日本オリンピック委員会(JOC)は6月6日、東京国際フォーラムで「オリンピックコンサート2014」を開催しました。
今年のテーマは「輝く夢を、ありがとう!」。下野竜也さん指揮の下、東京交響楽団の生演奏とともに、2月のソチオリンピック・パラリンピックで生まれた感動の名場面、さらに2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてオリンピックムーブメントが高まる様子が、会場の大スクリーンに映されました。
コンサートの案内役となるナビゲーターは、競泳で2度のオリンピック出場経験がある俳優の藤本隆宏さんが、前回、前々回に続き務めました。
夜7時過ぎ、コンサートが開演。ソチオリンピックの聖火台の映像をバックに、管楽器の音色が響き始め、オープニング曲の舞踏劇『ラ・ペリ』から「ファンファーレ」でスタートしました。続いての組曲『ホルベアの時代』から「前奏曲」では、曲の盛り上がりとスキー・モーグルのジャンプ映像とをピタリと合わせるなど、スピード感ある音楽で競技の疾走感を演出しました。
続く3曲目はチャイコフスキーの『くるみ割り人形』から「花のワルツ」。スクリーンには、ギリシャ・オリンポスの丘での聖火点火から、雪山、水中をめぐってのリレーなど、ソチオリンピック開会式に聖火が届けられるまでの様子が映し出されました。4曲目のNHK連続テレビ小説『おひさま』メインテーマでは、スキー・ジャンプの梨沙羅選手やフィギュアスケートの羽生結弦選手らの幼少期の姿が。ストーリー仕立ての流れで、選手たちがオリンピックに臨むまでに過ごしてきた時間を感じさせました。
■辻井伸行さんの演奏に観客は感嘆の渦へ
4曲を終えたところで、ソチオリンピックのメダリスト6人が舞台に登場。当時の心境を聞かれ、スキー・ノルディック複合個人ノーマルヒル銀メダルの渡部暁斗選手は「メダルが取りたいという一心で臨んだ」と振り返り、冬季オリンピックでは日本人最年少の15歳でメダリストとなったスノーボード・ハーフパイプ銀メダルの平野歩夢選手は、「オリンピックは小さい頃から目標としていたので、大会が近づくにつれて緊張しました」と語りました。
スキー・ジャンプ団体ラージヒル銅メダルの伊東大貴選手、竹内拓選手、清水礼留飛選手はそろって“レジェンド”葛西紀明選手へ感謝を述べつつ、息の合ったトークで会場を沸かせ、競技同様のチームワークを発揮。スキー・フリースタイルの新種目ハーフパイプで銅メダルを獲得した小野塚彩那選手は、競技の認知度向上のために「とにかくメダルを」との思いで臨んだオリンピックだったと話しました。
前半最後は、ピアニストの辻井伸行さんが登場し、ソチオリンピックの名シーンをバックにラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」から第3楽章を演奏しました。鍵盤の上を、力強く、細かく動く指さばきに観客も息をのみ、演奏直後から盛大な拍手が沸き起こります。アンコールに応え、リストの「ラ・カンパネラ」が披露されると、会場は感嘆の渦に包まれて第1部が終了しました。
■ミュージカルのトップ俳優の共演に大きな歓声
第2部にはミュージカル俳優の井上芳雄さん、山崎育三郎さん、浦井健治さんによるボーカルユニット「StarS」がゲストとして出演。ミュージカル『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」、ミュージカル『モーツァルト!』の「星から降る金」、ミュージカル『ジキル&ハイド』から「This is the Moment」の3曲を力強く歌い上げ、曲間のトークでは軽快な掛け合いで会場を大いに盛り上げました。
続くNHK大河ドラマ『篤姫』メインテーマでは50年前の1964年東京オリンピック開催で沸き立つ街が、バッハの「G線上のアリア」では2016年東京オリンピック・パラリンピック招致での落選から2020年の東京開催を決めるまでの物語が映されました。
■2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて支援を呼び掛け
鳴り止まない拍手のなか、竹田恆和JOC会長と夏季競技の4選手が登場。竹田会長は、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致に成功した感想を聞かれると「感無量です。日本中から大勢の方にご支援をいただき、この2020年東京オリンピック・パラリンピックを“オールジャパン”で勝ち取りました。本当に皆さんに感謝しています」と、あらためて招致活動への支援にお礼を述べ、6年後の本番へ向けて、引き続き“オールジャパン”での協力を呼びかけました。
