9月4日、福岡市役所講堂で日本オリンピック委員会(JOC)とJOCパートナー都市である福岡市と共催で「第5回JOCスポーツと環境・地域セミナー」が開催され、九州地区の競技団体関係者を中心に約250人が参加した。セミナーは板橋一太JOCスポーツ環境専門委員長、吉田宏福岡市長による主催者挨拶でスタート、基調講演、トークショー、活動報告、福岡市の環境政策、パネルディスカッションと、盛りだくさんの内容で行われた。
■第1部:水野副会長と板橋委員長が講演
トップバッターは、IOCスポーツと環境委員の水野正人副会長。「この100年で化石燃料を燃やした二酸化炭素が地球を覆い、熱が放出できなくなり温暖化を招いている。その結果が異常気象の増加となっている」と解説した。また「1990年代に当時のサマランチIOC会長が『スポーツ・文化』に加え『環境』をオリンピックムーブメントに取り入れると宣言したことに始まり、各国のオリンピック委員会が環境保全活動を進めている」と説明し、北京オリンピックは、大会前に車規制や工場休止で大気汚染を緩和したなどの事例を報告した。
■岩崎恭子さん、塚原光男さんトークショー
続いて、JOCスポーツ環境アンバサダーの岩崎恭子さんと塚原光男さんによるトークショーが行われた。岩崎さんは水泳の現場から、「私が小さいころはプールにカルキ(塩素)を入れていて、咳き込むこともありました。今は塩で消毒し地球に優しくなっています。また昨年は、全国水泳チーム・クラブ環境活動コンテストを行いました」と活発な水泳連盟の活動を報告した。
塚原さんは、体操競技で使う炭酸マグネシウムについて「滑り止めなので、使わないというのは無理ですが、器具の近くに炭酸マグネシウムを吸い取る機械を置き、体育館に充満しないようにしていますし、他の方法も研究しています」と説明。「スポーツは子供への教育も兼ねています。環境に対してできることをやりたい」と訴えた。
■板橋委員長 JOCの環境活動を報告
続く、JOCの活動報告では、板橋委員長が「スポーツの分野でも、環境問題と持続可能な開発の問題は無視できないテーマ」とのジャック・ロゲIOC会長の言葉を紹介。「JOCは、各競技団体に環境委員会を立ち上げるようお願いしたところ、60%の団体で設置、徐々に浸透してきている。ポスターの貼付やバナー(横断幕)の掲揚、競技会のプログラムに環境啓発の掲載など具体的な活動を説明した。
最後に、2009年3月にバンクーバーで開かれた「第8回スポーツと環境世界会議」について報告。「決議文はこう結ばれている。『最も革新的な精神を持つものは若者であり、環境と最も調和できるのも若者である』」と、若い世代との協力を訴える報告となった。
■福岡市も循環型社会へ
第2部は、福岡市環境局環境政策部の井上文博部長が『循環型社会と低炭素型を目指して』をテーマに講演。「福岡ソフトバンクホークスの選手が1日あたりのCO2削減目標を宣言するポスターが好評。住宅太陽光発電の補助は、福岡市の1kW7万円の補助と国の補助を合わせると、3kWで31万円の補助となる。事業者には、毎週金曜日をノーマイカーデーとし、割引の1日乗車券を発行している」など数々の事例を紹介した。
■3氏によるパネルディスカッション
最後は、板橋委員長がコーディネーターを務め、パネルディスカッション『スポーツ界における環境保全活動の新しい展開について』が行われた。パネリストは、九州産業大学の上和田茂工学部長、福岡市体育協会の木部正俊専務理事、アビスパ福岡の下田功ホームタウン推進部長の3名。
上和田氏は「スポーツと景観」をテーマにした公共スポーツ施設作りの立場から、屋内スポーツ施設では、透光性のテフロン幕の屋根にすることで、昼間の照明が抑えられ省エネになると説明した。
木部氏は、大会運営の現場から、ボランティア清掃、ヨットハーバーの緑化などの取り組みを紹介。「マリンスポーツ、アウトドアも盛んで大会も多く、ソフトバンクホークスもある福岡市。42競技団体が、積極的に環境に取組んでいる」と話した。
下田氏は、Jリーグ『アビスパ福岡』の取組みを紹介。選手が自らの清掃やごみの分別活動。小学校と幼稚園の芝生化プロジェクト、地面に穴をあけ芝を植える方法で、子供たちと地域の人が汗を流して芝生を植えることで、環境に興味を持ち、地域ネットワークも生まれる」と紹介した。
最後に水野副会長が「スポーツには価値があります。多くの人を巻き込み協力し合って良いスポーツの場を作り、みんなが幸せになる活動を進めましょう」と締めくくった。
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