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2016.02.25 その他活動

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
過去最多となる80名のオリンピアン・パラリンピアンが集まった(写真:アフロスポーツ)
過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
平岡英介JOC専務理事の開会あいさつ(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は2月6日、味の素ナショナルトレーニングセンターで「JOCオリンピアン研修会」を開催しました。

 この研修会はJOCアスリート専門部会が中心となって行っているもので、オリンピアン自身がオリンピズムやオリンピックの価値をあらためて学び、アスリート間のネットワーク構築を進めることにより、オリンピック・ムーブメント事業への積極的な参加を促すとともにアスリート自身の今後の活躍に役立てることを目的としています。7月の仙台、12月の大阪に続いて今年度3回目となった今回の東京会場には、過去最多となる24競技80名のオリンピアン・パラリンピアンが参加しました。

 冒頭のあいさつに立った平岡英介JOC専務理事は、「オリンピズムやオリンピックの価値についてあらためて学んで頂き、JOCの諸事業をはじめとする様々な活動の中で活かしてもらいたい」と本研修の意図を述べるとともに、選手強化のスローガンとして掲げている「人間力なくして、競技力向上なし」という言葉をあらためて説明。「先輩である皆さんが、オリンピアンの本来あるべき人間力をしっかりと身につけて、後輩を親身に指導してほしいと思います」と述べました。

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
JOCアスリート専門部会長を務める室伏広治JOC理事(写真:アフロスポーツ)
過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
フェリス女学院大学の和田浩一教授による講義(写真:アフロスポーツ)

 続いてJOCアスリート専門部会長を務める室伏広治JOC理事が登壇。「ドーピングや八百長などによりスポーツの高潔さと信頼性が問われています」と昨今のスポーツ界を取り巻く問題に触れ、「我々は今まさにオリンピアンとして『オリンピズムとは何か』をもう1度考え直し、スポーツが社会にどう役立つのかを語っていく義務があります」と話しました。そして、トーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長から強く言われたという「オリンピアン、メダリストになれたのは社会のおかげ。その喜びを社会に返さないオリンピアンにはメダルの価値はない」という言葉を紹介。「メダルを取ったうれしい経験だけではなく、失敗したときの経験から何を得たのかを伝えていくこともオリンピアンの使命ではないでしょうか。今日は皆さんとそういった議論もしていきたいと思います」と述べました。

■「近代オリンピックの父」クーベルタンの考えとは

 参加オリンピアン・パラリンピアンの紹介に続いて、フェリス女学院大学の和田浩一教授が「オリンピックとオリンピズム」をテーマに講義を行いました。

 和田教授はまず、古代オリンピックと近代オリンピックについて紹介し、「近代オリンピックの父」と呼ばれるピエール・ド・クーベルタンがどのような考えを持って近代オリンピックの基礎を築き発展させてきたのか、1896年にアテネで開かれた第1回大会からオリンピックがどのような歴史を辿ってきたのかを説明。オリンピック憲章に記載されたオリンピズムの定義を挙げ、「オリンピズムという考え方に基づいて平和な世界を作ることがオリンピック・ムーブメントである」としました。「まだ国際連盟のような平和を維持する組織がない時代に、クーベルタンはスポーツでそれができないかを考え、自身が属する枠の外には多様な世界が広がっていることを知ってもらおうとしました。皆さんには是非競技の枠を越えて多くの人と対話をして、より良いオリンピック・ムーブメントを作っていってほしいと思います」と述べ、「世界のオリンピアンが発する言葉をIOCは大切にしています。日本のオリンピアンも、積極的に発信して下さい」と訴えました。

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
パラリンピック3大会に出場した射撃の田口亜希さんがパラリンピックの基礎をレクチャー(写真:アフロスポーツ)
過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
登壇者の話を真剣に聞き入る参加者たち(写真:アフロスポーツ)

■パラリンピックの基礎を学ぶ

 パラリンピアンを代表して登壇したのは、JOCアスリート専門部会のオブザーバーを務めている射撃の田口亜希さん。「アスリートとして知っておきたいパラリンピック基礎知識」と題し、パラリンピックの歴史や語源、日本で普及した背景、パラリンピックバリューなどのレクチャーに加え、2012年のロンドン大会の事例紹介を行いました。