また、2016年東京招致から招致活動に携わってきたパラリンピアンの田口亜希選手は、2020年東京でのパラリンピック開催について街全体の「バリアフリー化」に期待を寄せ、試合についても「テレビだけでなく生で会場に来て見ていただけたらと思います」と思いを語りました。そして、2020年を目指すヤングアスリートを代表して「JOCエリートアカデミー」でトレーニングを積んでいるフェンシングの野口凌平選手と江村美咲選手が舞台へ。自国開催となるオリンピックに向けての抱負や競技の魅力を語り、ロンドンオリンピックフェンシング銀メダリストの千田健太選手が「自分が主役だという気持ちで頑張って」とエールを送りました。
第2部後半ではワーグナーの歌劇『ローエングリン』から第3幕への前奏曲が迫力いっぱいに響き、スクリーンには「2016リオへ、物語は始まっている」のメッセージが。
そして、ラストは「StarS」の3人がステージに再登場しての「オリンピック讃歌」。体操の白井健三選手、野々村笙吾選手、競泳の瀬戸大也選手、今井月選手、レスリングの登坂絵莉選手、バドミントンの山口茜選手ら台頭する若手選手の映像が流れ、クライマックスでは舞台の左右から金色の紙テープが華やかに放たれました。
盛大な拍手に応えてのアンコールでは、第1部で演奏された「おひさま〜大切なあなたへ」をStarSが歌い上げ、親子、師弟、応援する家族など、選手と選手を支えた人々の姿に長く盛大な拍手が送られ、感動の舞台は幕を下ろしました。
■音楽とスポーツの融合に感動した選手たち
終演後、コンサートに出席した各選手が感想を語りました。オーケストラの生演奏を聞くのは初めてという選手も多く、オリンピックの映像と音楽が融合した演出に、感動した様子でした。
<終演後の選手コメント>
■渡部暁斗選手(スキー/ノルディック複合)
生の演奏が体に響いてきて感動しました。自分以外の選手の映像も音楽と一緒に見て、目にジワっとこみ上げるものがあり、次へのモチベーションが高まりました。
■平野歩夢選手(スキー/スノーボード)
参加するのは初めてでしたが、お客さんの数も多くて、たくさんのアーティストさんや僕以外のメダリストの方も来ていて、楽しかったです。
■伊東大貴選手(スキー/ジャンプ)
すごく感動しました。音楽からパワーを頂いて、また次の目標に向かって、新たなモチベーションができました。
■竹内拓選手(スキー/ジャンプ)
すごく鳥肌が立ちましたし、生演奏は迫力が違う。これも団結力というか、1人でも演奏が遅れてはいけないんだなと感じました。参加できて良かったです。
■清水礼留飛選手(スキー/ジャンプ)
感動しましたし、圧倒されました。音楽も聞きながら、映像も楽しめる。ジャンプの試合会場にも、(今日のように)モニターがあったら楽しそうだなと思いました。
■小野塚彩那選手(スキー/フリースタイル)
音楽のすごさを実感しました。母と弟がソチの会場で喜んでいるシーンも出てきて、オリンピックでの2人の様子が分かって良かったです。
■亀山耕平選手(体操/体操競技)
感動して涙が出ました。僕もあんな舞台で活躍して、感動したり、家族やスタッフの人たちと感動を共有したいと素直に思いました。
■藤直寿選手(柔道)
初めてコンサートを見て、すごいなと思いましたし、こんなに感動するものなんだなと思いました。最後まで楽しめたので良かったです。
■千田健太選手(フェンシング)
リオデジャネイロオリンピックに向けての原動力になりました。4年に1度のオリンピックならではの輝くものがあるなと思い、あらためてスポーツ、オリンピックの素晴らしさを感じました。
■野口凌平選手(フェンシング)
音楽の分野で一生懸命に頑張っている人たちの、本気の演奏を間近で聞けて、本当に心に響きましたし感動しました。
■江村美咲選手(フェンシング)
オーケストラの生演奏は、テレビで見るのとは迫力が全然違いました。映像もすごく感動しました。東京オリンピックでは、この感動を自分が他の人たちに届けられたらと思いました。
■田口亜希選手(パラリンピック・射撃)
久しぶりの参加でしたが、やっぱり良かったです。映像とクラシックの融合が素晴らしく、どちらともが引き立っていました。既に見ている映像もあるはずなのですが、あらためて涙が出ました。
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