日本オリンピック委員会(JOC)は7月10日、トップアスリートの就職支援ナビゲーションシステム「アスナビ」の支援説明会を東京都内で行いました。「アスナビ」とは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技を安心して続けることができる環境を作るために、企業側のサポートを呼びかける活動です。8回目の説明会となる今回は、ロンドンオリンピックに出場する日本代表選手を含む7名の現役選手(ビデオ登場3名含む)が一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC)メンバー24企業28名に対して、就職支援を求めました。
はじめに、一般社団法人東京ニュービジネス協議会会長兼、株式会社フォーバル社長の大久保秀夫氏と、JOCの荒木田裕子理事が挨拶。「アスナビ」から採用され、ロンドンオリンピックに出場する現役選手について紹介し、「Win−Win(双方が良い結果をもたらすこと)の関係がようやく始まりました」と、企業への感謝の気持ちを述べました。
続いて、荻原健司JOCゴールドプラン委員会・スポーツ将来構想プロジェクトメンバーが、1992年のアルベールビルオリンピックで金メダルを獲得したときの体験談を話した後、「日本のスポーツ選手たちは、自分も社会の中で役に立ちたいと、誰もが思っていると思います。ぜひ日本の選手たちにそういった環境を皆さんから提供していただけないでしょうか。皆さんと心をひとつにして、思いを共有して、勝利を共有できればと思っております」と、アスリートと企業側、両者の立場に立って、アスリート採用の重要性を語りました。
さらに、「アスナビ」の名付け親でもある原田尚幸JOCゴールドプラン委員会委員が、「アスナビ」の概要を説明し、「世界を目指すアスリートの価値をぜひ皆さんにもお分かりいただきたい。アスリートと皆さんが一緒に世界を目指す形で、皆さん自身にも日の丸を背負っていただければと思っています」と、力強く訴えました。
また、ロンドンオリンピックの出場を決めたビーチバレーの朝日健太郎選手を「アスナビ」を通して採用した株式会社フォーバルの綾部敏郎執行役員人事本部長が登壇。「夢を実現するという決してあきらめない心、私どもの企業理念と同じ様に、新しいことに挑戦し、世界を舞台に活躍しているスタイル、これが我々のビジョンやスピリッツに合致していたことから、彼を採用しました。これにより社員の連帯感がより一層高まり、社員一人ひとりが刺激を受けて、会社の成長につながっています」と、採用に至った経緯、採用のメリットについて説明をしました。
その後、八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターのコーディネーターの下、ソチオリンピック、リオオリンピックの出場を目指し、就職先を求めている7名の現役選手(ビデオ登場3名含む)が緊張しながらも、就職状況や現在の練習環境を話しました。
■斯波正樹選手(スキー/スノーボード・アルペン)
「まずは来年、1戦でもいいのでワールドカップで優勝することを目標にしています。2014年のソチオリンピックでは、メダルが取れるのではないかと周囲に思われるような成績と勢いで臨めるようになりたい。オリンピックに出場したことがありませんので、ワールドカップで優勝することによって、オリンピックに対するイメージがわくと思いますので、その経験をしてソチに臨みたいと思っています」
■坂本鷹志選手(体操/トランポリン)
「4月に行われた最終選考会で敗れてしまい、ロンドンオリンピックの出場権を逃してしまいました。現在はその悔しさをばねに、4年後のリオの出場を目指しています。3月まで日本体育大学で、助教として学生に授業をしながら競技を続けてきましたので、仕事をしながら競技を続けていく形に対して抵抗はありません」
■外村哲也選手(体操/トランポリン)
「2008年の北京オリンピックに出場することができ、現時点で日本人最高位の4位に入ることができました。現在は、スポンサーとの契約も切れてアルバイトをしており、今の練習時間ではオリンピックを目指すには厳しい状況です。メダルを獲るという夢を実現するために、一緒に同じ道を歩んでいってもらえないでしょうか。オリンピックに挑戦するチャンスを与えてください」
■住吉都選手(スピードスケート)
「昨年は念願だったワールドカップ代表に選ばれ、世界各地を転戦しました。現在はスポンサー様からの年間契約金と、貯金を崩しながらの生活です。コーチの遠征費が支払えず、コーチ不在で遠征したり、チャレンジしたいトレーニングや使用したい器具に手を回すことができなかったりする状況です。ソチオリンピックまで悔いのないように今後もトレーニングをしていきたいです。そしてソチで皆さんにお返ししたいと思っています」
≪ビデオ登場アスリート≫
■羽根田卓也選手(カヌー)
「高校卒業後、ヨーロッパの強豪国スロバキアに単身で留学をしました。昨年の世界選手権、ロンドンオリンピックの選考会では、日本人史上初となる決勝進出を果たし、10位という結果を残すことができました。ロンドンオリンピックでは、下の世代にも影響を与えられるような成績を残したいです。ご支援していただいた際には、メダルの獲得を通して、社に恩返しがしたいと思っています」
■桜井美馬選手(スケート/ショートトラック)
「まだ大学生ですので、会社で何ができるのか正直よくわかりませんが、自分のできる限りのことは精一杯やらせてもらいたいと思います。ショートトラックは個人競技ではありますが、リレー種目もあるため、チームワークも重要です。これからも人とのかかわりやご縁も大切にしていきたいと思っています。私が大学を卒業した年がソチオリンピックの年となるため、集中できる環境や練習、試合に臨めればいいなと思っています」
■平野由佳選手(アイスホッケー)
「私は13歳から日本代表に選出され、過去に2度オリンピック出場にチャレンジするも、あと1点というところで涙をのみました。ソチオリンピックまであと2年。オリンピック予選まであと1年を切っている中、できるだけ競技に集中したいと思っています。今まで一般事務や、スポーツクラブのインストラクター、販売員、コールセンターなど色々な方とかかわる仕事をしてきました。職場では人間関係を尊重しながら仕事をしてきたので、この経験を生かしたいと思っています」
「アスナビ」は、2010年秋にスタートし、現在、水泳/競泳の古賀淳也選手が「第一三共株式会社」、水泳/競泳の上田春佳選手とカヌー/スラロームの竹下百合子選手が「キッコーマン株式会社」、フェンシグ/女子エペの下大川綾華選手が「テクマトリックス株式会社」、ビーチバレーボールの朝日健太郎選手が「株式会社フォーバル」、スキー/スノーボード・アルペンの家根谷依里選手が「株式会社大林組」、ライフル射撃/ピストルの小西ゆかり選手が「飛鳥交通株式会社」、近代五種の黒須成美選手が「東海東京証券株式会社」と、ロンドンオリンピックに出場する選手4名を含む8名のそれぞれ就職が決定しています。
JOCでは今後も、一人でも多くの選手と一社でも多くの企業が、双方にとってプラスになる雇用を実現させられるよう、「アスナビ」による支援を行っていきます。
(写真提供:アフロスポーツ)
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