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2017.05.08 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
プレゼンを行った7選手。上段左から松橋選手、松井選手、松下選手、船橋選手、下段左から福島選手、官野選手、古俣選手(写真:アフロスポーツ)

 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は4月26日、経団連会館(東京都千代田区)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに104社/団体151名(2017年4月27日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は、日本経済団体連合会(経団連)の会員企業/団体を対象に行われ、58社80名が参加しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
平岡英介JOC専務理事(写真:アフロスポーツ)

 最初に主催者を代表して、平岡英介JOC専務理事が挨拶に立ち、トップアスリートでも世界で戦うためには経済的負担が大きくのしかかっている実態を言及。そのうえで、この日プレゼンテーションを行う選手7名への支援を呼びかけるとともに、「決して彼らは競技成績が良いだけでJOCが推薦しているわけではありません。スポーツ選手は厳しい練習に耐え、色々な課題への対応を考え、それを分析し、目標や夢に向かって努力する。これは企業の皆さま方が社員の皆さまに教育することと全く同じことをアスリートたちも経験しています」と、アスリートが持つ“人間力”と、社会人としても優秀な人材になり得る可能性を強調しました。

 次に、経団連ならびにオリンピック・パラリンピック等経済界協議会の活動が紹介され、各社トップ・マネジメント層がスポーツの現場に自ら足を運び、アスリートやスタッフと交流する様子や、今後のスポーツ活動予定などを報告しました。

 続いて八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュールなどの情報を共有しました。

 採用企業の事例紹介では、三菱電機株式会社の片山敬介人事部採用グループマネージャーが登壇。同社では2014年度よりアスナビを活用してトップアスリートを採用し、現在は、水泳・シンクロナイズドスイミングの丸茂圭衣選手、スケート・ショートトラックの小黒義明選手、フェンシングの宇山賢選手、体操・トランポリンの土井畑知里選手、そしてパラ・アーチェリーの上山友裕選手が所属しています。
 片山マネージャーは同社におけるトップアスリート採用の意義や、運用・管理体制、同社の「トップアスリート制度」、選手サポート・応援体制などを紹介。また、同社の技術力を駆使して小黒選手が履くスケート靴のブレード加工をサポートするプロジェクトが進んでいること、同じくアスナビを通じて採用したレスリングの大坂昂選手が現役を引退し、この4月から同社の社員として再スタートしたことなども報告しました。
 その中で、特に昨年のリオデジャネイロオリンピックでは丸茂選手が銅メダルを獲得、続くパラリンピックでは上山選手が7位入賞を果たし、「自分が入社以来、経験がないくらいの盛り上がり」だったことから、「アスリートの活躍が会社にもたらす影響は大きい」と振り返った片山マネージャー。まとめとして、「アスリートを採用して3年。デメリットはなく、メリットがたくさんありましたし、オリンピックの活躍で選手がムーブメントを起こしてくれました」と述べると、「今後もこの良い雰囲気を維持しながら、ますますアスリートの採用を増やして、環境を整えてサポートしていきたい」と、今後の同社におけるアスリート採用の展望を語りました。

 次に、就職希望アスリート7名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介や競技のデモンストレーションなどで、自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
松井選手(上)、船橋選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
松下選手(上)、古俣選手(写真:アフロスポーツ)

■松井隆弥選手(テコンドー)
「私は4歳からテコンドーを始めました。小さい時は試合で全然勝つことができませんでしたが、決して諦めることなく努力を重ねた結果、大学3年生時の2016年に全日本選手権で優勝することができました。私の強みは、目標に向かい諦めることなく努力を続けることです。私はテコンドーという競技を通じて、競技面以外の多くのことを経験し、学び、成長してきました。採用していただけましたら、私が今まで経験したこと、学んできたことを生かし、何事にも意識を高く持ち、全力で取り組んでいきます。そして、2020年には東京オリンピックがあります。オリンピックで金メダルを獲ることが私の小さいころからの夢です。今、その夢をかなえるチャンスが手の届くところまで来ました。どうか私を採用してください。テコンドーに専念できる環境とご支援のほどをよろしくお願いいたします」

■船橋真道選手(空手道・組手)
「私の父親が空手道場で指導者をしていることもあり、私は3歳から空手道を始めました。昨年、空手道が2020年東京オリンピックの追加種目に決定し、私の夢は大きくなりました。東京オリンピックに出場しメダルを獲得すること、それこそが応援していただいている方への最大の恩返しだと考えております。2020年東京オリンピックの新種目、空手道で金メダルを獲るということは、空手道の歴史、そしてオリンピックの歴史に名を刻むということです。しかしそれは、私の一人の力では不可能です。環境を提供してくださる方、応援し支えてくださる方、たくさんの方たちの力があってこそ私はこの夢に挑戦できると思っています。そして、人として成長し、見ている方を勇気付けられるような人間になっていき、オリンピックという夢へ挑戦していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします」

■松下巽選手(自転車/BMX)
「私はBMXを5歳で始めて、今はオリンピックでのメダル獲得を目標に活動しています。私はオリンピックでのメダル獲得以外にも、BMXの魅力を日本に伝えたいという目標もあります。昨年のリオオリンピックで羽根田(卓也)選手がメダルを獲得したことで、カヌー競技の国内での認知度が上がったように、私も東京オリンピックで活躍することで、BMXの魅力を皆さんに知ってもらいたいと考えています。私が選手として最終目標としているのが、3年後の東京オリンピックです。それまでの3年間はもちろん競技と仕事の両方を全力で取り組み、会社に貢献させていただきます。ぜひ、私を企業に所属するスポーツ選手として採用していただき、一緒に世界と戦っていただける企業さまがいらっしゃいますことを願っています」

