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2014.10.15 オリンピック

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
トークショー最終日は現役アスリートも登場(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は、東京都、一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と共同で、「1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク」を2014年10月6日(月)から12日(日)まで開催しました。

 7日(火)〜9日(木)は「アスリートトークショー」。荻原次晴さん、宮下純一さんを司会に、“スポーツの力"はどのように育まれてきたのか、この50年の歩みを年代別に分け、歴代オリンピアンが日替わりで登場するトークショーが行われました。

 イベント第3日(9日)のゲストは入江陵介選手(競泳/2012年ロンドンオリンピック200m背泳ぎ銀メダル)、上田藍選手(トライアスロン/2008年北京、2012年ロンドンオリンピック出場)、千葉真子さん(1996年アトランタオリンピック女子10,000m 5位入賞)の3人。現役選手2人を交えて、「そして強い日本へ、スポーツがつなぐ絆」をテーマにそれぞれの思いを語りました。

<トークショー要旨>

■入江選手、上田選手、金メダルのアジア大会

宮下さん 本日のテーマは「そして強い日本へ、スポーツがつなぐ絆」です。3選手が来てくれているので、3選手にまつわる絆のお話を伺っていければと思います。

荻原さん まずはですね、上田選手、入江選手、アジア大会の金メダルおめでとうございます。まずは上田さんから、どうでしたか今回のアジア大会は。

上田さん アジア大会では日本人が2人代表に選ばれていました。(優勝は)日本人同士の戦いになるという予想があったので、仲間でありながらライバルでした。私は(トライアスロンの)3種目の中でランが得意なんです。そこで後ろを1分20秒くらい離しての気持ち良いレースができたのですごくうれしかったです。

荻原さん 日本は強かったですよね。男女ともにワンツーフィニッシュで。

上田さん そうですね、4人1組で争う新種目のミックスリレーでもメダルを取ることができました。この種目が2020年の東京オリンピックから採用されればと思っています。

荻原さん 入江選手もおめでとうございます。どうでしたか、今回のアジア大会は。

入江さん ありがとうございます。100mと200mで2冠を取れました。今年は世界ランキング1位のタイムでこのシーズンを締めくくるという目標を立てていたので、その良いタイムが出せて、すごく良い締めくくりができたと思います。

荻原さん 大満足のアジア大会になったわけですね?

入江さん あと0.1秒で日本新記録でした。高速水着のときの自己ベストである日本新記録をもう少しで超えられそうだったので、正直言えばそこは少し悔しいです。でも、次の目標がまた明確になったので良かったと思います。

荻原さん 千葉さん、アジア大会では男女のマラソンも非常に頑張っていましたね。

千葉さん そうですね、男女ともにメダルをしっかり取ってくれました。オリンピックにつながるような結果が出たんじゃないかなと思います。

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
仁川アジア大会を終えたばかりの入江選手(写真:フォート・キシモト)

■競技の魅力 トライアスロンはハイタッチゴールも

宮下さん 皆さんそれぞれ種目は違いますが、ご自身の種目の魅力を語っていただきたいと思います。

入江さん 僕は水のスポーツなので、水の中に入ると気持ちがリセットされますね。水泳って(主な泳法が)4種目あっていろいろな泳ぎもできますし、タイムだけを競う競技なので、見てる方もすごく分かりやすいスポーツだと思うんです。見ていても、やってる方もすごく楽しい競技じゃないかと思います。

荻原さん そして(上田)藍ちゃん。トライアスロンは過酷ですね。泳いで走って自転車を漕いで。最後のランの42.195kmは“とどめ”みたいに思ってしまいます。

上田さん オリンピック種目は、1500m泳いで、自転車で40km漕いで、ラスト10kmの51.5kmという距離になっているんです。

千葉さん この小さい体で!

上田さん 記録ではなく順位を争う競技なので、最後のランニングの部分で後ろを引き離せていれば、沿道の皆さんとハイタッチをしながらフィニッシュできます。これはトライアスロンならではじゃないでしょうか。
 今は一般の方もトライアスロンをしている方が増えているんですよ。「トライアスロンをしてるんだぜ」って言うだけで、他の人とちょっと違うと思ってもらえる。そういう楽しさもあるので、(水泳選手も)「陸の上はダメ」と言わずにチャレンジしてほしいですね(笑)。

宮下さん ちょっとトライアスロンやってみたら?

