JOCの就職支援「アスナビ」：第2回パラアスリート採用企業交流会を実施
日本オリンピック委員会（JOC）は1月19日、日本財団ビルで、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」のパラアスリート採用企業交流会を開催しました。
アスナビは、オリンピックやパラリンピック、世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。平成22年度から実施しており、これまでに67社/団体94名の採用が決まりました（平成28年1月25日時点、内定者含む）。平成26年度秋からは日本パラリンピック委員会（JPC）とも連携協定して、パラリンピックを目指すトップアスリートの就職支援も開始し、これまでに11社11名のパラアスリートの採用が決まっています。
本交流会は平成27年2月に続いて2度目の開催。企業の採用担当者15社33名、パラリンピック競技団体関係者8名、アスナビで採用が決まった選手6名の計47名が参加し、取り組み事例の紹介や課題解決に関する情報交換が行われました。
はじめに橋秀文日本パラリンピック委員会（JPC）副委員長があいさつを行い、パラアスリートを採用した企業やこれから採用を検討している企業の関係者に感謝を述べました。そして「私どものビジョンは共生社会の実現です。“社会”という漢字はひっくり返すと“会社”になるわけですが、社会と会社は表裏一体。“共生社会”を実現するには、“共生会社”の実現が無いと成り立ちません」と企業のさらなる協力を求め、「パラアスリートは目標を自分で作ってPDCAサイクルを回しています。失敗や挫折があっても前に行く力もあり、チームで働く力も十分あります。企業にとっては相当魅力的な戦力になると思います」とアピール。さらに、アメリカの政治家ヘンリー・キッシンジャーの「チャンスは貯金できない」という名言を引き合いに出し、「東京パラリンピック（という最大のチャンス）まで今日も含めてあと1680日しかありません。色々なことをやってここに間に合わせ、アスリートや障がい者にとって素晴らしく良い世の中になるように、是非皆様の力をお借りしたい」と呼びかけました。
■東京2020大会に向けた期待とパラアスリート採用のメリット
基調講演では、パラリンピック5大会で計5つの金メダルを獲得している日本パラリンピアンズ協会の河合純一会長が「パラアスリートの競技を取り巻く環境について」というテーマでプレゼンテーションを行いました。
河合会長は今年がリオデジャネイロパラリンピック開催年ということで注目の大きさ、勢いを感じているとし、東京2020大会のビジョンを紹介。「パラリンピックの成功なくして東京2020大会の成功は無い」という考えが国民に浸透しきれていない背景として、これまでの教育課程で障がいを持つ人と触れ合う機会が無かったことを挙げ、「社会の仕組みや制度が古かったということ。今そこにある課題を解決して前に進めていくことが、いまの我々に強く求められているのでは」と述べました。
さらに、パラアスリートが持っている力として「目標を持ち、それを達成する能力」、「障がいがあるということをポジティブにとらえ、普段気付かないところに気付きを与えられる」という2点を具体例を挙げながら紹介し、「社会制度のひずみの中で、気付きや出会いのきっかけを失ったかもしれませんが、2020年に向かってその扉は開かれています。皆さんが採用を決めれば、その業界をリードすることにつながっていく。そのきっかけが今日という日になればいいと思っています」とコメント。「できるかできないか、で悩むのはやめましょう。やりたいか、やりたくないか。この情熱や決意こそが大事です」と呼びかけました。
■概要と参加者を紹介 多くの選手たちも来場
次に、八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターがアスナビの概要を説明。採用実績や選手の活用事例、今後の取り組みなどを具体的に紹介し、パラアスリートの採用に興味がある企業からの問い合わせが増えていることを明かしました。八田ディレクターは「まだまだ登録選手数を増やしていきたいので、競技団体の皆さんには積極的に推薦をいただきたいと思います。選手、企業、競技団体の3者それぞれがWin-Win-Winの“トリプルWin”になり、パラアスリートのアスナビの輪を広げていければと思っています」と述べました。
続いて、パラアスリートの採用実績がある企業と所属選手、パラリンピック競技団体の代表者が順番に登壇し、アスナビを知ったきっかけや採用に至った経緯、選手の現在の働き方などを一言ずつ発表しました。
※登壇者一覧（コメント順）
＜三菱電機株式会社＞
・人事部採用グループ 高石圭悟マネージャー
・アーチェリー 上山友裕選手
＜ジャパンライフ株式会社＞
・山口ひろみ代表取締役社長
＜旭化成株式会社＞
・卓球 板井淳記選手
＜社会福祉法人太陽の家＞
・卓球 宿野部拓海選手
＜ANAウィングフェローズ・ヴイ八王子株式会社＞
・業務部 牛島裕副部長
・知的水泳 津川拓也選手と母の智江さん（ビデオメッセージ）
＜ウスイホーム株式会社＞
・木部浩一代表取締役社長
・射撃／ピストル 森脇敏夫選手
＜株式会社クイック＞
・平田安彦取締役
＜株式会社JTBコミュニケーションズ＞
・総務局 上埜洋平チーフプロデューサー
・スキー／アルペンスキー、自転車／ロード、トラック 小池岳太選手（ビデオメッセージ）
＜アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社＞
・人事・総務部 吉岡裕一アシスタントマネージャー
・パワーリフティング 佐野義貴選手
＜日本知的障害者水泳連盟＞
・及川栄子専務理事
＜日本ゴールボール協会＞
・池田貴理事
■乃村工藝社が行った社内啓蒙活動とは
採用企業の選手活用事例紹介では、株式会社乃村工藝社の花田孝之人財開発部長と原山麻子スポーツぶんか事業開発室長、2014年11月に入社をしたパワーリフティングの西崎哲男選手が登壇しました。花田部長は、西崎選手採用の経緯として(1)障がい者雇用の促進、(2)社員の連帯感の向上、(3)社会的認知度の向上、(4)同社が進める「スポーツぶんか空間事業」の活性化という4つの目的を挙げ、それぞれの目的を実現するための取り組みを説明。原山室長は、取り組みを進める中で見えてきた課題解決策として、パワーリフティングという競技を知ってもらい、1人でも多くの社員に西崎選手を応援してもらえるようにと開催した社内セミナーの様子を紹介しました。
こうした社内の啓蒙活動に加え、練習環境の整備や競技大会への協賛など、次々と手厚いサポート体制を敷いていく同社に対し、西崎選手は「見ての通りすごい会社なんです。考えられないようなことを企画し実行していくスピード感を目の当たりにして感動しましたし、その過程で他部門の方とたくさん接することができ、会社にもっと貢献していきたいという思いが強くなりました」と感謝しきり。「向上心や感謝の気持ちを忘れずに、リオデジャネイロ、東京に向けて頑張ります。僕を採用してよかったと思える選手になりたい」と力強く宣言しました。
最後は参加者がグループに別れ、分科会という形でさらに詳細な情報交換が行われました。競技団体からはパラリンピックの出場権を得るための過程や活動スケジュール、採用企業からは選手の雇用形態や社内広報の方法などが共有されたほか、アスナビをより効果的に活用するための要望なども寄せられ、熱気に包まれた会となりました。
関連リンク
- パラアスリート内定者一覧
- JOCの就職支援「アスナビ」：パラアスリート採用企業交流会を実施
- アスナビについてのお問い合わせ
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