日本オリンピック委員会(JOC)は10月14日、文部科学省や日本体育協会などとの共催で、体育の日・中央記念行事「スポーツ祭り2013」を開催しました。今年で5回目の開催となった「スポーツ祭り」は、1964年に開催されたオリンピック東京大会を記念し、国民がスポーツに親しみ健康な心身を培うという趣旨で祝日に制定された「体育の日」に行われています。
会場となった東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター、国立スポーツ科学センターなどには、およそ80人のオリンピアンやアスリートが集まり、のべ1万5200人の参加者とともにスポーツを楽しみました。
味の素フィールド西が丘で行われた開会式では、下村博文文部科学大臣が「1964年に東京オリンピックが開催され、それを記念して体育の日が制定されました。そして2020年、56年ぶりに東京オリンピック・パラリンピックが開催されることになりました。3.11の東日本大震災から復旧・復興し、7年後に向けて本日参加して頂いた皆さんと一緒に盛り上げて、歴史に残るオリンピック・パラリンピックを開催しましょう。今、ここにいるオリンピアンや皆さんの中にも、2020年にオリンピアンとして出場される方がおられると思います。今日は楽しんでいただき、スポーツを通じて人と人との輪をさらに広げる、素晴らしいイベントになるようお願い申し上げます」と開会宣言。
続いて、荻原健司さん(スキー・ノルディック複合)、齋藤信治さん(バレーボール)らが日本国旗を、宮下純一さん(水泳・競泳)、大林素子さん(バレーボール)、上山容弘選手(体操・トランポリン)らが主催団体旗を持って入場しました。そして、ロンドンオリンピックで活躍をした松本隆太郎選手(レスリング男子グレコローマン60kg級銅メダリスト)と八木かなえ選手(ウェイトリフティング女子53kg級出場)が「スポーツ祭りの火」を点火。最後に、田中琴乃さん(体操・新体操)がお手本役となって、「スポーツ祭り体操2013」と題した準備運動を行いました。
■青空の下、大運動会とジョギングでアスリートと交流
開会式に続いて行われたのは「オリンピアンふれあい大運動会」。アスリートと500人の小学生が赤、青、黄、緑、白の5組に分かれ、「大玉ころがし」「フラフープ競争」「しっぽ取り競争」を楽しみました。夏を思わせる強い日差しが照りつける中、子供たちは元気いっぱいに動き回り、アスリートたちも慣れない競技に四苦八苦しながらも積極的にチームを盛り上げました。260点を獲得して優勝した緑組のリーダーを務めたロンドンオリンピック銅メダリストの清水聡選手(ボクシング)は「みんなで力を合わせて交流を深めて、さらに結果も出て、今日はもう最高でした」とメンバーをたたえ、惜しくも届かなかったチームのアスリート達は悔しそうな表情を浮かべる子供たちに「よく頑張った!」と励ましの言葉をかけていました。
一方、陸上トレーニング場では「オリンピアンふれあいジョギング」が行われ、荻原次晴さん(スキー・ノルディック複合)や中村礼子さん(水泳・競泳)、八木選手らが約2kmのジョギングに参加しました。第1組で走り終えた荻原次晴さんは、次々とゴールゲートに入ってくるランナーたちをハイタッチでお出迎え。ゴール後、サインを求める大勢のランナーに囲まれた八木選手は「すごくきつかったんですけど、子どもたちと一緒にしゃべりながら楽しく走ることもできましたし、逆に私が励ましてもらった感じで、本当に良かったです」と笑顔で振り返りました。
■トークショーでは2020年東京オリンピック・パラリンピックの話題に
正午から「憩いの広場」で行われたトークショーには、荻原次晴さん、八木選手、7月の世界選手権で金メダルを獲得した瀬戸大也選手(水泳・競泳)、北京パラリンピック金メダリストの鈴木孝幸選手(水泳・競泳)、バンクーバーパラリンピック金メダリストの狩野亮選手(スキー・アルペン)が登場。開催が決定した2020年東京オリンピック・パラリンピックについて、決まったときの心境や7年後に向けた意気込みを語りました。2020年東京オリンピックを26歳で迎える瀬戸選手は「僕は、今日来てくれているちびっ子たちと同い年くらいの時に北島康介さんに憧れて写真を撮っていました。ちびっ子たちと7年後に一緒に代表に入って、みんなで金メダルを目指していけたらなと思うので、自分も負けないように頑張るし、みんなも自分の夢を無理と思わないで限界をつくらずに目標に向かって頑張ってほしいと思います」と、未来のオリンピアンにメッセージを送りました。
