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2017.06.08 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
プレゼンを行った6選手。左から坂本選手、山本選手、黒木選手、有薗選手、橋本選手、大塚選手(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は6月1日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに106社/団体155名(2017年6月1日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は東京都との共催で行われ、59社76名が参加しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
福井烈JOC常務理事(左)、東京都オリンピック・パラリンピック準備局の河野和久事業推進課課長(写真:アフロスポーツ)

 最初に、主催者代表の挨拶として福井烈JOC常務理事が登壇。今回でアスナビ説明会が通算51回目の開催となったことに感謝の意を述べると、「世界で戦うトップアスリートは日本が誇るべき宝であると考えています。その宝を育てて、支えていただくためにも、ぜひとも皆さま方のご協力をいただければと思います。本日は3年後の東京2020大会で主役になる可能性を秘めた選手が6人登壇します。この場を契機として、未来のメダリストたちを私どもといっしょにサポートしていただければと思います」と、支援を訴えました。

 続けて、共催者を代表して東京都オリンピック・パラリンピック準備局の河野和久事業推進課課長が挨拶に立ち、東京2020大会の成功とアスリートの競技力向上に向けて東京都が現在行っている取り組みを紹介。その上で「これらの取り組みを効果的に行っていくためには、何よりもアスリートの皆さま方の経済基盤、生活基盤がしっかりしていかなければいけないと考えています。今日はアスリートの皆さまの生の声を聞きながら、ぜひともこのアスリート支援にお力を貸していただけますよう、お願いを申し上げます」と参加企業に呼びかけました。

 次に八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュールなどを報告しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
サコス株式会社の木本隆総務部次長(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
メッセージを送った池田信太郎さん(写真:アフロスポーツ)

「アスナビ」採用企業の事例紹介では、2016年4月にレスリングの阿部宏隆選手を採用したサコス株式会社の木本隆総務部次長が、同社におけるトップアスリート採用の背景ときっかけ、入社後の仕事内容と練習スケジュールなどを説明。アスリート採用の意義として一番大きかったことに「社員に一体感が生まれたこと」を挙げました。
 阿部選手を採用してから1年が経過し、その間、阿部選手が社会人としてしっかりと仕事で同社に貢献し、その一方で全日本社会人選手権のフリースタイル65kg級で優勝するなど、選手にとっても企業にとってもプラスの効果が出ているとのことです。木本次長はこの1年を振り返り、「アスナビは、将来的に競技を引退した後も社員として活躍してもらえる人の採用につながる良い機会、そしてそういう人に出会える良い機会なのではと思います。一人の人間として優秀な人たちですから、ぜひ採用を検討いただけましたらと思います」と述べました。

 続いて、オリンピアンからの応援メッセージでは、バドミントンで2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場した池田信太郎さんが登壇しました。池田さんは筑波大学卒業後に日本ユニシスに入社し、同社が整えた環境のもと、メキメキと頭角を現しました。「今振り返ると、環境がアスリートの競技力を伸ばしてくれるということを非常に痛感しています。それと同時に、その競技力を伸ばしていける背景にはしっかりとした生活基盤がないと、こうしたところにはたどり着けません」と池田さん。当時の経験を振り返りながら、「今日は6人のアスリートがプレゼンしますが、色んな選手が活躍できるような環境を企業様が用意していただくことで、選手本人も気づかないような能力が飛躍的に伸びる可能性が十分あると感じています。なぜなら僕がそうだったからです」と企業関係者に訴えると、この日プレゼンを行うアスリートに向けても「積極的に企業の方と話して、少しでもチャンスを広げていただければと思います」とエールを送りました。

 最後に、就職希望アスリート6名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介などで、自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
橋本将都選手(左)、有薗早優選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
黒木夢選手(上)、山本智貴選手(写真:アフロスポーツ)

■橋本将都選手(カヌー/スプリント)
「私は高校入学時にカヌーに出会いました。日本代表として世界大学選手権で私はいきなり5位になることができ、大きな自信になりました。カヌースプリント競技は、残念ながらリオオリンピックで日本人は誰も出場することができませんでした。しかしながら、3年後にここ東京で行われるオリンピックにおいて、私の目標は出場するだけでなくメダルを獲得することです。カヌーを始めて7年目の私は発展途上で、まだまだ上位を目指すことができると思っています。カヌースプリント初のメダル獲得に向けて精一杯努力し、そしていつか、カヌースラローム競技で銅メダルを獲得した羽根田卓也選手のように日本中から注目される存在になりたいと思っています」

