日本オリンピック委員会(JOC)は19日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「平成28年度JOCエリートアカデミー修了式」を開催しました。JOCエリートアカデミー(以下、エリートアカデミー)は、オリンピックをはじめとする国際競技大会で活躍できる選手の育成を目標に開校し、今年度で9年目。各競技団体から推薦された有望なジュニア選手を集め、味の素トレセンを拠点にして集中的な指導を行っており、平成28年度は5競技37名の選手が所属しています。
今年度は4競技13名、4期生と7期生が修了を迎えました。式には修了生をはじめ、その家族や関係者、JOC、スポーツ庁、競技団体、学校関係者、エリートアカデミー在校生らが参加。世界での活躍を目指して4月から次のステップへ向かう修了生たちは、温かな拍手で迎えられながら会場に入場しました。
はじめに主催者を代表して平岡英介JOC専務理事があいさつを行い、修了生を祝福。「次のステージは言うまでもなく、3年後の東京2020大会となります。それを目指してJOCエリートアカデミーで学んだこと、トレーニングしたこと、身につけたことをしっかり続けていっていただきたいと思います」と述べ、「JOCの強化のモットーはご存知の通り『人間力なくして競技力の向上なし』です。皆さんも文武両道、学校生活とトレーニングの生活を過ごし、立派な人間として成長しつつありますが、これからも一段と成長していただきたいと願っております」とエールを送りました。
平野一成エリートアカデミーディレクターによる修了生紹介の後、スポーツ庁の先﨑卓歩競技スポーツ課長が来賓代表あいさつを行いました。先﨑課長は「修了生の皆さんはこれから新たな第一歩を踏み出されることになります。どんなときもここでの経験を糧にして、温かく見守ってくださった保護者の方々をはじめ、JOCや各競技団体、学校など多くの方々に支えられてきたということを忘れず、世界の舞台に向けて一層の努力と鍛錬、トレーニングを積んで、活躍されることをご期待申し上げます」と呼びかけ、スポーツ庁として更なる支援を誓いました。
平岡専務理事よる修了証授与に続き、4月より平成29年度のキャプテンを務める伊藤洸輝くん(水泳・飛込)が在校生を代表して登壇。「先輩方から学んだことを生かし、競技面、生活面でJOCエリートアカデミーを引っ張っていけるように全力を尽くします。先輩方もアカデミーでの経験を生かし、またその経験に誇りを持ち、これから先それぞれの道に行っても精一杯頑張って下さい」と送別の言葉を述べました。
最後に修了生が1人ずつ決意表明を行い、アカデミーで過ごした日々を振り返りながら、お世話になった方への感謝と新たな道へと進む意気込みを語りました。
■梅林太朗(うめばやし・たろう)
競技:レスリング
出身地:千葉県
学校:帝京高
進路:早稲田大学スポーツ科学部
主な競技成績:2015年世界カデット選手権大会 69kg級3位など
※修了式不参加
■阿部敏弥(あべ・としや)
競技:レスリング
出身地:茨城県
学校:帝京高
進路:国士舘大学体育学部
主な競技成績:2014〜16年JOCジュニアオリンピックカップF46kg級、50kg級、54kg級優勝など
「JOCエリートアカデミーに入ってからさまざまなことを学ぶことができました。試合に勝てなかった時やけがで手術をした時も、乗り越えることができたのはたくさんの方々の支えがあったからです。最初は一人では何もできませんでしたが、自分で考え行動できるようになりました。これからはこの6年間で培ったことを肝に銘じ、目標に向かって日々精進していきたいと思います」
■乙黒拓斗(おとぐろ・たくと)
競技:レスリング
出身地:山梨県
学校:帝京高
進路:山梨学院大学経済学部
主な競技成績:2015年世界カデット選手権大会 54kg級優勝など
「6年間は短く、とても成長できた6年間でした。目標達成のためにサポートしてくれた監督、コーチやトレーナーさん、6年間近くで見守ってくれたJOCスタッフ、RAの皆さま、食事や身の回りのサポートをしていただいた皆さま、一緒に悲しみ笑い合ったアカデミーの仲間、そして誰よりも自分のことを理解して大切に思ってくれた江藤(正基)コーチ、親、いろんな方々に支えていただいたことに感謝しています。今後はJOCエリートアカデミーで学んだことを生かし、東京オリンピックで優勝します」
