東京2020大会のレスリング女子フリースタイル57kg級で金メダルを獲得した川井梨紗子選手が6日、記者会見に出席し、メダル獲得から一夜明けた心境を語りました。
■吉田沙保里さんや伊調馨さんは「追いかけても追いつくものではない」
――メダル獲得、リオ大会に次ぐ2連覇から一夜明けての感想をお願いします。
今朝起きてメダルを見て、改めて重たいなと。本当に金メダルをとれて良かったなと思いました。
――レスリング界にとって、川井選手は伊調馨さんや吉田沙保里さんに次ぐ新たなレジェンドと言われてもおかしくないと思います。ご自身としては、その期待に応えてやろうという気持ちか、プレッシャーに思うのかどちらでしょうか?
「自分も」というよりも、沙保里さんや馨さんは、どれだけ追いかけても追いつくものではないと思っていて。なので、「あの人たちのように(頑張ろう)」というよりも、追いかけたい。厚かましいというか申し訳なくなりますが、私は私らしくやっていきたいなと。ただ、偉大な先輩方と同じ時代にレスリングをできたことは、私にとって大きな財産なので、これを私よりも下の世代につなげられたらと思います。
――金メダルを改めて見て「重たいな」とのことですが、どういった重みでしたか?
重量もすごいですし、表彰式でメダルをもらったときにリオからの5年を思い返して、本当にいろんなことがあったなと。その結果が今日ここにつながって良かったなという重みと、5年間のいろんなことが詰まっている重みだなと思いました。
――特に思い出した場面はありましたか?
特にこれというのはないですが、毎年の世界選手権だったり、妹の友香子と一緒に東京オリンピックに出る目標を掲げながらやってきたので、毎年苦しくて毎年大変な思いをして、やっとここまで来たなという思いです。
――表彰式の後、(前日の62kg級で金メダルをとった)妹の友香子選手と話す機会は?
昨日の夜、友香子が私の表彰式が終わるまで待ってくれていて。そのときに2人で金メダルを並べて写真を撮ったりして、「本当良かったね、ずっと言い続けてきた夢が現実になって良かったね」と話していました。
■レスリングは「やればやるほど奥が深く、余計に知りたくなる」
――決勝戦について伺います。対戦相手であるイリーナ・クラチキナ選手(ベラルーシ)のタックルを見事に防いでいましたが、対策や作戦は練っていましたか?
作戦はなくて、ただ自分のレスリングスタイルを6分間貫き通そうという気持ちで挑みました。すると、相手のクラチキナ選手も「絶対勝つんだ」という気持ちを、組んだ瞬間に力も圧も感じました。私ももちろん負けたくなかったので、気持ちのぶつかり合いというか、6分間ずっとそれを感じていて。初めて戦った選手ではあるのですが、決勝戦の相手として、強くてすばらしい選手と試合できたと思います。
――試合直前に客席にいた友香子選手と目が合って頷いていたように見えましたが、その時はどんな気持ちでしたか?
無観客ではあったんですけど、近くに友香子がいるのを確認して、ちゃんと友香子も「見ているよ」という合図だと思ったので、私も頷いて「しっかりやってくる」と思っていました。
――地元の石川県津幡町へのメッセージをお願いします。
地元の方々にはいつも温かいご声援をいただいて、帰るたびに「ここの出身で良かったな」と思うぐらい、いい人たちで溢れているので、いい報告ができてうれしく思います。応援ありがとうございました。
――地元のベルギーワッフル屋さんだったり、お母様の手作りミルクティーは、川井選手にどんな力を与えてくれましたか?
もちろんワッフルも持ってきて食べました。また、出身の小学校の子たちから手書きの国旗をいただいたりとか、直接は見てもらえなかったですが、そういった形でたくさんの応援が届いたので、有り難いという気持ちです。
――今回のオリンピックは1年延期や無観客で大変だったと思いますが、姉妹だからこそ頑張れたことは?
オリンピックが延期と決まった時には本当にこのまま開催できるのか、自分が1年先まで頑張り続けられるのか不安になりました。そのたびに私一人だとずっと落ち込んだままかもしれなかったですけど、友香子が励ましてくれたり、頑張っている姿を見せてくれて、自然と自分もやらなきゃという状況になりました。友香子がいてくれたから、ここまでやってこられたと思います。
――夏休み中の子どもたちも川井選手の金メダルの瞬間を見てくれていたと思います。子どもたちへのエールを送っていただきたいです。
今はこの歳になって本気でオリンピックを目指そうと思ってやっていると、レスリングの面白さは最後の1秒まで勝敗がひっくり返ることに魅力を感じます。けれど、小さい時はオリンピックを目指していたわけでもなく、ただひたすら小さな大会でもただただ勝ちたい思いでやっていました。
小さなことの積み重ねがだんだん大きな夢に膨らんで広がっていくと思うので、レスリングに限らず他のスポーツでも言えると思いますが、そのきっかけの一つがレスリング、私の試合をテレビで見てくれたからだとうれしいです。吉田沙保里さんや伊調馨さんを(2004年の)アテネオリンピックで見て「私もいつかは」と思ったように、そう思ってくれる子どもたちがいてくれたら。
――レスリングの魅力をひと言で教えてください。
やればやるほど奥が深く、レスリングって一生分からないなと思ってやっているので、余計に知りたくなる。それが魅力だと思います。
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