■有薗早優選手(トライアスロン)
「大学に入学すると同時に始めた競技であるためキャリアは3年と、まだ浅いです。しかし、小学生のころに競泳を経験し、中学から高校卒業までの6年間を陸上競技に励んできました。そして大学に入り、バイクという新たな競技を加えることで、自分の力を発揮できる競技に出会えたと思えたことが、このトライアスロンを始める大きなきっかけとなりました。今、東京オリンピック出場という大きな舞台を目指して日々トレーニングに励んでおります。今後、企業に所属し、社会人アスリートとして私の頑張る姿を見ていただくことで周りに良い影響を感じていただける、そんな存在になりたいと考えております。応援してくださる方々への感謝を胸に、競技、仕事に励みたいと思いますので、ぜひご検討のほど、よろしくお願いいたします」

■黒木夢選手(フェンシング)
「高校からフェンシングを始め、インターハイと国体で2位という結果を出すことができました。フェンシングは奥が深く、シビアな世界です。私がその中で一番大事にしていることは、前向きな考え方です。もし相手にリードされているような状況でも、落ち着いて弱気にならず、前向きに考えてプレーをすることができます。また、応援してくれる人のことを考えると、最後の1点まで粘り強く戦うことができます。今、私のグローブには『親孝行』という文字が入っています。それは、私の試合で親がとても喜んでくれることが今の私のモチベーションになっているからです。もし採用していただきましたら、このグローブに企業のロゴマークを入れて、社員の皆さまに応援していただけるような選手になれるように一生懸命頑張ります。これからも練習を精一杯頑張っていきますので、私にフェンシングを全力でできる環境を与えてください」

■山本智貴選手(陸上競技/棒高跳)
「棒高跳を中学のころから始め、12年になろうとしています。ここまでケガや挫折を経験しながら、現在の自己記録である5m42cmにたどり着きました。オリンピックの参加標準記録である5m70cmまであと30cmに迫っています。私は大学の4年間で毎年10cmずつ記録を更新してきたことから、30cmは手が届く範囲であります。東京オリンピックに向けて、棒高跳はターゲット種目となっており、活躍が期待されていることからも注目されやすい種目になってくることは間違いないと思います。もし採用していただけましたら、これまでの経験を生かして会社に貢献できると考えております。東京オリンピックに向けて、新たな環境でトレーニングを行い、ケガが続いた昨年の悔しさをバネに目標達成に向けて努力し、東京オリンピックに出場します。棒高跳に専念できる環境とご支援のほど、よろしくお願いいたします」

JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
坂本絵梨選手(左)、大塚忠胤選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:東京都と説明会を共同開催
説明会終了、選手たちは企業関係者と交流を深めた(写真:アフロスポーツ)

■坂本絵梨選手(陸上競技/三段跳)
「私は陸上競技を中学生から始め、法政大学入学後に今現在専門としている三段跳を本格的に始めました。今後は企業に所属し、陸上競技で培ってきた粘り強く努力していくという強みを、仕事でも全力で生かしていきたいと思います。2020年には東京オリンピックが行われます。これまで三段跳の日本人の女子選手でオリンピックに出場した選手はいません。しかし、私はまだまだ記録を伸ばしていく自信があります。誰も成し遂げたことがない挑戦になりますが、一生に一度の地元開催のオリンピックに、日本代表のユニフォームを着てピットに立ちたいと思います。最大の目標であるオリンピック出場を果たすためには、安心して競技に取り組めるような環境が必要になります。引退後も社員として貢献していく意志を持っていますので、ぜひ私を採用してください」

■大塚忠胤選手(パラアーチェリー)
「私は現在、パラアーチェリーの男子コンパウンドという種目の日本代表として活動しています。アーチェリーに出会ったきっかけは、今から14年前になりますが、その当時に務めていた会社の同僚にフィールドアーチェリーという競技を教えていただきました。そのときに通っていたフィールドアーチェリー場のオーナーから『アメリカには口で弓を打つ人がいる』と聞き、僕にもこういうことができるんだと興味を持ちました。昨年のリオパラリンピックは最終予選まで行きましたが、残念ながらリオ大会に出場することができませんでした。しかし、私自身としては東京で金メダルを獲る自信があります。ただ、今現在、競技をする環境、そして遠征費など経済の安定が自分には足りないので、皆さま方に応援していただけたらと思い、この場に立ちました。ぜひとも東京で金メダルを獲るために応援よろしくお願いいたします」

 説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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