■龍崎東寅(りゅうざき・とんいん)
競技:卓球
出身地:新潟県
学校:帝京高
進路:明治大学商学部
主な競技成績:2016年世界ジュニア選手権大会 ジュニアダブルス2位など
「6年間あっという間でしたが、充実した生活を送ることができました。競技面では思ったような成績が出ず辛いことのほうが多かったですが、監督やコーチの方々が自分を指導し支えて下さったお陰で、高校3年生のときに世界ジュニア選手権でダブルス準優勝や全日本選手権でベスト8に入るなど、いい成績を収めることができました。数え切れないほどのたくさんの方々にお世話になり、それがあったからこそ自分はここまで成長することができたと思います。このアカデミー生活で学んだことを生かし、世界で活躍し目標に向かって努力を惜しまない、人間力のある選手になっていきたいです」
■浜本由惟(はまもと・ゆい)
競技:卓球
出身地:大阪府
学校:大原学園高
進路:日本生命保険相互会社
主な競技成績:2016年ITTFワールドツアーグランドファイナル ダブルス優勝など
※修了式不参加
■緒方遼太郎(おがた・りょうたろう)
競技:卓球
出身地:愛知県
学校:帝京高
進路:早稲田大学スポーツ科学部
主な競技成績:2014年ITTFジュニアサーキットチャイニーズタイペイ大会 ジュニアシングルス2位など
「まだまだ未熟だった私がここまで成長できたのは、数え切れないほどの方々のサポートがあったからだと思います。特に、いつも反抗ばかりしていた私を一番近くで指導してくださった渡辺隆司コーチ、遠くからいつも応援してくれた両親には感謝しています。そして、競技は違いますが苦楽をともにしてきた仲間たちにも感謝しています。将来エリートアカデミーで学んだこと、これから学ぶことなどを生かし、どんなことでも第一線で活躍できる人間になり、今までサポートしていただいた方々に最高の恩返しができるように精進してまいります」
■加藤結有子(かとう・ゆうこ)
競技:卓球
出身地:愛知県
学校:帝京高校
進路:早稲田大学スポーツ科学部
主な競技成績:2017年ITTFジュニアサーキットファイナル ジュニアシングルス準優勝など
「最初は卓球の仲間と馴染むことができず、思うような成績が出ませんでした。毎日辛い日々が続き、苦しい時期もありましたが、他競技の仲間と練習後に寮に戻って話すことが私にとって唯一の心が落ち着く場で、そのお陰で私は毎日練習に行く勇気を持つことができました。だんだん卓球の仲間とも打ち解け、コーチの方々が熱心な指導をして下さる中、自分の技術が上がっていることを実感させてくれたのが、高校2年生で出場したITTFフランスジュニアサーキットでの優勝でした。多くの方々に心からの祝福をいただき、深い達成感を味わいました。ここで暮らした6年間は私にとって忘れられない大切な時間です。進学後はまた新たな自分の目標に向かって精進します」
■向江彩伽(むかえ・あやか)
競技:フェンシング
出身地:福岡県
学校:大原学園高
進路:中央大学理工学部
主な競技成績:2013年アジアユースゲームズ サーブル個人優勝など
「高校に上がってからの2年間はまったく結果を残すことができず、自分で選んだ進路に後悔することもありました。でも、そんな中でも自分の可能性を信じ続けてくれた人がいました。それは家族です。やさしい事だけでなく厳しい事もたくさん言ってくれて、頑張っているのは私だけではないということを実感しました。私はいろいろな人に支えられここまで来ることができました。この6年間ではアスリートとしての土台もしっかりと作れたと思います。春からは新しい環境で今よりもさらに成長できるように全力を尽くします」
■髙嶋理紗(たかしま・りさ)
競技:フェンシング
出身地:福岡県
学校:帝京高
進路:法政大学国際文化学部
主な競技成績:2016年アジアジュニアフェンシング選手権大会 サーブル個人優勝など