 講義では、脊髄を損傷した兵士のリハビリがパラリンピック誕生のきっかけとなったこと、パラリンピックが現在はオリンピック、サッカーのFIFAワールドカップに次いでチケットセールスが世界3番目のスポーツイベントになっていること、2020年に東京が世界で初めて2度目の夏季パラリンピック開催都市となること、自身の競技である射撃の特徴やクラス分けなど、様々な側面からパラリンピックについて説明しました。田口さんは最後に、誰もがアクセス可能な快適な世界を作る「Accessibility(アクセシビリティ)」という考え方を挙げ、「例えば障がい者用の駐車場がなぜ広いのかは自分が障がい者になって初めて知りました。2020年に向けていつかは直接自分に関わってくる問題として捉え、ソフト面(マインド)の部分でなぜ障がい者用の設備が必要なのかを考えて、伝えていきたい」と、述べました。

■オリンピック教室が中学生にもたらす影響

 後半最初のプログラムでは、JOCがオリンピック・ムーブメント推進のために行っている「ハローオリンピズム事業」の概要説明が行われました。そして、事業の1つである「オリンピック教室」について、平成25年度に伊藤華英さん(水泳・競泳)の授業を受けた広島県尾道市立因北中学校の上田俊弘先生が、授業の前後で生徒や生徒を取り巻く環境がどのように変化していったか、という視点で事例を紹介しました。

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
オリンピック教室の事例紹介を行った尾道市立因北中学校の土田俊弘先生(写真:アフロスポーツ)
過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
アイスブレイクでは決められた人数で集まって自己紹介を実施(写真:アフロスポーツ)

 土田先生は、オリンピック教室を経験した生徒らに対して、1年後に追跡調査(アンケート)を実施したところ、オリンピックへの肯定的評価は48%から98%とほぼ全員に増えたほか、伊藤さんの授業内容を覚えていると回答した生徒は9割に達し、「ベストを尽くす」「小さな努力を重ねる」「感謝の心」「尊敬」といったキーワードが挙げられたと説明。「2時間という限られた時間の中でオリンピアン先生とともに授業を通じて学んだ生徒の心には、これだけの大きなものが刻まれているのだと気付かされた」と語り、この授業をきっかけに、卒業時生徒の一人が「将来オリンピックに関わる仕事がしたい」と前向きな心境をつづった手紙を書いてくれたというエピソードと合わせ、講演のように一方的な伝え方では決して味わえない、オリンピアン先生から直接授業として学ぶことの重要性を強調しました。

 また土田先生は、伊藤さんの授業の進め方が教師側にも新たな気付きを与えたり、地域の活性化につながるという相乗効果がある一方、オリンピック教室に参加した生徒と参加していない生徒とで意識の差が生まれたり、通常事業の中でどう展開していくかという課題も共有。「東京2020大会で何かできることはないかと思っている生徒は多くいます。彼らが主役となって、4年後に大会を支えていけるような人材育成をしていきたい」と述べ、今後のオリンピック教育に対してさらなる意気込みを語りました。

過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
グループディスカッションでは活発な議論が行われた(写真:アフロスポーツ)
過去最多の80名が参加 平成27年度第3回JOCオリンピアン研修会を開催
各グループともに工夫をこらしたプレゼンテーションで盛り上がりを見せた(写真:アフロスポーツ)

■オリンピアンが考える「オリンピックバリュー」

 最後はこれまでの内容を踏まえながらグループディスカッションを実施。今年度4回オリンピック教室に参加した小口貴久さん(リュージュ)がコーディネーター役となり、まずはゲーム形式でグループを作りながら自己紹介をしていくアイスブレイクを行いました。参加者の距離が縮まったところで10のグループに分かれ、「卓越、友情、敬意/尊重」というオリンピックバリューに当てはまる自身の経験や思いを振り返り、メンバー同士で共有。各グループでまとめたオリンピックバリューを「効果的に伝える方法を考えて発表する」という課題が出されました。

 発表形式は自由とあって、各グループともに工夫をこらしたプレゼンテーションを実施。ミュージカル風に仕上げたグループや、出身競技の実践を取り入れたり、模造紙いっぱいに絵を描いたり、映像を作成するなど個性あふれる発表が次々に飛び出し、会場は熱気に包まれました。

 全グループの発表終了後に再び登壇した室伏理事は「現役から離れれば離れるほど難しいかもしれませんが、我々はこれからもずっとオリンピアンとしてメッセージを伝えていかないといけません」とコメント。「次回もより多くの方に参加して頂きたいので、周りのオリンピアンに是非声をかけてください」と参加者に呼びかけて、研修会を締めくくりました。

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