JOCが進めているトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の一環として、ロンドン、ソチ両オリンピック を目指す選手6名が、関東ニュービジネス協議会の会員企業25社27名に対して、アスリートの就職の現状を説明し、支援を求めました。
まず、荒木田裕子JOC理事が企業と選手をマッチングさせる事業「アスナビ」について説明。荒木田理事は「企業側はトップアスリートの非凡な才能に注目している一方で、サポートには何千万円もの多額な経費がかかると思い違いをされている現実があります。世界のトップを目指す上での経済的支援や安定した練習環境を確保するためにも、企業の皆様にアスリートの現状を理解していただきたいと思います。3月11日の東日本大震災のあと、アスリート達は『日本はひとつのチーム』とすぐに立ち上がり、募金活動、救援物資の輸送、被災地の見舞いなどを行ってきました。アスリートには、人並み以上に努力し克服し結果を残す力があり、それが社会への発信力、影響力になります。企業の皆様にアスリートの魅力を理解いただき、理想的な雇用関係を結べることを期待しています」とあいさつしました。
さらにJOCキャリアアカデミーの八田茂ディレクターが、アスリートを雇用した場合の具体的な条件や雇用形態ついて話しました。給与、遠征費、用具費、練習施設代、スタッフ給与などさまざまな経費をどこまでカバーするか、正社員・契約社員など、会社側のサポートに様々な選択肢があり得ることを説明し、支援を求めました。
続いて、アスリートの採用を積極的に行っている企業の事例として、株式会社購買戦略研究所の古市勝久代表取締役が登壇。同社では、アスリート特別採用者向けに、フレックスタイム制による一日6時間の就業時間や、給与、研修、福利厚生などの条件を整備し、積極的な採用を実施。すでに従業員120人のうち10人以上がアスリート採用という実績を残しています。
「アスリートはプロ意識があり負けず嫌いです。実験的にアスリートを採用したところ、いい形でビジネスマンとして成長していく素質があるということが分かり、選手の積極的な採用に踏み切りました。アスリート社員でも一切、特別扱いはしておりません。逆に、一般の社員に対しては、労働時間が短いアスリート社員に負けるなよと励ましているくらいです」と、古市代表取締役は、アスリート採用が効果的に機能していることを説明しました。
その後、就職先を探している6名のゲストアスリートが、それぞれの就職状況や練習環境を話しました。
■上山容弘選手(トランポリン)
「僕の強みは2点です。1つは、決めた事をやり続けられることです。トランポリンを始めた小学校1年生の時はオリンピック競技ではなく、メジャーなスポーツに興味はありましたが、トランポリンに集中し努力した結果、世界ランキング1位、世界新記録なども成し遂げることができました。また2つ目は、言葉ではなく身体で伝えることができることです。競技以外に、小学校や演技会などでトランポリンの普及活動も行っています」
■武田奈也選手(フィギュアスケート)
「毎日の練習という努力を続けてきたことで、(07年NHK杯3位など)自分の想像以上の結果を残せることの喜びを感じ、継続する力を身につけることが出来ました。フィギュアスケートは今、メディアに出る機会の多い競技なので、大会等で企業の宣伝にもつなげられると思います。去年は怪我をして悔しい思いをしましたが、来シーズンは世界選手権、四大陸選手権出場を目指し、オリンピックにつなげたいと思います」
■冨田尚弥選手(競泳)
「目標は、今年の世界選手権で金メダルを獲ることで、最終的にはオリンピックでメダルを勝ち取りたいと思っています。今年4月の代表選考会では北島康介選手に勝つことができました。相手が強ければ強いほどワクワクできることが僕の武器です。今は学生ですが、競泳で培ってきたことを発揮できるよう、就職したら頑張りたいと思います。競技成績を上げて企業広告をするのはもちろん、社内イベントなどにも参加し、お役に立ちたいと思います」
■附田雄剛選手(フリースタイルモーグル)
「先月まで福島の企業に11年間所属してきましたが、今回の東日本大震災でスキー部の活動が中止になり、この説明会に参加させていただきました。僕の目標は、オリンピックでメダルを獲ることと、子供達にスキーを指導することです。国際大会で選手が活躍し競技を知ってもらい、また多くの子供たちにスキーを普及することがスキー業界のために必要です。それが僕のような年長者の役割だと考えています。メダルという大きな目標のためには、子供達への指導や模範的な選手として行動するなど小さな目標を立てて達成していくことが大切です。新たに支援していただける企業とともに、次のオリンピックでのメダル獲得を目指したいと思っています」
■斯波正樹選手(スノーボードアルペン)
「高校卒業後、スノーボード先進国のカナダに留学し、現地でアルバイトをしながらトレーニングを続けてきました。お金のかからない英語学習法を自分で考案し、選手やコーチ、バイト先でコミュニケーションが取れるよう工夫しました。まずフリーペーパーを2部持ち帰り、1つには訳を書き込んで丸ごと覚え、もう1部の英語だけを読むという方法です。またヒアリングは、ニュース番組をパソコンにダウンロードし、音速を変えられる機能を使って何倍速もの速度で聞いてから速度を戻し確実に聞き取る、という方法です。まずはオリンピックという目標に向かって精進していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします」
■杉本宏樹選手(トライアスロン)
「もともとは競泳をしており、大学卒業後にトライアスロンを始めました。トライアスロンを通じて学んだことは、すべて自分の心次第ということです。トライアスロンは、自然を相手に行う競技ですが、水温が低かったり、道がでこぼこだったりしても、文句を言っても何の役にもたちません。ありのままを受け入れ、それをプラスに考えることが競技のプラスになります。2008年まで実業団に所属していましたが、恵まれた環境で練習出来なくなってからも、それを受け入れて、心を前向きにして練習に取り組むようにしています」
JOCでは今後も、一人でも多くの選手と一社でも多くの企業が、双方にとってプラスになる雇用を実現させられるよう、「アスナビ」による支援を行っていきます。
(写真提供:アフロスポーツ)
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