■古俣潮里選手(フェンシング)
「エペ種目を専門としています。フェンシングとの出会いは小学2年生の冬、もともと国体の選手だった父の紹介で練習を見学させてもらい、ひと目見た瞬間、こんなに格好良いスポーツがあったのかと驚きました。私は今、2020年の東京オリンピック出場という夢に向けて、今できることを全て行い、どんな結果になろうとも必ず納得できる3年間にしたいと考えています。また、競技生活を終えた後は、フェンシングで培った継続力や、得た経験を生かし、採用していただいた先で貢献できる力を身につけていきたいと思います。着実に強くなっている日本選手団の中で私自身もまた結果を残し、フェンシングの更なる発展に貢献していきたいと思っています。この盛り上がりを会社の中で皆さんとも一緒に共有していきたいと思いますので、ぜひ私を御社の一員としていただけるよう、よろしくお願いいたします」

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
福島選手(上)、松橋選手(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
官野選手(右)(写真:アフロスポーツ)

■福島史帆実選手(フェンシング)
「私は昨年の12月に行われた全日本選手権で優勝することができました。私の目標は2020年の東京オリンピックで金メダルを獲ることです。私がフェンシングを始めたのは、福岡県が主催する福岡県タレント発掘事業がきっかけです。私はフェンシングを始めるのが高校1年生からと周りより少し遅かったため、できるだけ早く上達することを考えてやってきました。その結果、積極的にコミュニケーションを取り、周囲の意見を柔軟に取り入れ、改善点を見つけ、自分の技術に反映させることを習得したと思います。さらに様々な試合を経験したことにより、逆境でも冷静さを失わず、状況を好転させる力が身についたと思います。このことはスポーツ以外の場面でも生かせると思っております。オリンピックに出場するためには、これからも国際大会に出場し、世界ランキングを上げる必要があります。そのためには企業の皆さまのサポートが必要です。競技で活躍することで企業に貢献できるよう精一杯努めていきたいと思いますので、ぜひ私を採用してください。よろしくお願いいたします」

■松橋亜希選手(スキー・ジャンプ)
「私はノルディック複合競技の盛んな秋田県で、9歳から15年間ジャンプを続けてきました。2014年ソチオリンピックより女子ジャンプが正式種目になり、オリンピックという大きな目標ができました。誰よりも美しく、遠くへ飛び、多くの人を魅了したい。そのために、逆境も笑顔で乗り越えていきたいと思います。そんな私の背中をぜひ押していただきたいです。協力していただける企業の皆さまに私ができることは何かと、3つ考えてきました。1つ目は、微力ながら企業の宣伝をさせていただきたいです。2つ目は、私が目標に向かって努力する姿をお見せすることで士気を高めていただければと思います。3つ目は、ぜひジャンプ台に足を運んでいただき、ジャンプの魅力をお伝えしたいです。この3つを実践し、常に感謝の気持ちを忘れず活動していきたいと思います。最後に、活動の場をいただければ、私自身の経験や競技で培った精神力、何事にも挑戦したいと思うチャレンジ精神を生かし、社会や企業に貢献していきたいと思います」

■官野一彦選手(ウィルチェアーラグビー)
「僕はプロ野球選手になることが目標だったのですが、それになれないことが分かり、千葉県の実家が海に近いこともあったのでサーフィンを新しい目標に始めました。22歳のとき、波に巻かれて首の骨を折り、そこで車椅子生活になりました。24歳のときにウィルチェアーラグビーに出会い、翌年の2007年に日本代表に呼ばれ、そこから現在まで日本代表としてプレーを続けています。リオのパラリンピックで何とかメダルを獲ることができて非常に幸せな気持ちでしたが、表彰式で振り返ってみると、まだ3番。東京大会で金メダルを獲りたいと心の底から思いました。そして、大きく環境を変えないと金メダルは獲れないと思っています。金メダルを獲るためには、個人のスキルを上げるしかないと思っており、今年、来年はアメリカの一番強いリーグで自分を磨きたいと思っています。それを応援してくださる企業さまがありましたら、ぜひ一緒に東京での金メダルを目指していただければと思います」

JOCの就職支援「アスナビ」:経団連への説明会を実施
有森さんがオリンピアンへ応援メッセージを送った(写真:アフロスポーツ)

 最後に、オリンピアンからの応援メッセージとして、女子マラソンの1992年バルセロナオリンピック銀メダリスト、1996年アトランタオリンピック銅メダリストの有森裕子さんが登壇。有森さんは「どうしても走りたい」と、当時リクルートランニングクラブの監督だった小出義雄氏に入社を直談判したエピソードなどを紹介し、「私にとってリクルートが支えてくれたことは人生で最高のチャンスでした」と振り返りました。そして、この日プレゼンテーションを行った7名のアスリートに向け、「ぜひ今日のみならず、これからも競技を通じて、どんどん人間的にもアピールをしていただきたいと思います」とエールを送ると、続けて企業関係者に対し「スポーツというものは、する方にも、それを応援する方にも、物すごく変化をもたらす力があると思います。ぜひアスリートを、企業の中の素晴らしいパートナーとして、素晴らしい人材として迎えていただければと思います」と、アスリートへの支援を訴えました。

 説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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