日本オリンピック委員会(JOC)は10月27日、味の素ナショナルトレーニングセンターで「平成27年度JOCアントラージュフォーラム」を行いました。
今回は「アスリートの育成環境の改善に向けたフォーラム」と題し、アスリート・アントラージュの連携への理解を深めるため、JOC加盟競技団体(NF)間での情報共有を目的として開催されました。
本フォーラムは2部構成で行われ、NFの担当者を中心に54団体86名が出席。第1部ではJOCアスリート専門部会・JOCアントラージュ専門部会合同でNFアスリート委員会設置について、第2部ではJOC強化部・JOCアントラージュ専門部会合同で、代表選手選考の基準と選手への伝達についてのプログラムを実施しました。
フォーラム開始に先立ち、あいさつを行った平岡英介JOC専務理事は「スポーツの持つ力を国民と共有しながら、2020年に向けて気運を醸成し、選手を取り巻く環境の整備につなげていきたい」とアスリートのサポートに取り組む重要性を述べました。
■アスリートファーストの環境づくりの重要性
第1部ではアスリートとNFとの理想の関係性作りをテーマに、2団体のアスリート委員会設立の事例紹介とグループディスカッションが行われました。冒頭に、荒木田裕子JOCアスリート専門部会副部会長から、各NFでのアスリート委員会設置状況と、アスリート委員会設立の意義について説明がありました。続いて高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長は「NFの具体的な事例を参考に、アスリート委員会のしくみや設置の意義、アントラージュとアスリートの関連性の深さとアスリートファーストの環境づくりの重要性について理解を深めていただきたい」と述べ、アスリート委員会設置の重要性を訴えました。
アスリート委員会設立事例紹介として、はじめに日本トライアスロン連合の大塚眞一郎専務理事と山本良介アスリート委員会委員長が、アスリート委員会設置の経緯と取り組みを報告しました。大塚専務と山本委員長はNFと選手との意見交換できる場があることでそれぞれが得られるメリットをあげ、大会運営にアスリートの意見を取り入れる、アスリートが競技について学ぶ環境を作るなどの具体的な事例を紹介しました。続いて日本水泳連盟の伊藤華英アスリート委員が、昨年設立されたアスリート委員会の設立経緯と取り組みを報告しました。具体的な活動事例として、国際競技連盟(IF)アスリート委員会へ向けた意見集約と会議内容の共有、選手や指導者に向けた啓蒙冊子の作成などが紹介されました。また、今後アスリート委員会はNFと協力してアスリートファーストのよりよい環境づくりを目的として活動をしていきたいと報告しました。
2団体の事例紹介を受けたグループディスカッションでは、8つのチームに分かれて「NFとwin-winの関係を作る、NFアスリート委員会の役割と組織」をテーマに意見交換を行いました。参加者は自身が所属するNFのアスリート委員会設置状況や活動について紹介すると共に、他団体の状況や取り組みを聞き、アスリート委員会をどのような目的で設置をするのか、またどのような活動がされていくべきか、熱心に議論が展開されました。発表では「アスリートとNFが信頼関係を築くことの重要性」や「アスリート委員会設立趣旨を明確にする必要がある」といった意見をはじめ、アスリート委員会を建設的な意見交換や情報共有の場として活用するため、アスリートへの指導やメンバー構成の検討など、設立や活動に関して具体的な意見が提示されました。
■選手選考はどうあるべきか?
第2部では「選手選考の透明化に向けた取組み」をテーマに4団体の事例報告とグループディスカッションが行われました。最初に、高橋アントラージュ専門部会長から、前回のフォーラムで「透明性のある選考」に関する意見が多くあげられたことを受けて本テーマを設定したと説明がありました。続いてJOC強化部より、選手選考に関する情報公開の重要性とその影響について説明し、「本フォーラムで各NFの事例を共有することで、課題等の解決方法をみつけていただきたい」と述べました。
選手選考の透明化に向けた取り組みの事例報告として、最初に全日本柔道連盟木村昌彦強化副委員長が、同連盟で採用している選考方法の説明を行い、選手選考の場をマスコミに公開したことや選考基準を公式ホームページに掲載しているなどの事例紹介がありました。次に全日本バレーボール協会荒木田裕子強化事業本部長より、チーム競技の代表選手選考方法について、選考から外れた選手に対するケア内容、そして代表チームと選手の所属チームとの連携に関する説明がされました。続いて日本セーリング連盟鈴木國央オリンピック強化委員会委員から、選考に関するトラブルを避けるために選手選考基準を明文化したという報告がされました。最後に日本体操協会立花泰則マルチサポート委員会委員長より同協会の選手選考の方法とその目的について説明があり、選考基準を明文化することのメリットについての説明がありました。
4団体の事例紹介を受けたグループディスカッションは、競技特性や選考方法に基づいた8グループに分かれ、「選手の納得性を高める、選考基準の項目と情報伝達」及び「代表選考から漏れた選手へのサポート」をテーマに行われました。グループ内で各NFでの選手選考方法を共有、そのメリットや課題も語られ、活発な意見交換が行われました。それぞれの競技特性を含めたNFの事例をはじめ、「選考の基準や結果を公表することの重要性」や「競技特性上、一度の選考会で決められない」という課題など、多くの意見があげられました。また様々な事例を受けて「選考の透明化を行うことこそ選手へのサポートにつながるのではないか」という意見もあげられました。
高橋アントラージュ専門部会長と荒木田アスリート専門部会副部会長による総括の後、最後に齋藤JOCアントラージュ専門部会副部会長があいさつに立ち、「アスリートとNFが同じ方向を向いて進んでいかなくてはならない。若いアスリートにも積極的に意見を出してもらえるよう、アスリート委員会を活用してほしい。今後ともアスリートファーストを重視し、JOC、アスリート委員会、アントラージュ委員会としてもサポートしていきたい」と述べ、フォーラムを締めくくりました。
本フォーラムは、スポーツ庁委託事業平成27年度コーチング・イノベーション推進事業「アスリート・アントラージュ」の連携協力推進事業の一環として、本会が受託して開催したものです。
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