北京2022冬季大会のカーリング女子で銀メダルを獲得した藤澤五月選手、吉田知那美選手、鈴木夕湖選手、吉田夕梨花選手、石崎琴美選手が20日、記者会見に出席し、メダル獲得の心境を語りました。
■藤澤選手「嬉しさ半分、悔しさ半分」
――今の気持ちを聞かせてください。
石崎選手 今日の決勝戦に関してはなかなか自分たちの良い形にならず難しいゲームになってしまったのですが、この大会を通して4人が踏ん張ってくれて予選を通過して、決勝まで来るという本当にすごいことをしてくれたなと思っています。また、選手、コーチ、トレーナー、チームを支えてくださる皆さんとともに、コロナにかかることもなく、けがをすることもなく来られて本当に良かったと思っています。
鈴木選手 試合が終わったあとは納得のいく試合ができなくて、負けたことよりもそっちの方が悔しい思いが強かったですが、4年間やってきて、北京に来たチーム8人、ここに来てない(本橋)麻里ちゃん、トレーナーさんなど皆さんに支えられてここまで来られたので、帰ったら皆に感謝の気持ちと銀メダルを見せにいきたいです。
藤澤選手 今の気持ちは嬉しさ半分、悔しさ半分です。
吉田知選手 すべての試合を終えて、本当によく戦ったなといまは思います。北京オリンピックはもう二度となく、この一瞬だけの時間で、このオリンピックを思い出すときに嬉しかった感情を思い出したいなと思っています。最後の試合はすごく悔しかったですが、これも神様がくれた成長するチャンスと思うしか前に進む方法がないと思っていますので、このオリンピックはよく頑張ったと自分たちを褒めたいなと思っています。
吉田夕選手 試合が終わった直後は自分たちのベストパフォーマンスではなかった分、もっとできると分かっているからこそ悔しさがたくさんありましたが、コーチ陣やスタッフがすごく笑っていたので、負けてもらうメダルではありましたが、人をハッピーにさせる銀メダルもあるんだなと実感して、少しずつ嬉しくなってきました。
――吉田知那美選手に質問です。試合後の片付けの際に数秒間リンクを見つめていましたが、どういった思いで見つめていましたか?
吉田知選手 これで最後と分かって今日リンクに来たんですけど、持っているものを全部出してあのリンクに置いていきたかったです。他の大会もそうですが、すべてが自分の思った通りになるわけではないですし、カーリングは絶対に勝ちか負けかがつくので。正直、もう1回やりたいなと思いました。
――大会期間中または加入してから、石崎選手からかけられた言葉で思い出に残る言葉はありますか?
鈴木選手 琴美ちゃんはすごくたくさんの言葉を掛けてくれたんですけど、100個くらいあって言い切れないです(笑)。
藤澤選手 毎試合かけてくれる言葉ではっとすることがあるんですけど、どちらかというと琴美ちゃんと目が合った瞬間の安心感にいつも助けられていて、言葉以上に存在に助けられています。琴美ちゃん、いつもありがとう(笑)
――藤澤選手に質問です。ご自身の手にメッセージを書かれていますが、今日の試合ではどのようなメッセージを書きましたか?
藤澤選手 今日の試合ではJD(ジェームス・ダグラス・リンド)コーチに書いてもらったのですが、今日は前半から相手に点を取られて苦しい展開になって、少し自信を失いそうになったんですが、JDコーチからの「Trust Yourself」という言葉が書いてありました。どういう結果になろうとも、どういうショットになろうとも自分のことをしっかり信じて投げ切ろうと思って試合に入りました。
――藤澤選手に質問です。4年間を振り返ってみて、重圧をどう感じていますか? また、前回出場していた本橋選手の存在についてはどう感じていますか?
藤澤選手 こうやってメダリストとしてここに立たせてもらっていますが、オリンピックに出られるか分からない状況で、まず日本代表になること自体が私たちにとって大きな壁でした。そのくらい日本のレベルが上がったということも誇りではあるのですが、自分たちが勝ちたいという思いがあったなかで、日本代表を競った北海道銀行さんだとか、日本の色々なチームと試合をして成長させてもらって、たくさんの負けがあったからこそ最高の舞台で戦ってメダリストになることができました。まずは日本のカーラーの皆さんにすごく感謝したいですし、今回のメダルは私たちだけのものではなくて、支えてくれた、成長させてくれたみんなでとったメダルだと思います。麻里ちゃんは平昌オリンピックが終わってからチーム全体を支えるボスとして役割を変えてくれていますが、今もチームの一員ということは忘れずに過ごしてきてくれて、私たちもそう思っています。特に9月の代表決定戦の時には、久しぶりにチームの一員として立ってくれて、改めて麻里ちゃんの偉大さ、思いを感じた大会でした。今日の試合前にも話すことができて「思いっきりやってきて」と言ってもらいました。結果はこういう形になってしまいましたが、麻里ちゃんの思いも全員で背負って戦うことができたかなと思います。
――吉田夕梨花選手に質問です。先ほどのミックスゾーンで藤澤選手が吉田夕梨花選手の「最後まで頑張ろう」という言葉に励まされたと話していましたが、試合中にどういった思いで声をかけましたか?
吉田夕選手 相手の調子も良く、点数も離れてきてというところで、いつでも投げやりにはできる試合ではありましたが、1人の選手として誰しもが立てる場所じゃない、そして4年前にどうしても乗りたかった場所でしたので一投も無駄にしたくなかったですし、最後の最後の一投までは頑張ろうと思いました。何でも掃く、することはする、コミュニケーションも取るだけ取ってみる。「大丈夫だよ」というのは私自身にもかけた言葉でもあるんですけど、それを勝手にさっちゃん(藤澤選手)にぶつけました(笑)。
――藤澤選手に質問です。予選リーグの時は試合中に涙も見えていましたが、今日は最後まで笑顔がありました。感情のコントロールについてはどのように考えていますでしょうか?
