く環境は変わったと言い、有森部会員が「今は海外に行って、何でも経験していいよという流れが圧倒的に増えている。それが、各国のアスリートに対して物怖じしなくて済むということになれば、今の流れは昔になかった良い流れだと思います」と語れば、小谷副部会長も「今の選手は世界に出て行くのが当たり前という中で育っていますので、海外の選手と同等という部分が私たちのときとは違ってきている」と、国際性の高まりを強調しました。さらに、田中部会員は「グローバルの目線で引退後の選手にすごく大事なのは、シンクロをやっていた自分は引退後どうあるべきかではなく、シンクロ以外でもスポーツ、日本、地球規模で考えて一女性としてどうであれば、100年、200年先の社会に役立つのか考えること。海外に行くとそういうことを多く聞かれますので、海外に出る経験が非常に大事だと思います」と語り、現役引退後も見据えて、国際性を身につける必要性を訴えました。
最後に、村津敬介JOC理事・国際専門部会副部会長が、「JOCの一番の大きなミッションは人材の確保と養成なのだと、竹田会長が常日頃おっしゃられています。今日国際人養成アカデミーを卒業された皆さんは、2020年に向けてますますJOCが大々的に発信しなければならない中で、中核を担う方たちだと思います」と期待を寄せました。そして、「私自身も国際人養成アカデミーでずいぶん勉強させていただきましたし、皆さんも何か得られたのではないかと思います」と述べ、本フォーラムを締めくくりました。
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