日本オリンピック委員会(JOC)は6月9日、東京国際フォーラムで「オリンピックコンサート2017」を開催しました。
オリンピックコンサートは全世界で行われているオリンピックデーイベント(オリンピックデーは6月23日)の一環として日本独自に開催しているイベント。感動的なオリンピック映像と壮大なシンフォニーオーケストラの共演は、毎年多くの方にご好評いただいています。
今年は「つなげよう情熱、輝く未来へ!」をテーマに、指揮は藤岡幸夫さん、演奏は「THE ORCHESTRA JAPAN」が担当。オリンピアン(水泳・競泳/1988年ソウルオリンピック、1992年バルセロナオリンピック出場)で俳優の藤本隆宏さんが6年連続でナビゲーターを務めました。
■リオの感動がよみがえる演出
オープニングナンバーはジョン・ウィリアムズ作曲の『オリンピック・スピリット』。映像ではリオデジャネイロオリンピックの開会式から始まり、昨夏の興奮がよみがえる日本人選手や世界のアスリートの熱戦が次々に展開。さらに「より速く(Citius)、より高く(Altius)、より強く(Fortius)」というオリンピックのモットーとともに、近代オリンピック初期から東京2020大会へとつながっていく映像は、まさに今年のテーマである「つなげよう情熱、輝く未来へ!」を表現する演出となりました。
1曲目から会場がオリンピックムードに包まれる中、続く2曲目はアントニン・ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』第2楽章。ここでは「人々の心に残るヒーロー、ヒロイン。挑戦と情熱の物語」をテーマに、スキー・フリースタイルの上村愛子選手、スキー・ジャンプの髙梨沙羅選手、原田雅彦選手、女子バレーボール日本代表、柔道の野村忠宏選手、谷亮子選手、女子ソフトボール日本代表らが勝ち取った栄光、または敗れて流した悔し涙など、オリンピックの思い出に残るシーンを紹介。そして荘厳な調べで迎えたクライマックスでは、日本中を感動に包んだ浅田真央選手の2014年ソチオリンピックでの演技がクローズアップされました。
■小谷実可子さん、小塚崇彦さんが平昌、東京2020大会へエール
涙を誘う感動の余韻が残るまま、ゲストオリンピアンの小谷実可子さん(水泳・シンクロナイズドスイミング/1988年ソウルオリンピック銅メダル)、小塚崇彦さん(スケート・フィギュアスケート/2010年バンクーバーオリンピック8位入賞)が登場。オリンピックを目指し練習に打ち込んだ日々、出場したオリンピックの思い出などを振り返る中で、このコンサート同様にスポーツと音楽・芸術の融合を追い求め、極め続けてきた2人だからこそ分かり合えるアスリートが表現する美しさ、強さなどを語り合いました。
そして、平昌冬季オリンピック、東京2020大会を目指すアスリートに向けて小塚さんが「これからメダルの期待もかかってくると思いますが、それ以上に皆さんにはそこまでの道のりで学ぶことがたくさんあると思います。そこを大事にして、真剣に、楽しく頑張ってほしいと思います」とメッセージ。小谷さんも「こうして国を挙げてスポーツを支えていただけるようになると、どうしても結果を求められますが、アスリートの皆さんには諦めない戦いを期待したいです。それで十分だと思いますし、平昌、東京と応援する側で皆さんを盛り上げていきたいと思います。選手の皆さん、頑張ってください」とエールを送りました。
小谷さん、小塚さんからバトンタッチを受けた第1部ラストの曲目、歌劇「イーゴリ公」から『だったん人の踊り』では「アスリートの美しさ」にフォーカス。フィギュアスケート、体操、新体操、スキー・フリースタイル、スノーボード、シンクロナイズドスイミングなど、まさに美しさを極めた演技の数々が、柔らかな音色から徐々にアップテンポに盛り上がっていくリズムに乗って映し出されると、会場からは大きな拍手が送られました。
■新妻聖子さん、中川晃教さんのスペシャルステージ
体操・体操競技の内村航平選手、レスリングの吉田沙保里選手、卓球の福原愛選手、ウエイトリフティングの三宅宏実選手らが歌う、東日本大震災の復興応援チャリティーソング『花は咲く』のリオデジャネイロオリンピックメダリストバージョンの映像が紹介された後、第2部がスタート。ミュージカル界屈指の歌姫として第一線で活躍中の新妻聖子さんと、音楽活動と並行して数々のミュージカルの主演を務める中川晃教さんによるスペシャルステージで幕を開けました。
中川さんは「一瞬、一瞬がつながっていく思いを込めて」と作曲した『止まらない一秒』を、新妻さんは2002年ソルトレークシティーオリンピックの開会式でも演奏された『GOLD』を、それぞれ伸びやかな歌声で熱唱。そして、2006年トリノオリンピックのフィギュアスケートで金メダルを獲得した荒川静香さんが、エキシビションの演技で採用したことでも知られる世界的名曲『You Raise Me Up』をデュエットで披露しました。この曲に込められた「あなたがいるから私は頑張れる、力が沸いてくる」という思いを会場に届けた新妻さんは、改めてオリンピアン、アスリートに向けて「いつも尊敬の念と、ありがとうという気持ちでテレビの前で応援しています」と気持ちを伝えると、「目の前で応援できる日が間もなく来ると思うと、すごくワクワクしています」と、3年後に迫った東京2020大会への期待を語りました。
