オリンピックの“冬の華”、フィギュアスケート。日本で圧倒的な人気を誇るフィギュアスケートは熱心なファンが多いことで知られ、国内で開催されるビッグイベントのチケットは即完売になるほか、グランプリシリーズや世界選手権など、海外で開催される大会でも会場のあちこちで日の丸が振られる光景が見られます。国籍に関わらずすべての選手に温かい声援を送り、凝ったプレゼントが贈られるので、「日本で行われる試合が大好き」という海外のスケーターも少なくありません。
それは4年に1度の大舞台であるオリンピックも例外ではなく、高額の観戦ツアーも募集と同時にキャンセル待ちとなるなどの人気ぶり。日本から遠く離れたここソチにも、大舞台での雄姿を目に焼き付けようと連日大勢のファンが訪れ、地元ロシアへの熱狂的な応援に負けず大声援を送りました。
そこで今回は、観戦に訪れたファンの皆さんを直撃。応援にかけるそれぞれの思いを伺ってみました。(取材日:2月14日、19日)
■4年前から着々と準備 地元ファンには応援グッズをプレゼント
2010年バンクーバー大会の銅メダル獲得をはじめ、数々の「日本男子初」の偉業を成し遂げてきた橋大輔選手。東京から友人と橋選手を応援しに来た飴谷有見子さんは、ロシアのファンにも使ってもらおうと、橋選手の応援用バナータオルを日本から5枚持参。「ショートプログラムが終わった後、会場の外でロシア人ファンと盛り上がっちゃって。すでに4枚渡しました!」という飴谷さん。ロシア語で一緒に応援を呼び掛けるメッセージを掲げ、最後の1枚に声がかかるのを待っていました。
また、堂々の金メダル候補として初めてのオリンピックに乗り込んできた19歳の新エース・羽生結弦選手を応援しにきた東京都の白沢かおりさんは、羽生選手が世界ジュニア王者に輝いた4年前に「ソチには絶対、応援に行く」と決めて準備をしてきたとのこと。ただ「ソチでは銅メダルくらいが取れたらうれしいな」と思っていたそうで、金メダルに手が届く位置にいるという状況にいい意味で裏切られた様子。その日のフリーで見事に金メダルを獲得した羽生選手ですが、白沢さんは「ツアーが強行軍なので、明日の朝にはソチを離れないと……」とメダルセレモニーが見られないことが少し心残りのようでした。
■引退報道で観戦を決心 ネットを駆使して情報収集も
女子シングルの浅田真央選手を応援しに来たという山口県の田村和歌子さんは、海外初観戦がソチオリンピックに。前回のバンクーバーオリンピックは仕事で見に行けず、ソチは「ハードルが高い」と諦めていた矢先、浅田選手が今季限りで一線を退く可能性があると知って見に行く決心をしたそうです。「最後だし、ロシアの方がロシアの選手を応援するのがすごかったので、ちょっとでも(自分の応援が)聞こえたらいいなと思って」と初めて日の丸を持参しました。浅田選手に「悔いのない演技をして笑顔で終わってほしいです」とメッセージを送った田村さん。選手の浮き沈みを共有できるのも、生観戦の醍醐味かもしれません。
大阪から友人と2人で観戦に来た角谷舞さんは、女子の応援のほかにもう1つ目的があってソチ入り。「東日本大震災の影響で開催できなくなった2011年の東京での世界選手権を、ロシアが代替開催してくれました。その感謝を伝えたくて、横断幕を持って行きたかったんです」というのが1番の動機だそうで、インターネットラジオやSNSを駆使し、感謝のメッセージ入りバナーのPRと渡航準備を進めてきたとのこと。バナーは地元ロシアのテレビ局でも取り上げられ、「アイデアや資金面などいろんな方に助けていただいてソチに来られました。ついに会場に来られたという興奮しかないです」と感無量の様子でした。
応援の形は十人十色ですが、「悔いのない演技をしてほしい」という気持ちはみな同じ。羽生選手も試合後のインタビューで語っていたように、日本から駆けつけたファンの声援が選手の大きな後押しになったことは間違いありません。
悲喜こもごものドラマが展開されたソチオリンピックのフィギュアスケートは、20日に行われた女子シングルのフリースケーティングをもってすべての試合が終了。22日には金メダリストの羽生選手のほか、町田樹選手、高橋選手、浅田選手の4名がエキシビションに出演し、いよいよフィナーレを迎えます。
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