■棟朝選手が4位、伊藤選手が6位入賞
リオデジャネイロオリンピックの大会9日目。トランポリンの男子決勝が行われ、棟朝銀河選手が59.535点で4位、伊藤正樹選手が58.800点で6位に入賞しました。
「4年前よりは悔しくはないのですが、自分の力が出せなくて、あらためてオリンピックの難しさを感じた大会でしたね」
伊藤選手の目には4年前と同じく涙が浮かんでいました。前回ロンドン大会でもメダル候補と言われた伊藤選手でしたが、結果は0.424点及ばず惜しくも4位。2016年は27歳になるという年齢からも、リオでは必ずメダル、それも金メダルをと、強い決意で過ごした4年間でした。そして調子自体も、昨年の世界選手権では自己ベストを更新する61.445点で4位に入るなど上向き。このリオはまさにピークの状態で迎えられるはずでした。
■「周りは誰も諦めていなかった」
ところが、ちょうど1カ月前の試技会での演技中に腰を痛めるというアクシデントが伊藤選手を襲いました。
「1カ月で治るような痛みではないなと、自分の体だけにすごく分かっていました」と、当時を振り返った伊藤選手。中田大輔コーチによれば「3日間くらい音信不通になった」ほどのショックを受け、伊藤選手自身が代表交代も直訴したと言います。しかし、中田コーチはすぐにトレーナーらと一致団結し、伊藤選手が復帰するためのチームを結成。「絶対に伊藤をここに立たせてやるぞと決めていました。だから、彼の知らないところでメニューを組んでいた」と、リオで跳ぶための道筋を綿密に立てたとのことです。そんな周囲のサポートと熱意に「周りが誰も諦めていなかったのに、自分だけが諦めていた。本当に周りがいい意味で全く諦めてくれなかったから、もう1回ここに来て戦うことができました」(伊藤選手)。
まともに練習ができたのはこの2週間ほど。それでも予選・決勝と合わせて3度の演技、10本ずつを全て跳びきり6位入賞。伊藤選手は「腰痛は何の影響もない演技でした」と何も言い訳せずに、ただ自分の演技がうまくできなかったと唇を噛みましたが、中田コーチは「ここで跳べたのは奇跡的。本当は跳べないレベルだった思います」と、その奮闘を絶賛しました。
■「4年後は確実にメダルに届くところにいる」
この伊藤選手の頑張りに触発されたのか、初めてのオリンピックで躍進したのが22歳の棟朝選手です。ロンドン大会銀メダリストのウシャコフ選手を0.01点上回る4位。それでも「嬉しいか嬉しくないかで聞かれたら、全く嬉しくないですね。自分の力を出し切っての4位というわけでもなく、自分としては演技にだいぶ悔いが残る形で決勝を終えてしまいました」と悔しさをにじませ、また、「4年後の東京オリンピックを見据えたときに、確実にメダルに届くところにいるなというのは自分自身で確認できたというか、確信できた」と堂々語る姿は、次世代のトランポリン界のエースとして、なんとも頼もしく見えます。
北京からこのリオまで、これでオリンピックの男子トランポリンは3大会連続で4位。メダルまで本当にあと一歩のところまで来ています。この一歩をなかなか踏み越えられないでいますが、山本宜史監督はこの一歩の差は「絶対的な体力」にあると捉え、同じ意見の中田コーチも伊藤選手、棟朝選手を東京オリンピックで悲願の日本トランポリン界初のオリンピックメダリストにするべく「4年間しごきにしごいていこうと思います」と、4年後を見据えていました。山本監督はきっぱりと言いました。「次に向かって、今日からがスタートです」。
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