入江さん 引退したらフルマラソンを1回やってみたいなって思ってるんですよ。引退してからですけど。

荻原さん さあそして千葉さん。マラソンではなく1万mでオリンピックに出場されてますけど。

千葉さん 1万mは、1周400mの競技場を25周グルグル回ってレースをするんです。

荻原さん それは自分の頭の中でカウントできているんですか?

千葉さん あれはですね、ゴール付近にあと何周だよっていう電光掲示板が出るんですよ。絶対忘れちゃいますので。ただ、それをずっと見ていると、「まだあと22周もある、20周もある」って、すごく気分がめいってしまうので、私はなるべく見ないようにしていました。見ないように見ないようにしてハッと見たときに「あ、あと5周だわ、やったー!」みたいな。そういう気持ちの作り方をしていましたね。

荻原さん 千葉さんはマラソンもやっていました。マラソンの魅力は?

千葉さん フルマラソンはトップの選手だけじゃなくて、多くのランナーが一斉に走れる競技。そういうところが素晴らしいです。入江君も、もしやってみたいという気持ちがあればフルマラソンは誰でも完走できますよ。全く普段運動されてない方でも3カ月くらい練習をすれば必ず。ちょっと歩いても大丈夫なんです。

■競泳選手の悩みは“パンダ焼け”?

宮下さん 逆に自分の競技のここが嫌だなっていうところはありますか? 水泳だったら、僕は夏合宿でのゴーグル焼けが気になりました。“パンダ焼け”になるんですよ。

入江さん 本当にそうです。背泳ぎで顔を上にして泳ぐので焼けやすく、“逆パンダ”に。合宿で焼けた後に撮影があると、本当に申し訳ない気持ちになってきちゃいますね。

宮下さん 夏に日本に帰って来てオフになるじゃないですか。デートとかを逆パンダでしなきゃいけないからちょっと恥ずかしいんですよね(笑)。じゃあ続いて藍ちゃんはどうですか?

上田さん そうですね、トライアスロンは水着でスイム・バイク・ランとやるのですが、バイクに乗っていると(水着が食い込んで)半分お尻が出てしまったり……。私は長いスパッツタイプの水着なので大丈夫なんですが、通常型の水着を着ている選手はそれを直しながら走っていますね。

宮下さん スイムの会場は地方によって水質が違うのでは? 僕も以前、横浜でトライアスロンの大会に出たことがあるんですが、オイルの臭いがすごかったです。

上田さん それがきれいになったんですよ! トライアスロンの大会をやるようになって、スポーツの力で変わったんですよ。

宮下さん 千葉さんはランニングしていて嫌だったことはありますか?

千葉さん トラック競技は、水泳のようにレーンがないので位置取り争いがものすごく激しくて、肘をぶつけられるんですよ。内側に押されてレーンの中に入ってしまうと失格になるので、位置取りは非常に難しかったですね。前の人のスパイクの鋲(びょう)が当たって、ゴールした後に流血しているということもよくあるんですよ。

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
終始笑顔が絶えず盛り上がる3人(写真:フォート・キシモト)

■チームジャパンの“絆”エピソード

宮下さん 聞いてみるといろいろありますね。続いては今日のテーマ、「そして強い日本へ。スポーツがつなぐ絆」のお話を伺います。皆さんもたくさんの方に応援されて絆を感じたとのこと。特に入江選手はロンドンオリンピックのときに「(競泳日本代表選手全員の)27人でリレーしている」と表現していました。

入江さん そうですね。競泳の場合、2年前のロンドンオリンピックですごく絆を感じました。外からも「今年の日本チームはすごいね」と言ってもらえることが多くて。仲も良かったですし、お互いを高めて刺激し合えるチームだったので、「27人のリレー」という言葉が自然に出てきました。言ったのが僕だっただけで、本当に全員が思っていたと思います。メドレーリレーのときは、泳いだのは4人ですが、応援席のみんなが全力で応援しているのが伝わってきました。銀メダルとった後、みんなが跳びはねて喜んでいる姿を見たとき「本当にこのチームで戦えて良かったな」と思いました。

宮下さん メドレーって良いですよね。6年前の北京オリンピックで僕も出ましたが、“たすき”をつないで日本を背負っている感覚が非常に良いですね。上田藍さんはチームでの絆は感じましたか?

