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2017.05.23 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
プレゼンを行った5選手。左から板倉選手、竹澤選手、有薗選手、竹内選手、鋤崎選手(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は5月10日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに104社/団体152名(2017年5月10日時点)の採用が決まりました。
 50回目の節目となる今回の説明会は、一般社団法人新経済連盟の会員を対象に行われ、14社17名が参加しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
星野一朗JOC理事(左)、新経済連盟の植野伸一幹事(写真:アフロスポーツ)

 最初に主催者を代表し、JOCの星野一朗理事が、今回が50回目の説明会開催となったことを報告し、感謝を伝えました。そして、アスリートが世界で活躍するためには、諸設備の整備充実が大きく影響すると同時に、「自分のためでなく誰かのために戦うことができるのだという、内的なモチベーションが大事になっている」と強調。「トップアスリートは周りの皆様に応援されることで、今まで勝てなかった相手に勝つことができたり、出すことのできなかった記録を更新したりすることができるようになります。今日登壇する5名にそのチャンスを与えていただければと思います」と、支援を訴えました。

 続いて新経済連盟の植野伸一幹事が、「このアスナビは安心して競技に取り組める環境を望むトップアスリートの方、彼らを採用し応援することで社内に新たな活力が生まれることを期待する企業とWin-Winの関係を築く有意義な取り組みと考えています」とあいさつ。そして、参加者に「積極的に話を聞いて、有意義な時間を過ごしていただきたいと思います」と呼びかけました。

 次に八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュールなどの情報を共有しました。

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クロス・ヘッド株式会社の細谷健司管理本部人事総務部部長(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
松田丈志さんさんが応援メッセージ(写真:アフロスポーツ)

 続けて行われた採用事例紹介では、ビーチバレーの鈴木千代選手を採用したクロス・ヘッド株式会社管理本部人事総務部の細谷健司部長が採用の経緯と勤務状況、会社にもたらす影響について説明を行いました。

 その中で、鈴木選手がアスナビ通算100人目の採用となったことを説明。その時点では、採用決定は社内告知前だったものの、多くのメディアに取り上げられたことで「社員が自ら(報道を)見つけて人事部に教えてくれ、私どもも反響の大きさに大変びっくりしました」と語りました。また、採用をきっかけに、ビーチバレー応援部「SPORTS ROOTERS」が立ち上がったことを紹介。鈴木選手を試合会場で応援したり、活動報告会を設けるなどして社員との交流の場を作り、労働意欲の向上につなげる取り組みを共有しました。そして、企業関係者に「今日ここにいるアスリートの皆さんが、自分の目標に向けて自由な活動ができるように、バックアップしていただけたらと思います。私たちも、鈴木選手の挑戦に託して、すごくポジティブな形でバックアップできていると思います。ぜひ本日お集まりの企業の皆さんも、参考にしていただけたらと思います」と一層の支援に期待を寄せました。

 次に、オリンピアンからの応援メッセージとして、2004年アテネから4大会連続オリンピックに出場し、4つのメダルを獲得した競泳の松田丈志さんが登壇しました。松田さんは、2008年の北京オリンピック男子200メートルバタフライで銅メダルを獲得。その後自らスポンサーを探していましたが、当時の世界的な経済不況もあってなかなか見つからず、「練習をしていても非常につらい、練習の疲労以上に心の方がつらいという経験をしました」と振り返りました。しかし、ロンドンオリンピックへの挑戦を前に就職先が決まり「所属企業が見つかってすごくうれしかったですし、『この企業のために目いっぱい練習を頑張って結果を出そう、そして応援してくださる皆さんに喜んでもらいたい』と思って競技をし、企業の皆さんにも非常に喜んでもらいました」と語り、会社の応援がモチベーションになったことを明かしました。松田さんは最後に、「企業の皆さんにも試合会場に足を運んでいただき、スポーツの感動の瞬間を味わえるような、(企業にとって)プラスになるような関係性がここでできることを願っています」と呼びかけました。

 最後に、就職希望アスリート5名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介や競技のデモンストレーションなどで、自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
竹内一選手(左)、鋤崎隆也選手(写真:アフロスポーツ)

