■「やっと努力が報われた」カヌー上で涙
リオデジャネイロオリンピックの大会5日目、カヌー・スラロームの男子カナディアンシングル決勝が行われ、羽根田卓也選手が97.44点で見事に銅メダルを獲得しました。同競技におけるメダル獲得は日本人初、そしてアジア人初の快挙となります。
「18歳からスロバキアで練習して、もう10年経ちますけど、やっとその努力が報われて、みんなの気持ちに応えることができたという思いが、掲示板に『3』が表示されたときにこみ上げてきて、涙になってしまいました」
10人で争われる決勝戦。準決勝を6位で通過した羽根田選手は、決勝を5番目でスタート。「全体を通して自分の武器である技術、身のこなしを生かすことができた」と、大きなミスもなく得点は97.44点。そして9人を終えた時点で、羽根田選手は3位でした。最後の一人は準決勝でダントツのタイムをマークしたドイツ選手。ところが、メダルがかかったレースで力が入りすぎたのか、ドイツ選手は準決勝ほどスムーズな漕ぎができず、ペナルティも1つ重なって97.90点。この瞬間、羽根田選手の銅メダルが決まり、カヌー上で人目をはばからず涙を流したのです。
■「自分の競技人生の中で一番高いパフォーマンス」
羽根田選手は高校卒業後すぐに、カヌーの強豪国であるスロバキアへと渡り単身武者修行。オリンピック初出場となった08年北京大会は予選敗退に終わりましたが、続く12年ロンドン大会では日本人初の入賞となる7位。そして、昨年のリオデジャネイロオリンピックテスト大会で2位に入るなど、世界との差を徐々に縮めていました。
「日本人はフィジカルで絶対に劣る。ですから短所を補うとともに、長所である技術力を磨いてきました」
8日の予選は2本を漕いで全体5位通過。そして入賞はもちろん、メダルの期待もかかったこの日の準決勝、決勝で羽根田選手は最高の漕ぎができたと振り返ります。
「予選、決勝と自分を褒めてあげたいぐらい4本全て自分の漕ぎができた大会でした。とにかく1本1本全身全霊で自分のできることを、1本ずつ1位を目指すつもりでやってきて、それが4本ともコンスタントに出たということは今までの練習の賜物の何物でもないと思います。本当に自分の競技人生の中で一番高いパフォーマンスが出たんじゃないかなと思います」
■「東京オリンピックまで現役。目標は金メダル」
カヌーは伝統的にヨーロッパが強く、日本人はおろかアジア全体としてもこれまでオリンピックでメダルを取ったことがありません。日本ではマイナースポーツであるため、羽根田選手のような第一人者でも「資金面で苦しんでいる」と打ち明けます。しかし今大会、羽根田選手が日本のカヌー界に大きな歴史を残したことで、2020年東京オリンピックに向けても、カヌーへの注目は格段に高まっていくことでしょう。ちょうどこの日、鈴木大地スポーツ庁長官も応援に駆けつけており、目に涙をためながらこの快挙を祝福していました。羽根田選手も語っていましたが、カヌー界の風向きが変わる本当に大きな銅メダルとなりそうです。
「東京オリンピックまで現役を続けますし、目標は金メダル。今回のメダルで少しはカヌーの認知度が上がるとは思いますが、そんなに劇的には変わらないと思います。ですから、このメダルをきっかけに、少しでも未来が変わるような成績を今後も出していかないといけないと思っています」
日本人初、アジア人初のメダル獲得という1つの大きな目標を達成した羽根田選手。ですが、ここがゴールではありません。カヌー界にさらに大きな光を当てるため、羽根田選手の戦いは東京へと続きます。
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