上田さん トライアスロン競技でのオリンピックに選ばれる選手は、最大で男女各3人なので競泳などと比べると見た目としては小規模になります。でも、コーチ以外にも協会スタッフとしてそれぞれのチームのいつものスタッフの方が、沿道からメカニックとしてカバーしてくれます。

宮下さん お互いにライバルだけど、チームジャパンとしてですね。

上田さん そうですね。チームジャパンとして連携をとって、ライバル同士でも無線でタイム差を言ってもらって。そういう中でレースをしたので、絆も大きな大会になればなるほど深まっていきます。

宮下さん 千葉さんは、オリンピックのときはどうでしたか?

千葉さん 私は実は初めての世界大会がオリンピックだったんですよ。マラソンを始めたのが高校生のときで結構遅いんです。それが高校卒業して1年ちょっと、20歳で出場したオリンピックで5位。練習パターンが私には合っていて、急激に成長しました。

宮下さん 本当にオリンピックって巡り合わせ。全部の世界大会に出ているけどオリンピックだけ出ていないという選手もいますね。でも、千葉さんはオリンピックが最初という。

千葉さん ただ急激に強くなったからメンタル面がついていかなかった。(本番が)怖くて怖くて練習時間以外はずっと自分の部屋に閉じこもっていました。でもそんなときにチームメートだった先輩たちがサポートしてくれました。オリンピック選手って、自分のことで精いっぱいだと思うんです。そんな中で、ちょうど(本番へ向けて)アメリカに移動する日が自分の20歳の誕生日だったので、プレゼントをくれたり、励ましの言葉をもらったり。励ましくれたのがすごくうれしかったです。

宮下さん もし「自分だけ結果を出せればいい」と思っていたらそういうことはないですよね。みんなで戦うという絆が、そういう行動につながるんですね。

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
「自分の可能性を引き出してくれたのがトライアスロン」と語った上田選手(写真:フォート・キシモト)
入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
「体を鍛えることで心が成長した」という千葉さん(写真:フォート・キシモト)

■「みなさんにとってスポーツとは?」その答えは――

宮下さん さあ、最後にみなさんにある質問をぶつけたいと思います。みなさんにとってスポーツとは何でしょうか。入江選手は「喜怒哀楽」ですか?

入江さん はい。スポーツって喜びもあったり、負ける悔しさ、怒り、悲しみ、やる楽しさだったり、いろいろな感情が集まる場所。やる人も、見る人も、その4つの感情を味わうのがスポーツだと思います。

宮下さん 今まで水泳をやってきた中で、4つの感情で一番大きかったのは何ですか?

入江さん うーん、楽しかった気持ちが一番大きいですね。勝ったときの喜びも大きかったんですが、仲間といる瞬間が楽しかったし、代表合宿でみんなとワイワイしている瞬間だったり、水泳を通じていろいろな人に出会う楽しさが一番大きかったと思います。

荻原さん 上田藍さんはいかがでしょうか?

上田さん 私は「自分の可能性を引き出してくれるもの」ですね。最初はなかなか試合で勝てなくて、いつか勝てると努力をして徐々に勝てるようになって。限界を突き破ってきたので、そういう可能性を引き出してくれたのがトライアスロンでした。そういった部分では「自分にとってスポーツは?」と言われると、限界を作らないで可能性をどんどん広げていくことができたもの、体感したものですね。

宮下さん どのスポーツも最初はできないところからスタートしますが、一つ一つ階段を上っていくとオリンピックにつながるということですかね。

上田さん 誰でも頑張ればつながると思います。

宮下さん 素晴らしい言葉でしたね。皆さんに言えることかもしれませんね。可能性を引き出してくれるもの。では、最後は千葉さんに締めてもらいましょう。千葉さんにとってスポーツとは?

