日本オリンピック委員会(JOC)は12月24日、岸記念体育会館にて「平成27年度JOCアントラージュフォーラム」を行いました。「アスリートの育成環境の改善に向けたフォーラム」と題し、アスリート・アントラージュの連携への理解を深めるため、JOC加盟競技団体(NF)間での情報共有を目的として開催されました。
本フォーラムは3つのテーマ構成で行われ、NFの担当者を中心に48団体79名が出席。テーマ1はアントラージュに関するガイドラインについて、テーマ2はエージェント(代理人)とのかかわり方について、テーマ3はアンチ・ドーピングとのかかわり方について、プログラムを実施しました。
開会のあいさつを行った平岡英介JOC専務理事は「選手を取り巻く環境を整備していくのがアントラージュ専門部会である。本日のフォーラムでスポーツの持つ力をあらためて理解いただき、皆さんとスポーツの高潔さを推し進めたい」とアスリートサポートへの理解を促しました。
続いて高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が、アントラージュガイドラインへの理解や代理人とのかかわり方、アンチ・ドーピングについての再認識をテーマとしている旨を説明。「来年のリオデジャネイロ、5年後の東京を一緒に盛り上げていくためにも、皆様から活発なご意見をいただきたい」と訴えました。
■アントラージュガイドラインの説明
テーマ1では国際オリンピック委員会(IOC)のアントラージュガイドラインに基づき作成された「JOCのアントラージガイドライン」について、竹内浩JOCアントラージュ専門部会員から説明が行われました。「アントラージュ」を「選手をとりまく関係者」と表現し、その行動と制裁に関するガイドライン内容を説明。NF内での啓発と取組みを促しました。
■エージェント(代理人)とのかかわり方
テーマ2ではスポーツマネジメント会社と選手の代理人による、「アスリートを取り巻くエージェントの課題と役割」について、事例報告が行われました。
最初に山本雅一株式会社スポーツビズ代表取締役社長が、マネジメント会社が担う役割と現役アスリートとの関係やその業務説明を行い、「JOCやNFとも連携をとりながらアスリートが持つ価値を長期に渡って継続することを目標に活動している」との報告がありました。次に深山計株式会社RIGHTS.エグゼクティブマネージャーより、アスリートのセカンドキャリアに関わる業務説明がなされ、引退後の選手のサポートのみならず、現役中からセカンドキャリアを考えた選手サポートをすることの重要性について報告がありました。
最後に水戸重之弁護士(TMI総合法律事務所)が、選手の代理人の立場からエージェント業務やマネジメントとエージェントの違いを説明し、選手と信頼関係を築くためにフェアで透明性があり説明責任を果たすことが重要であることが示されました。報告者3名から「スポーツとアスリートの価値を高めるために、アスリートとチーム、NF、代理人が誠実に向き合い連携をとることが重要」との話を受け、会場からは代理人とNFとの連携の仕方や、東京2020大会に向けてアスリートが様々な場所で活動する際の課題について質問があがり、代理人との関わり方に対する関心の高さが伺えました。
■「アンチ・ドーピング」とのかかわり方
テーマ3は「アンチ・ドーピング」とのかかわり方をテーマに公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)による報告が行われたのち、「アンチ・ドーピング活動を行う上での課題とJADAとNFとの連携」をテーマにグループディスカッションが行われました。
はじめに浅川伸JADA専務理事が、アンチ・ドーピングをとりまく世界での取り組みとして、バンクーバー及びロンドンオリンピック・パラリンピックでの取り組み事例や過去のドーピング事件の影響について説明。続いてJADAでのアンチ・ドーピングの教育や啓発活動に関する報告を行い、NFと連携したアンチ・ドーピング活動を推進したいと訴えました。
JADAからの事例報告を受け、参加者は「アンチ・ドーピング活動を行う上での課題」及び「JADAとNFの連携」をテーマに5グループに分かれてグループディスカッションを実施。グループ内で各NFのアンチ・ドーピングに対する取組を共有する等、活発な意見交換が行われました。発表では「JADAとの情報交換ができる場」の要望や「若年層やトップレベル以外の選手に対する啓発の必要性とその課題」や「“うっかりドーピング”を防ぐための、選手やコーチへの教育」等、多くの意見があげられたほか、「選手への期待の高まりがドーピングにつながりやすくなる」と今後を見据えた注意喚起も示されました。
高橋アントラージュ専門部会長による総括の後、最後に齋藤泰雄JOCアントラージュ専門部会副部会長があいさつに立ち、エージェントやアンチ・ドーピングについて「選手を守るという観点からもアントラージュは選手を第一に考え、クリーンな選手を育成していくために周りの人々にどういったことを求めていくか、ということだと理解いただきたい」と述べ、フォーラムを締めくくりました。
本フォーラムは、スポーツ庁委託事業平成27年度コーチング・イノベーション推進事業「アスリート・アントラージュ」の連携協力推進事業の一環として、本会が受託して開催したものです。
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