「私は高校1年生で出場したアジア大会の試合中に右ひざの前十字靭帯断裂、半月板損傷というけがをしました。復帰してからも、またけがをしてしまうのではないかという不安や怖さに怯えながら毎日フェンシングをしていたのを思い出します。入院した時にはたくさんの方がお見舞いに来てくださり、声をかけてくれて本当に幸せ者だなと感じました。私はこのけがを乗り越えたことで、これから先何があっても妥協しない自信があります。この6年間多くの方々に出会い、支えられてきました。この出会いを大切に、そして感謝の気持ちを忘れずに、これからも自分らしくやっていきたいと思います」
■永野雄大(ながの・ゆうだい)
競技:フェンシング
出身地:茨城県
学校:帝京高
進路:中央大学法学部
主な競技成績:2017年アジア選手権大会 ジュニア個人戦準優勝など
「最初は寮生活になかなか馴染めず、このまま3年間続けていけるか不安になるほど辛かったですが、同時に入ってよかったと思える部分もたくさんありました。エリートアカデミーでの練習は自分より強い相手と長い時間練習することができたので、自分がどこまでできるのかを試すことができました。自分の好きな競技が好きなだけできたので、楽しかったです。私はこの3年間さまざまな人に支えられてきました。大学生や社会人になってもこの3年間で学んだことを忘れずに頑張っていきたいです」
■葉ローランド秀峰(ようろーらんど・しゅうほう)
競技:フェンシング
出身地:福岡県
学校:北区立稲付中
進路:東福岡高校
主な競技成績:2016年ユーロサーキットカデフランス大会出場など
「JOCエリートアカデミーを通して世界を目指そうと、ほとんど経験のなかったフェンシングを始めました。何も分からない状態で生活、勉強、練習に慣れるために必死だった1年目、海外での合宿や試合に参加できるようになった2年目、試合で勝ちを味わうことが出来るようになった3年目でしたが、僕は陸上競技への転向という大きな決断をしました。フェンシングで期待に応えることができないのは大変心苦しく思いますが、ここまで成長できたのはここでの貴重な経験があったからです。今後はJOCエリートアカデミーでの経験を生かし、陸上競技で世界を目指します」
■江村美咲(えむら・みさき)
競技:フェンシング
出身地:東京都
学校:大原学園高
進路:中央大学法学部
主な競技成績:2015年世界カデフェンシング選手権大会 サーブル個人3位など
「最初の2年間はフェンシングと向き合うことができず、本当につらい時期が続きました。本気でフェンシングをやめたいとも思いましたが、それでも今ここに私がいられるのは、一緒に戦ってきた仲間やコーチ、両親がいてくれたからです。仲間や後輩たちと離れ別々のチームとして戦っていくのは少し寂しいですが、私たちは日本代表として世界と戦っていかなければいけません。これからもお互い支え合い、良きライバルとしてさらに上を目指していきたいです。お世話になった方々にとって一番の恩返しは結果を出すことだと思っています。最高の恩返しができるよう、1日も無駄にせず毎日頑張って練習していきたいと思います」
■金戸華(かねと・はな)
競技:水泳・飛込
出身地:埼玉県
学校:日出高
進路:日本大学スポーツ科学部
主な競技成績:2015年アジアエージ選手権 個人3競技・シンクロ1競技優勝など
「高校2年生の時、初めてオリンピックの出場権をかけた挑戦をしました。姉のように慕っていた先輩とともに大会に出場しましたが、最後の1本で私はバランスを崩し0点を出してしまいました。先輩の最後のオリンピックへのチャンスを私のミスで奪ってしまったことがとても情けなく、今まで自分がしてきたことは全部無駄だったと思った時期がありました。トップアスリートの集まる環境にいることが苦しくなった頃、初めて飛込から離れたいと思いましたが、このとき私の大きな支えになったのは家族の存在でした。いつでも一番に私を応援すると言ってくれたコーチである両親にはとても感謝しています。新たな環境に不安はありますが、JOCエリートアカデミーに入校して学んだ人間力で、心身ともに成長していきたいと思います」
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