リオデジャネイロオリンピックの大会10日目。水球男子の日本代表「ポセインドンジャパン」が予選リーグ最終戦となるセルビア戦に臨みましたが、8対12で惜敗。32年ぶりのオリンピック挑戦は通算5戦5敗の予選リーグ敗退で幕を閉じました。
■「僕たちのやっている水球は間違いじゃない」
「勝ちにこだわっていた分、1勝もできなかったというのは悔しい」と、心境を語った志水祐介主将。ただ、この日のセルビア戦では、第1ピリオドで日本独特の超攻撃型守備戦術である「パスラインディフェンス」からのカウンター速攻が面白いように決まり、5-2でリード。昨年の世界チャンピオンで、ワールドリーグでは4連覇中の世界最強国を間違いなく慌てさせました。その部分に関しては選手自身も手応えをつかんだようです。
「僕たちのやっている水球は間違いじゃないと思いますし、実際に僕たちのやってきた水球は世界にこれだけ通用できるというのを証明できた」(志水選手)
「力の差はほとんどないように感じます。僕らは今までオリンピックに出られなかったことを考えると、あの時に感じたほどの力の差はないと感じますね」(棚村克行選手)
もちろん、第2ピリオドで追いつかれ、第3ピリオド以降はジリジリと差を広げられていったように、1対1の個の力や、体力や泳力、そしてそもそもの地力の隔たりはまだ厳然としてあるのでしょう。そうした課題があらためて見つかった32年ぶりのオリンピックではありましたが、それ以上に収穫がありました。志水選手は言います。
「ギリシャ、オーストラリア、セルビア相手にこれだけ互角の試合ができたのは、これまでの歴史上でなかったと思います。今回のオリンピックというのは僕たちにとってはかなり大きな収穫もありましたし、逆に僕らはこれがスタートラインだと思います」
■金メダルを取る力を蓄えないと、オリンピックでは1勝できない
そのスタートラインから見据える先にあるのは、もちろん4年後の東京オリンピックです。この舞台で勝つためにはどうしたらいいのか――大本洋嗣監督自身も初めてのオリンピックを通して、次のようなことを学んだと話しました。
「よく“まずは1勝”と言うんですけど、オリンピックというのは1勝する力のあるチームは金メダル取るチャンスがあるんだな、ということが分かりました。要するに金メダルを取る力を蓄えないと、オリンピックで1勝できないんだなと。ベスト8を目指していると言った段階でそもそも目標設定を間違っていたなと気がつきました」
復活を遂げた体操競技や柔道の例を出し、「これらの競技もオリンピックでの敗戦からオリンピックで勝つことを学んだのだと思う」とも話した指揮官。学ぶことが多すぎます、と苦笑いを浮かべましたが、一転して表情を引き締めながらあらためて「東京オリンピックでの目標は金メダル」と宣言。そして「オリンピックで経験したものを次につなげていける強化プランというかシステムを立てて、僕はゴールドプランを作ると言ってるんですけど、いろんなことを箇条書きしている最中です」と、すでに4年後に向けて走り出していることを明かしました。
■「日本の水球はスピーディーで面白い」
「日本の今の水球をこのまま継続してほしい。スピーディーで見ていて面白い」
大本監督によれば、国際水泳連盟の水球部門のチェアマンが直接そう言ってくれたそうです。「リップサービスだと思いますけどね」と監督は言いますが、水球では常識破りとされる、相手のパスコースを防いで積極的にインターセプトを狙っていく失点覚悟の超攻撃守備陣形「パスラインディフェンス」は、確かにスリリングで見ている人たちを興奮させます。世界の水球界に大きな驚きを与えたパスラインディフェンスの完成度、成熟度をこれからの4年でさらに上げ、東京オリンピックでは1勝、そしてメダルに絡む躍進でもっと世界を驚かせてほしいと思います。
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