藤澤選手 試合中に泣くことってあまりないのですが、予選のスイス戦で泣いて、あの時はショットが決まらなくて、カーリングの難しさを感じた試合でした。でも私が泣いたとしても、どんなに下手くそなショットをしてもスイーパーが調整してくれて、ちな(吉田知選手)がラインコールをしてくれてショットを決めてくれる。それがチームスポーツのありがたさでもあるので、それを感じた試合でもありました。今日の試合は4年前に決勝の舞台に立ちたいねと言って立てた試合だったので、泣きたい気持ちはあったんですけど、しっかりと最後までオリンピックを感じたいなと思って戦いました。
――鈴木選手に質問です。今日の試合後は気丈にふるまっていたように見えましたが、その時の思いは?
鈴木選手 今日の試合は不完全燃焼というか、やりたいことをやり切れなくて、もっとやり切っての負けだったら泣けたかもしれないですけど。実力を出せずに負けてしまったので、試合に対して不完全燃焼だったなという顔でした(笑)。私のところでもっとチャンスも作れましたし、スイープでも小さいミスをしてしまって、自分の未熟さをまた改めて感じた試合でした。
■吉田知那美選手「まず一番に氷の上で楽しむということを忘れてはいけない」
――藤澤選手に質問です。イブ・ミュアヘッド選手から「日本は試合中に笑顔もあってすごく大好きなチーム」という言葉もありましたが、決勝で戦ったイギリスチームの印象を教えてください。
藤澤選手 個人的に初めてジュニアの世界選手権に出たときにスコットランド代表で出ていたのがチーム・ミュアヘッドで、その次の年に出たときもチーム・ミュアヘッドが優勝して、私が出たジュニアの世界選手権では2回とも優勝していてすごく憧れの選手でした。それからこうやって同じ立場で戦えるくらいまでレベルが上がって、4年前の平昌オリンピックでは勝つことができた。そしてお互いに平昌オリンピックから環境が似た立場で4年間を過ごしてきたと思っていて、12月の最終予選でもお互い勝ち上がることができて、そしてこの決勝の舞台に立つことができた。すごく思い入れのあるチームと最後に戦うことができてすごく嬉しかったです。そんななかで、決勝で自分たちのやりたい試合ができなかったのはすごく悔しい気持ちもありますが、私たちが大好きなチームでもあるので、お互いに認め合ったチームと戦えて、チーム・ミュアヘッドにも感謝したいです。
――決勝の舞台を味わったことは今後のカーリング人生にどういった意味を与えると思いますか?
鈴木選手 最初に世界選手権に出たときも銀メダルですごく悔しくて、そのあともグランドスラムも出られるようになりましたが優勝したことはなくて、改めてそういった世界一を決める大会で優勝したいなと強く思うようになりました。
藤澤選手 もし私が自分にいま声をかけるとしたら、絶対いつかこの舞台に戻ってこいって言うと思います。
吉田知選手 オリンピックに戻ってきて思うのは、グランドスラムに出ているようなトップチームばかりで氷の上では戦っているのですが、先ほど銀メダルが決まったときにチーム・スウェーデンが「いまは悔しいと思うけど、あなたたちは素晴らしいから大丈夫」と声をかけてくれたり、プレーオフで喜んでいいのか複雑な心境のときにカナダのジェニファー・ジョーンズ選手から「あなたたちなら大丈夫。ちゃんと戦える。応援しているから頑張るんだよ」と声をかけてくれました。私たちはカーリング選手として戦っているというよりは、パフォーマンスし合っている、本当にこの競技は素晴らしいな、大好きだなと再確認できるオリンピックになりました。たぶん私たちの強さは、今感じている気持ちがみんな一緒で、誰一人満足はしていないので、私たちは今日ここから始まるんじゃないかなと思います。
吉田夕選手 決勝が他の試合と違うところは、観客席とか周りの人たちが私たちのシートだけを見ていて、そこでかかるプレッシャーや緊張感、周りも息が詰まるほどの空気感が、意外と私は好きなんだなと思いました。誰しもが体験できない、2チームしか上がれない特別な空間だったので、ファイナルって心地良いな、やっていて幸せを感じる場所でしたし、自分やチームにとっても特別なファイナルだったと思います。
――吉田知那美選手に質問です。まだコロナ禍のなかで、チームのパフォーマンスや笑顔が多くの方を励まし、楽しませていることをどのように思っていますか?
吉田知選手 このオリンピックに入る前に麻里ちゃんと電話したとき、「誰もメダルが欲しいなんて応援している人はいない、みんなロコ・ソラーレのカーリングを見たい」と声をかけてくれてオリンピックに来ました。またジェニファー・ジョーンズ選手の話になりますが、「あなたたちのカーリングが好き」といつも言ってくれます。もちろん勝つためにいろいろな努力をしていますが、何で私たちがカーリングをやっているのかという根底のところ、この競技が好きで、このチームが好きだからということは絶対に忘れてはいけなくて、まず一番に私たちが氷の上で楽しむということを絶対に忘れてはいけないと、このオリンピックを通して再確認しました。私たちがどう映っているのかはプレーしているので分からないですが、苦しい舞台を苦しい顔ですることはみんなできると思います。でも、楽しむのは覚悟がいるので、それだけはこのチームでカーリングをし続ける上で大切にしていきたいなと思っています。
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