ソチオリンピックのスキー・ノルディック複合男子ノーマルヒル個人で、1994年リレハンメル大会以来20年ぶりに銀メダルを獲得した渡部暁斗選手が13日、ジャパンハウスで記者会見を行い、メダル獲得から一夜明けた心境を語りました。
――メダル獲得から一夜明けた今の心境は?
渡部選手 昨日試合が終わってすごく忙しかったので、余韻に浸る暇もなく時間が過ぎたのですが、ようやく寝る前になってベッドの上で横になって携帯を見て、連絡の通知の多さだとかで、一つすごいことをやってしまったんだなと、そういう感情になりました。
レースは暑くてハードだったので、体が火照っていてあまり寝つきが良くなかったのですが、浅い眠りのなか少し余韻に浸りながら寝つきました。
――複合個人のメダルはリレハンメル大会の河野孝典さん以来20年ぶりでした。長い時間がかかっての個人戦のメダルでしたが、その点を自分でどう受け止めていますか?
渡部選手 20年も取れなかったということに驚いていて、その間、荻原健司さんだったり、高橋大斗さんだったり、小林範仁さんだったり、取れそうで取れないという大会が続きましたが、その人たちから多くのことを学びました。僕は出会う人に恵まれていると思っています。レースが終わるまで20年というのは知らなかったので、そこに対する気負いはありませんでしたが、今回ようやくメダルという結果を取ることができて、個人的にもうれしいですし、チームとしてもみんなに喜んでもらえると思います。
――テレビ中継で荻原次晴さんが号泣していました
渡部選手 僕がメダルを取ったというニュースよりも「荻原次晴号泣」というニュースが大きかったようで……(笑)。それだけ熱い応援をしてもらえてうれしいですし、次晴さんが号泣してくれたお陰でコンバインドチームが20年間苦労してきたことが皆さんに伝わったんじゃないかなと思います。
――まだレースが残っていますが、そこまでどうテンションを維持していきますか?
渡部選手 僕の場合はワールドカップで毎週末2試合、土日と繰り返して(試合をして)きているので、今回も6日間という同じような空き方ですし、いつも通り調整していけたらなと思っています。今回、最初の試合でメダルを取れたので肩の荷が下りていますし、ノーマルヒルよりは余裕をもって試合に臨めるのではないかと思います。
――では、さらにいい色のメダルが狙えそうな予感がありますか?
渡部選手 予感は常にしていて(笑)、ノーマルヒルも予感があったんですが、そこで(金メダルを)取れないというのがまだまだ実力不足というのはあります。それも含めて常に優勝というものに挑戦し続けているので、またラージヒルでもその気持ちを忘れずに挑戦したいと思います。
――事前の会見で「金メダルを取る覚悟ができている」と言っていましたが?
渡部選手 金メダルを取る覚悟というよりは、どんな結果になったとしてもそれを受け止める覚悟ができたという感じです。結果的にメダルが取れたのでよかったのですが、オリンピックは何があるか分からない舞台だと思っていて、(高梨)沙羅ちゃんみたいに、優勝候補が4位という結果に終わったりとか、ショーン・ホワイト(スノーボード)もそうですが、そういうことが起こり得る舞台なので。そうなったとしても受け入れる覚悟ができたということで、そういう気持ちで試合に臨みました。
――常々ワールドカップの総合チャンピオンの方が最強だと言っていますが、オリンピックでメダルを取ったことによって、オリンピックに対する価値観やメダルの価値は変わりましたか?
渡部選手 沙羅ちゃんの戦いやハーフパイプの試合を見ていて、オリンピックでメダルを取ることの難しさがひしひしと伝わってきました。僕は昨日は銀メダルだったので、金を取るのがいかに難しいかを実感しましたし、そういうところに挑戦するというのはまた別の一つの目標として次に掲げてもいいかなと思いました。
でも僕の中で、一番の最強の舞台がワールドカップというのは、それもまた変わっていません。それは、ドイツやオーストリアの強い選手が(オリンピック代表から)外れて、例えばオリンピックの前のオーベルストドドルフ(ドイツ)の大会で僕は3位だったんですが、2位のノルウェーの選手は代表に選ばれていません。そういうところでオリンピックとワールドカップというのは一概には比べられないのかなと思っています。
――ラストスパートで負けてしまった理由は?
渡部選手 相手の方が一枚上手だったとしか言いようがないですね。僕はラストスパートというか、スパートでは勝てないと思っていたので、相手の体力を徐々に削りながら上りで少しペースを上げてみて、そこで離れたらいけるかなと思っていました。でも、最後まで後ろについてきていたので、僕が諦めたわけではなくて、その時点で勝負は決まっていたのかなと思います。
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