千葉さん 「身体とともに、心も元気になれる」です。身体を鍛えることで、私はすごく心が成長できたんです。陸上に出会う前は自分に自信が持てない人間で、自分のことが嫌いだったんです。特に自分の声をコンプレックスに感じていました。でも、スポーツに出会って体を鍛えることで、心も鍛えられた気がして。人ってこんなにも変われるんだということを体感しました。市民ランナーの方でも、マラソンを始めたことで心がすごく明るく前向きになったという人が非常に多いです。
 一生懸命に頑張っている自分ってキラッて輝いて素敵じゃないですか。そういう積み重ねが自信につながっているんじゃないかと思います。

入江陵介選手、上田藍選手、千葉真子さんがトークショーに出演=1964東京オリンピック・パラリンピック50周年記念ウィーク
入江選手の出演とあって、女性ファンの姿も多く見られた(写真:フォート・キシモト)

■2020年東京はみんなのオリンピックに

宮下さん さあ、「皆さんにとってスポーツとは」を伺ってきました。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けての思いを一言いただいてから最後にしたいと思います。入江選手からお願いします。

入江さん 東京オリンピックは6年後、その前にリオがありますがリオで金メダルを目指したいです。僕は6年後に30歳なんですが、先輩の北島康介さんや松田丈志さんは、今その年齢(北島32歳、松田30歳)で現役をされているので、それを考えたら僕も可能性はあると思います。6年後、選手としてオリンピックに出られたら最高かなと思いますね。

宮下さん どんなオリンピックになったらいいなと思いますか?

入江さん 海外の方って、日本の技術、文化が好きな方が多いので、オリンピックが終わった後にもう一回来たいと思ってもらえるようなオリンピック、都市にしたいなと思います。

宮下さん 競技以外の部分でもね。上田さんはどうでしょう?

上田さん 開催が決まったときは、そこまで東京オリンピック・パラリンピックを意識していない方も「おぉー」っとなられた思うんですね。トライアスロンはお台場で日本選手権をやるんですけど、開催が決まった年は応援に来られる方が増えました。

宮下さん 注目度が上がった?

上田さん そうですね。スポーツへの注目度が高まったというのと、トライアスロンにチャレンジしたいということで、育成コースに入る若手の選手が増えました。トライアスロンに限らないと思いますが。そういう「見る」から「する」、また「応援する」、「支える」など、いろいろな部分で自分がチャレンジしたいとより強く思えるようになった。東京オリンピック・パラリンピックを終えた後に、スポーツを通じて生きがい、楽しく過ごせるようなアクションを得て、次につながっていくといいなと思いますね。

荻原さん 日本のスポーツの発展は、2020年がゴールじゃいけないんですね。そこをきっかけになってスタートしていくような気持ちでいかないとね。

上田さん そうですね。自分もその場にいたいですね。

宮下さん さあ、最後は千葉さんになります。現役としてのお二人の話がありましたが、見る側はどうしたら2020年を楽しめるでしょうか?

千葉さん 出場するのは選手ですが、オリンピックはみんなのオリンピックなんです。出る、応援する、支える、日本でやるということはいろいろな形で参加できるチャンスがあります。それに、開催地は東京ですが、日本全国の方が参加しやすいような形を作ることが大事です。復興オリンピックとも言われているので、被災した地域を聖火ランナーが走ったり、そういうことで日本が前を向いて、オリンピックがあったことで生きる力をもらえるような、そんな“みんなのオリンピック”を実現したいですね。

宮下さん 僕が出場した北京オリンピックでは、24時間交代で選手村のセキュリティをしてくださった中国のボランティアの方がいました。「毎日、申し訳ございません。私たちのために」と話したら、「そんなことはない。私たちは北京にオリンピックが来なかったら、参加することはまずできなかった。こうやってボランティアで選手の方と一緒にオリンピックを感じることができるこんな幸せなことはない」という話を聞いたときに、「自分の国にオリンピックが来るということは、参加する“チャンス”なんだ」と。ボランティアにならなかったとしても、外国の方が来たときに英語でちょっと道案内をするだけでも、“おもてなしの心”をアピールするチャンスだと思うんです。英語を少し勉強して6年後に備えることも、オリンピックに向けて僕たち(選手が)がしたようなトレーニングをしたような感じになると思うので、“みんなで作るオリンピック”になればと思います。

荻原さん いろいろな楽しいお話を聞けました。

宮下さん 入江選手、上田選手のお2人は現役として頑張ると思いますので、もう一度拍手を送っていただければと思います。今後も頑張ってください。ありがとうございました。

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