2006年11月10日、国立オリンピック記念青少年センターにて「第3回スポーツと環境担当者会議」が開催された。
個人でできる環境保全活動
第3回のテーマは「私たちにできること」。すでに深刻化しつつある地球温暖化の現状や、一個人が取り組むべき環境保全活動について話し合われた。
はじめにJOCの水野正人スポーツ環境専門委員長がIOCのスポーツと環境への取り組みを説明。氷河の減少、日本海域の気温の上昇など地球温暖化現象が世界各地で深刻に進んでいる現状を訴えた上で、「JOCは地球環境保全をアピールするポスターや横断幕を作り、各競技団体に配布。さまざまな協力を得て、啓発活動をしている」と、環境保全について相互の連携がしっかりと図られるようになってきたことを報告した。
次に環境省が推進している「チームマイナス6%」について、環境省地球環境局の地球温暖化対策課国民生活対策室プロジェクトリーダーの吉野議章氏が説明を行った。1997年の京都議定書では、日本は1990年に比べ2008年から2012年の間に温室効果ガス排出量を6%削減することを取り決めている。CO2排出を削減するため、チームマイナス6%の基本となる考え方として以下のことを挙げた。
•知識から行動へ。マイナス6%を知るだけではなく、行動する。
•政府の本気感を示す。そのために総理大臣や環境大臣もポスターに登場。
•WIN-WINの関係を大切に。行動に結びつけるためには押し付けず、お互いがメリットになるようにする。
•情報の洪水に埋もれる危険性があるので、温暖化の情報を集中的に発信する。
またスポーツ選手の言動は影響力があると吉野氏。
「スポーツ選手が自分の言葉で語りかけることは子どもたちへの影響も大きい。ぜひスポーツ選手にオピニオンリーダーになってもらいたい」と語った。
続いて鎌賀秀夫スポーツ環境専門委員が環境保全・啓発活動への取り組み事例を紹介した。鎌賀委員は日本レスリング協会のスポーツ環境委員長でもあり、同協会での環境への取り組みを紹介。
日本レスリング協会では独自のポスターを作成。子どもたちにも環境問題を考えてもらおうと、3R運動についての漫画もイラストレーターに依頼して作成していると報告。
「環境保全の取り組みは、まずやってみること。活動を続けていくうちにどれだけの人が関心を持っているか不安にもなるが、やらないことには前に進まない」と鎌賀委員は語った。
各競技団体などの取り組みについて
20分の休憩をはさみ、競技団体等の環境への取り組み事例の紹介に移り、日本卓球協会の竹内敏子常務理事と日本ソフトボール協会の鈴木征スポーツ環境委員長が説明を行った。
現在、卓球では揮発性のある有機溶剤を含む接着剤が問題になっている。ラケットにラバーを貼るときに使用するこの接着剤はまもなく世界で全面的に禁止となるが、それに先駆け日本では小学生の選手が使わないようにしていく考えだ。
また日本卓球協会には平成17年度に環境委員会が設置され、「帰る時は来た時よりも美しく」という標語やポスターの作成、競技会場へのゴミ箱設置による啓発活動を昨年度は14会場で行った。2009年には卓球の世界大会が横浜で開催されるが、この大会は環境をテーマに開催される、と報告。
ソフトボールは金属バットの再利用を検討。現在、地元の産廃業者や日本バット工業会の会長との意見交換、回収方法、費用について思案中だと語った。また子どもたちの意識を改革するためにもソフトボール環境標語を募集し、942点の応募があった中から山梨県の中学生の作品『ホームラン入ったスタンドゴミはなし!』が最優秀作品として選出された他、優秀作品が5点選考されたことを報告した。
次に、野球のバット材として最良とされるアオダモの育成に取り組む「アオダモ資源育成の会」について説明するため同会の大本修理事長が壇に上がった。
アオダモは九州から北海道まで広く分布している落葉高木でアオダモはバットの素材として世界一とされている。バットはこれまで年間12〜13万本が製造されてきたが、バットの材料になるまで70年もの年月を要し、しかも1本の木から4本しか作れれない。現在は3万本の生産が限界となっている。
そこで里山に植樹し、バット材の確保と環境保全の両方に力を入れる『アオダモ資源育成の会』を平成14年7月17日に設立した。日本各地の球場などに記念プレートとアオダモの木を植樹、循環利用として使い終わったバットは燃やして灰にし、山に還す活動を行っていると説明した。
会議の最後にはプロスケーターでJOCスポーツ環境アンバサダーの八木沼純子さんが登場。スケーターの視点から見た環境問題について「フィギュアスケートのエッジは1年に2本使いますし、靴も3足は履きつぶします。
これをもう一度集めて、何か作れないと考えたことがあります。また環境への取り組みを常に言い続けなくてはと思います。各リンク訪れたとき、ポスターを貼ったりスタッフと協力し合って観客に呼びかけて協力を得ています」と述べた。
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