スペシャルステージが終わると、JOCと同様に各国・地域で独自のオリンピック・ムーブメントの活動を行い、今回のオリンピックコンサートに来場した世界空手連盟のアントニオ・エスピノス会長、オランダ、フィンランド、ノルウェーのオリンピック委員会の方たちが紹介されました。
■オリンピアン、アスリートからメッセージ
続いて行われたオリンピアン、アスリートによるトークコーナーでは、平成28年度JOCスポーツ賞の各賞を受賞した、スケート・スピードスケートの小平奈緒選手(優秀賞)、柔道の大野将平選手(優秀賞)、フェンシングの敷根崇裕選手(新人賞)、陸上競技の飯塚翔太選手(リオデジャネイロオリンピック陸上競技男子4×100mリレーチームとして特別功労賞)、スキー・ノルディック複合の荻原健司さん、荻原次晴さん(特別貢献賞)、そして平昌冬季オリンピック出場を決めた女子アイスホッケー日本代表の大澤ちほ選手、鈴木世奈選手、米山知奈選手がステージに登場。それぞれオリンピックコンサートの感想や現在の練習状況、また平昌冬季オリンピック、東京2020大会への抱負を語り、最後に荻原健司さんが「私は普段、6人のスキー選手を育てていまして、前回のソチオリンピックで銀メダルや銅メダルを獲った選手もいます。なんとしても平昌オリンピックでは金メダルを獲得できるようにチーム一丸となって頑張っていきたと思っていますし、その勢いを2020年の東京オリンピック・パラリンピックにつなげていきたいと思います。ぜひ皆さん、これからも末永くスポーツ、オリンピックを応援してください」と挨拶しました。
オリンピアン、アスリートたちから力強いメッセージを受けて演奏されたこの日の7曲目は中島みゆきさんの名曲『糸』のオーケストラバージョン、続く8曲目はドヴォルザークによる序曲『謝肉祭』。ここでは平昌冬季オリンピックでの活躍が期待される日本人アスリートたちの長く厳しい道のり、そして、世界一流の技術と演技をふんだんに盛り込んだ冬季オリンピックの名シーンが、それぞれの楽曲に乗せて紹介されました。
■平昌、東京へとつながるフィナーレへ
オリンピックコンサートもいよいよ終盤。「新たに時代を切り開いてきたオリンピック」をテーマに、9曲目に演奏されたのはドヴォルザーク作曲の交響曲第9番『新世界より』第4楽章。なじみのあるメロディーとともに、戦後の高度経済成長期の一時代を担った1964年東京オリンピックに始まり、日の丸飛行隊に沸いた日本初の冬季オリンピックである1972年の札幌大会、そして、今に語り継がれるスキー・ジャンプ団体をはじめスピードスケート、スキー・フリースタイルなど5つの金メダルを獲得した1998年長野オリンピックから、数々の名場面が当時の社会情勢の映像とともに紹介されました。さらに、日本で開催されたオリンピックだけではなく、1984年ロサンゼルス以降の大会から、日本中に勇気と感動、希望を与えたシーンとして、ロサンゼルス大会の具志堅幸司選手(体操・体操競技)、ソウル大会の鈴木大地選手(水泳・競泳)、バルセロナ大会の岩崎恭子選手(水泳・競泳)、“マイアミの奇跡”と呼ばれた1996年アトランタ大会のサッカー日本代表など、日本人選手が歴史を作った瞬間が次々に映し出され、最後に東京2020大会へつながっていく映像へと展開しました。
最後は中川さん、新妻さん、そしてナビゲーターを務めた藤本さんが、NHK東京児童合唱団の皆さんと一緒にスピロ・サマラ作曲の『オリンピック讃歌』を合唱。クライマックスでは客席前方から金のテープが勢いよく飛び出し、華やかにフィナーレを迎えました。
鳴り止まない拍手の中、アンコールでは中川さんと新妻さん、NHK東京児童合唱団の皆さんが再びステージに登場し、中島みゆきさんの『糸』を合唱。美しい歌声のハーモニーを響かせながら、2時間半に渡る感動のコンサートの幕が下りました。
終演後、大野選手、小平選手、大澤選手に、改めてコンサートの感想を聞きました。
■大野将平選手(柔道)
「自分の映像も使っていただきましたし、もうリオから約1年も経つんだなぁと、映像を見て懐かしい気持ちになりました。また、過去のアスリートの名場面を見て、勝ち負けに関わらず感動を思い出す映像と音楽の融合だったので、心が洗われた気分ですね。東京2020大会は自国開催なので大きなモチベーションですし、また若い選手も出てくる中で、自分は上の立場になっていくと思いますので、日本を引っ張っていけるようなアスリートになりたいと、気持ちが新たになりました」
■小平奈緒選手(スケート・スピードスケート)
「オリンピックコンサートの参加は初めてでしたが、映像から来る感動と、演奏の音がすごく自分の中に入ってきて、モチベーションのスイッチが入りました。自分の映像を見るのは恥ずかしいですが、他のアスリートの方々がすごく輝いている姿を生の演奏とともに聴いて、本当に心を動かされました」
■大澤ちほ選手(アイスホッケー)
「普段、このようなオーケストラの素敵なコンサートを聴く機会がないのですごく刺激になりましたし、夏冬の結果を残した選手の映像を見てすごく刺激になりました。ここからまたオリンピックに向けて頑張っていきたいなという気持ちが高まりました。映像もそうなのですが、オーケストラが一つになっていました。私たち女子アイスホッケーも団体競技なので一つになるということがすごく大切です。その部分でも刺激をいただいたので、より一つになれるようにみんなで平昌に向けて頑張っていきたいと思います」
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