■スポーツ教室ではアスリートが直接指導
午後は各競技のトレーニング場でスポーツ教室が開催されました。今回は新たに射撃練習場が会場に加わり、練習用の「ビームライフル」と「デジタルピストル」を使った射撃体験に30人の子供たちが参加。西本宏美さんと小西ゆかり選手(ともにライフル射撃)が講師役となり、銃の使い方や的の狙い方などをレクチャーしました。最初は苦戦していた子供たちも、慣れてくると何度も10点を連発。教室を終えた小西選手は「ピストルは難しいと言っていましたが、当たる子はすごく当たるし、私が『これが大事だよ』って言ったことを素直にできる子もいました。応募が360人もあったと聞きましたし、こうした機会を持てたことが本当にうれしかったです」と語り、射撃界の盛り上げに気持ちを新たにしている様子でした。
水泳教室には瀬戸選手のほか、ロンドンオリンピックでメダルを獲得した萩野公介選手、立石諒選手、寺川綾選手、上田春佳選手が登場。デモンストレーションとして瀬戸選手がバタフライ、寺川選手が背泳ぎ、立石選手が平泳ぎ、上田選手が自由形、萩野選手と飛び入りで参加した鈴木選手は4種目を少しずつ泳ぐ「50m個人メドレー」を披露。見ていた子供たちからは「きれい!」「速い!」といった声が次々に起こりました。
昨年も水泳教室に参加した寺川選手は「普段こうして大人数で、私たちがそろって接する機会が無いので、貴重な経験になりました。泳げない子たちも必死になって泳いでくれたのがうれしかったです」と振り返りました。
ボクシング教室では清水選手が18名の小学生を指導。構え方や「ジャブ」「ワンツー」といった基礎の部分を、時折ユーモアを交えながらも真剣にアドバイスをしていました。また、レスリング教室にはオリンピック3連覇を達成した伊調馨選手が参加。実戦形式の練習をする小学生100名に対し、笑顔で声をかけながらそれぞれのマットを回っていました。伊調選手は「ここには良いコーチがいっぱいいるので、子どもたちの『学びたい』と思う姿勢が熱く感じられます。自分でも教えながら確認している部分もあるので、すごく良い機会だなと思います」と語り今後のレスリング界を支える選手たちに刺激を受けていました。
柔道教室には、ロンドンオリンピック銀メダリストの杉本美香さんが初参加。組み手の取り方や「払い腰」のかけ方を、お手本を見せながら指導し、次々に飛んでくる質問に1つ1つ丁寧に答えていました。指導を終えた杉本さんは「楽しくワイワイできました。最初は子どもたちも緊張していたんですけど、やっていくうちに自然な形になってきて、自分もやりやすかったし、一緒に楽しめました。また来年もやりたいですね」と語りました。
そのほか、会場内ではスポーツ写真展やオリンピアンによる自転車スピードチャレンジ、宿泊施設・アスリートヴィレッジの食堂「サクラダイニング」のメニューを試食できる「勝ち飯試食体験会」など、さまざまな催しが行われました。また、飲食ブースには大相撲の現役力士によるちゃんこ鍋や仙台名物笹かまぼこの販売など、東日本大震災復興支援の屋台が設けられ、大勢の人で賑わいました。
すべてのイベントが終了した後、福島第一原発事故の影響で屋外活動を制限されている福島県内のスポーツ少年団を招待した「福島キッズ スポーツ祭りツアー2013」の参加者を、アスリートが勢ぞろいで見送りました。スポーツ祭りを含む2日間のプログラムを体験した子どもたちは、アスリートとハイタッチを交わした後バスに乗り込み、名残惜しそうに手を振りながら帰途につきました。
■JOC広報誌「OLYMPIAN2013」も配布
また、当日はJOCが年1回発行する広報誌「OLYMPIAN」2013年度版が発行され、参加者に配られました。今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった国際オリンピック委員会(IOC)総会のレポートや、開幕が迫ったソチオリンピックの見どころなどを掲載。小学校3年生の息子とジョギングに参加したという横浜市の男性は「憩いの広場」でトークショーを聞きながら冊子をめくり、「リオデジャネイロオリンピックを目指す選手は、名前と顔が一致していなかったので、紹介ページを読んで確認していました。いま舞台で話している瀬戸選手も楽しみです」と将来性豊かな若いアスリートに注目していました。
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