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アスリートのためのカンタン栄養学

我々が、カラダの外から物質を取り入れ、成長や活動に役立たせることを栄養という。 栄養になるのは何かといえば、普通は食品や飲料だと思うだろうが、点滴やサプリメントも栄養なのである。でも、点滴ですべての栄養を摂ってスポーツするなんてできないし、やっぱり食べたり飲んだりすることは楽しい。それに、噛むことでアゴや歯が発達し、味覚も発達するし、胃腸での消化によって内臓も鍛えられる。つまり、食べることはカラダを発達させ、最近では脳も発達させるといわれているんだ。 そこで、この連載では「アスリートがしっかり食べること」の大切さを見直していこうと思う。

第2回 カラダづくりのための栄養

前回は、食事の基本的考え方について紹介した。バランスの良い食事の正体は、「栄養フルコース型」の食事であり、主食・おかず・野菜・果物・乳製品から構成される。そう言っていたら、本年7月に農林水産省と厚生労働省から、食事バランスガイドが発表された。その内容は、主食・主菜(おかず)・副菜(野菜)・果物・乳製品から構成されているので、まったく同じ。筆者らが「栄養フルコース型」を編み出して苦節15年。「行政もやっと追いついて来たか」と言ったら、生意気だと怒られるだろうか。とにかく、「栄養フルコース型」は、国も認めた食事法なのである。

カラダづくりの基本はタンパク質

一般には、カラダづくりというと、まずは筋肉がイメージされる。テレビを観ていると、プロ野球のドラフトで指名された高校生の挨拶によくあるのが、「まずはプロで通用するカラダをつくりたいと思います」というもの。このプロで通用するカラダというのは、ウエイトトレーニングで筋肉をつけることのように捉えられがちだが、実際はさまざまな意味を持っている。

もちろん筋肉もしっかりつけなければならないが、競技特性に合ったつけ方をしなければならない。そして、骨も血液も内臓も全部強くして、パワー・スピード・スタミナのすべてを向上させる必要がある。

その時、栄養的には何が大事かというと、これは第一にタンパク質ということになる。タンパク質という言葉は、漢字で書くと「蛋白質」であるが、これは中国語で「卵の白身に多い物質」という意味だ。蛋は皮蛋(ぴーたん)の蛋で、卵の意味。タンパク質は食品を表す言葉なのだ。

一方、英語ではタンパク質をプロテインと言う。これは、ギリシャ語のプロテイオス(「最も重要なもの、第一義的なもの」という意味)が語源となっている。古代ギリシャの人たちは、タンパク質が大事だということを知っていたわけだ。

科学が発達していたわけではないのに、すごいことだ。現代において、「生物になくてはならないものは何ですか」という質問をすると、子どもでも「遺伝子だよ。DNAとかRNA」と答えるだろうけど、実はもっとも小さな生命体といわれる『プリオン』に遺伝子は無く、あるのはタンパク質。このことからもタンパク質はとても大事ということがわかる。ちなみにプリオンは、狂牛病の原因生命体として有名になった。

骨格筋の固形分の80%はタンパク質

まず、骨格筋の成分を見てみよう。筋肉の75%は水分であり、20%がタンパク質である。こう言うと少ないようだが、25%の固形分のうちの20%だから、固形分のうちでは20/25で80%がタンパク質である。つまり、筋肉の材料は、タンパク質と言っても過言ではないのだ。

では、アスリートがどのくらいの量のタンパク質を摂取すれば良いか。アメリカの学者レモン(すっぱそうな名前だがボディビルダーである)は、瞬発系のアスリートの場合で一般人のタンパク質推奨量の約2倍の摂取を、持久系のアスリートで約1.6倍の摂取を勧めている。2倍の量ならば、一般の人の食事量を2倍にすればクリアできるが、なかなかその量を食べることは難しい。

でも、必要だからしょうがない。第1にタンパク質の豊富な食品を選んで食べること、第2に脂肪に注意しなければならない人は、食材や調理法や調味にも気を使うこと、第3にタンパク質の補助食品を活用することも視野に入れておこう。

第1のタンパク質の豊富な食材は、おかず(主菜)と乳製品である。肉・魚・卵・大豆製品(豆腐、納豆)、そして、牛乳・ヨーグルト・チーズをメニューにしっかり取り入れよう。
第2は、体脂肪が気になる人、あるいは筋トレ中心でエネルギー消費量があまり高くない人などの場合である。

食材は、例えば牛肉を食べる場合でも、霜降り肉やサーロインではなく、赤身のヒレ肉を選ぶ(図1)。豚肉もロースよりヒレ。鶏肉ならモモよりムネ、ササミ。まぐろはトロでなく赤身という具合だ。調理法は、揚げ物は避け、それよりは炒め物、さらに生や煮物、焼き物、蒸し物にすると良い。

図1 低脂肪にするテクニック

調味料も、カロリーの低いものを選ぶようにする。マヨネーズやドレッシングはハーフカロリー、ノンカロリーにする。一般に洋食はカロリーが高くなるといわれるが、たとえば魚を食べる時、ごはんのおかずなら、刺身もOK、煮物、焼き物、蒸し物もOKである。でもパンでは刺身はいけない。

カツかフライしか合わない。しかもマヨネーズやタルタルソースが欲しくなる。パン食はどうしてもコッテリしてしまうのだ。それで、脂肪を気にする人には和食が勧められることが多い。