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2012.03.29 その他活動

「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催

「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催
約100人が参加して行われた「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」
「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催

 日本オリンピック委員会(JOC)は3月14日、スポーツ組織における女性の活躍に関する課題や情報をJOCと各競技団体が共有し、日本スポーツ界の発展に寄与する、「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。JOCや各競技団体の関係者など約100人が参加し、スポーツ界における女性の活躍や登用について、さまざまな角度から考えるよい時間となりました。

 フォーラムの開会にあたり、JOC理事兼女性スポーツ専門部会の山口香部会長があいさつ。「今年開催されますロンドンオリンピックにおいても、サッカー、レスリング、柔道など、女子チーム、選手の活躍が大いに期待されております。しかしながら、女性スポーツに関する問題は、日本の社会的、文化的背景にもかかわりが大きいことからもなかなか事態が変化する事が困難な状況だと思います。歩みは遅くとも、地道に止めることなく進んでいくことも重要であり、アスリート以外にも多くの女性がさまざまな形でスポーツに関与していくことは女性スポーツのみならず、スポーツ界全体の発展に寄与するものと考えております」と、女性フォーラムの意義を述べました。

■第1部:基調講演「社員一人ひとりが能力を発揮できるために」(P&G高橋真一氏)

「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催
高橋真一氏

 続いて、“女性が働きやすい会社”としても高い評価を得ているP&G株式会社のファイナンス部門ディレクターの高橋真一氏による基調講演が行われました。
 米国・シンシナティ、タイ、韓国での海外勤務の経験を持つ高橋さんは、「とくに、タイ勤務の際に、今回のテーマであるダイバーシティ(多様性)と、密接にかかわる経験をさせてもらいました」と述べ、その後P&G社が推進する独自の「ダイバーシティ」への取り組みについて実例をもとに、「社員一人ひとりの個性を尊重し、それを組織に活かしていくことにより、社員がより充実感を持って自分の力を発揮で出来るようになる。また、それぞれの強みを活かし、足りないところを補い合い、互いに学び合い刺激し合う、そうすることでそれぞれが自分の得意な部分で、ビジネスに貢献することにもなる」と概念を述べました。また、こうした組織の柔軟性を生むために最も大切なこととして、組織の意識改革を訴えました。

■第2部:パネルディスカッション「スポーツ組織における女性の活躍とスポーツ界の発展」
 山口部会長がコーディネーターを務めるパネルディスカッションでは、4人のパネリスト(JOC副会長兼専務理事・市原則之氏、日本サッカー協会副会長兼専務理事/JOC理事・田嶋幸三氏、P&Gファイナンス部門ディレクター高橋真一氏、国士舘大学体育学部教授/JOC女性スポーツ専門部会員・田原淳子氏)が参加して行われました。

「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催
パネリストとして参加した(左から)田嶋氏、市原氏、高橋氏、田原氏

 田嶋氏は、2007年に日本サッカー協会が定めた「なでしこビジョン」という女子サッカーをバックアップする施策を説明しました。「ひとつは、サッカーを女性のメジャースポーツにしようということ。2007年当時はサッカー協会の登録が女子は3万人。それを2015年までには30万人にしたいということ。2番目は世界のトップレベルにしたいということ。女子の場合、ワールドカップのときは、世界ランキング4位でしたから、そういう意味では非常に順調にやってきたと思います。3番目は、世界に通じる個を育成する。そのために協会としては、強化指定選手には(金銭面の)サポートしていこうと。ドイツやフランスなどトップレベルのところでやりなさいということを奨励するために、そのような制度を設けました」と、取り組みについて語りました。

 市原氏はJOCの女性登用に関する問題について、「2000年の3月、第2回世界女性スポーツ会議では数値目標があり、2002年の12月31日までに組織指導者を10%、さらに2005年までには20%にしようとうたっていました。意識はしているものの、実際には数は増えていないという状況」と発言。その上で、その基本的な考え方として、「人数合わせだけで女性を登用するのではなく、しっかり現場で力を積んだ上で自然と役員の中に入り、なくてはならない存在にならないといけない」と登用する側とされる側の姿勢について語りました。

「平成23年度JOC女性スポーツフォーラム」を開催
「スポーツ組織における女性の活躍とスポーツ界の発展」というテーマで行われたパネルディスカッション

 スポーツとジェンダーという視点で研究活動を行っている田原氏は、「スポーツ界の将来へ向けて今、求められていること」について、現状や背景、方策などを含めて説明。「女性の役員の登用が増えた場合に期待されることは、多様性の確保の一端が開くことになるのではないでしょうか。多くの女性たちがかかわってくることになるので、それによって新しい取り組みも生まれる可能性があります。それがより多くの支持を獲得し、さらには競技の普及につながり、より高い競技レベルが築かれることにもつながっていくと思います。こうした団体や競技界の活性化のほかにも、ロールモデルの増加やセクシャルハラスメントなどの性にかかわる問題の抑止力などにもなっていくと思います」と、色々な視点から利点を述べました。

 高橋氏は、社内で生まれてくるであろう抵抗勢力について、組織の上に立つ人間が意識を変えないと抵抗勢力が生まれると断言。さらに、「ただし、抵抗勢力というと、文化的な部分が大きいと思います。たとえば、採用的するときに女性が奥ゆかしいがゆえに発言せず、それが逆に女性を登用することの弊害にはなりうる。そのためには女性を増やしていくということは必要だと思いますが、女性の方も自分の背中を押していただきたい」と、日本人ならではの“文化の壁”を打破することも必要だと述べました。

 続いて、参加した各競技団体の担当者らと、パネリストたちとのスポーツ界における女性の活躍について、活発な意見交換が行われた後、青木剛JOC常務理事・総務委員長が閉会のあいさつを行いました。「今回のフォーラムは、スポーツ界以外の方からも事例を頂戴しながら、女性とスポーツを取り巻くさまざまな課題や新しい視点をスポーツ関係者の皆様と共有することによって、その解決と改善、そしてスポーツ界の未来につながるよい機会になればという思いから実施しました。参加者の皆様も今日のテーマ、内容に関して各競技団体、各所属に持ち帰り、議論を続けていただきたいと思います」と語り、フォーラムは幕を閉じました。

写真提供:フォート・キシモト

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