■竹内一選手(テコンドー)
「私がテコンドーを始めたのは小学5年の時で、当時流行っていた韓国ドラマでテコンドーの格闘シーンに感動を受けた母に、『やってみないか』と言われたのがきっかけです。テコンドーは近年、スポーツ化が進んでおり、高身長で脚の長い選手が効率よくポイントを取ることができ、有利と言われています。そのため、小柄なほうである私はどうしても不利になります。しかし、小柄だからこそできる技や作戦を駆使しました。この結果、大学に入学してからは、階級の中で自身より身長の高い選手を破り、全日本選手権では準優勝をすることができました。2020年に開催される東京オリンピックでは金メダルを獲得し、周りで支援してくださるすべての方々に、感謝の気持ちを結果と行動で示します。そして、不利を有利に変えるという私の強みを、競技、仕事の両面において発揮し、どのような逆境も好機へと変化させ、活躍して見せます。どうか、東京オリンピックに向けて、テコンドーに専念できる環境とご支援のほど、よろしくお願いいたします」

■鋤崎隆也選手(トライアスロン)
「私がトライアスロンを始めたのは高校2年生の時です。しかし、その年の3月11日に福島県で東日本大震災を経験しました。その際は、放射線の影響で全く練習できず、とても不安な毎日を過ごしていました。しかし、世界で活躍するアスリートが被災地に行き、被災地の方々を励まし、さまざまな活動をしているのを見て、私は頑張れると思えるようになりました。震災を経験した身として、そのようなアスリートになっていきたいと強く思っています。私の競技成績は、2015年にはASTCアジアU23トライアスロン選手権7位、日本学生トライアスロン選手権2位、そして2016年には日本スプリント選手権2位、世界大学選手権の出場も果たしました。私はまだ、日本のトップには位置していませんが、東京オリンピック時には26歳という年齢を迎え、ピークの歳だと考えています。私は企業様にサポートをいただき、努力を重ねていくことで、東京オリンピックの出場を手にしたいと考えています」

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板倉玄京選手(左)、有薗早優選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:新経済連盟への説明会を実施
竹澤隼選手(写真:アフロスポーツ)

■板倉玄京選手(自転車/トラック)
「私は地元・千葉の高校入学とともに、新しいことをしたいという理由で自転車競技を始めました。私の強みは、相手のタイプやタイム、戦術、弱点を見て、その情報を仲間と共有して次のレースを組み立てる分析力があることです。大学では、自転車の強豪である明治大学に入り、自分の特長であるスタートダッシュを生かすべく、海外選手のビデオを見て分析し、実践しました。そして、大学2年生の時に、監督の推薦でナショナルチームの合宿にテスト生として参加し、トライアウトを受けてナショナルチームに入りました。チームスプリントは2004年でのアテネオリンピック銀メダル獲得以降、メダル獲得から遠ざかっています。しかし、2020年東京オリンピックでのメダル獲得のために、オリンピックでメダル獲得に導いた外国人コーチを雇うなどして強化を図っています。そこで私も、チームの一員としてメダル獲得に貢献したいと考えています。応援していただけます企業がございましたら、競技だけでなく、仕事でも一生懸命に働き、企業に貢献していきたいです」


■有薗早優選手(トライアスロン)
「私は、スイム・バイク・ランの3種目を連続して行うトライアスロンをしています。この競技を始めて3年。私は3種目の総合力を競う中、レース展開が大きく結果に左右するということを知りました。逆に、諦めない心次第でいろいろな展開を生み出せるというのも、この競技の魅力であると知りました。今後、会社に所属し社員アスリートとして私の頑張る姿を見ていただくことで、良い影響を感じていただける、そんなアスリートになりたいと考えています。そして、トライアスロンという魅力あるスポーツをより多くの方々に知っていただくとともに、自分自身の人間力を高め、より多くの方に応援していただける選手となり、それによって会社の一体感やチームワークを生み出すきっかけになればいいと思います。応援してくださる方々への感謝を胸に、競技、仕事に励みたいと思いますので、ぜひご検討の程よろしくお願いします」

■竹澤隼選手(ライフル射撃)
「私は、ライフル射撃という国内ではとても珍しい競技に取り組んでいます。他のスポーツとは違い、動かないことが要求されるため、メンタルのコントロールがとても重要になります。そこで、不調だった際の対策や、逆に調子が良すぎて気分が高揚してしまった際の対処方法を考えておくなど、常に臨機応変な対応ができるようにしています。このことが2014年の全日本学生ライフル選手権大会での優勝や2015年の国民体育大会での上位入賞など、ほぼ毎年安定した成績を残せるようになったことの要因だと思います。今年、就職活動を迎えるにあたり、私はアスナビにエントリーし、東京オリンピックに向けて競技と業務の両立を目指すことにしました。競技で培った、自分のメンタルをコントロールする力、集中力、そして、目標に向かって努力し、それを達成することができるアスリートとしての力を会社で生かしたいと思っています。そして、私が夢に向かって努力する過程で、会社の皆さんに活気を与えられたらと思います」

 説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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