MENU ─ オリンピックを知る

アスリートメッセージ

スケート・スピードスケート 岡崎朋美

自分の可能性を追い求めて

文・折山淑美


photo
2009年12月に開催された日本代表選手選考競技会、女子500mで2位に入った
写真提供:アフロスポーツ

12月28日のスピードスケート日本代表選手選考競技会初日。女子500mの1回目のレースで第9組目に登場した岡崎朋美は、100m通過で同走の新谷志保美に0秒05遅れた。

「先行されても後半で巻き返せるから大丈夫だというのはあったけど、自分の100mまでの感触も良くなかったから、ちょっと焦ってしまってスケーティングがバタバタしてしまいました」

こう言う岡崎は最後でやっと新谷に追いつくと、ゴール直前にスッとスケートの先端を前に突き出した。

最初は38秒90の同着と表示された記録は、その後38秒89に訂正されて岡崎が0秒01で先着という結果に。それを確認すると微かに笑みを浮かべた。

女子500mのバンクーバー冬季オリンピック代表選手には、ワールドカップ前半戦を終えた時点で1000mを合わせて3度表彰台へ上がっていた小平奈緒と、ワールドカップランキング8位の吉井小百合がほぼ確実なものとしていた。残る枠は2つ。岡崎はそれを、ワールドカップでともに戦ってきた新谷、大菅小百合と争う形になっていた。そのライバルのひとりである新谷に、0秒01だけでも先着することは重要なことだった。勝負どころを知るベテランの、勝利への執念がもぎ取った100分の1秒差だった。

photo
オリンピック初出場の1994年リレハンメル冬季大会
写真提供:フォート・キシモト

1回目で2位につけた岡崎は、2回目のレースでは同走の吉井に0秒04差をつける38秒73で先着。2本とも38秒台中盤で滑った小平には遅れを取ったが、2本の合計では吉井を抑えての2位。38歳の彼女は、実力で5回目のオリンピック代表の座をもぎ取ったのだ。

初出場だった1994年リレハンメル冬季大会から16年間に渡って経験してきたオリンピックという舞台を、彼女はこう語る。

「世界スプリントなどでは強豪選手が欠場することもあるけど、4年に一度のオリンピックを欠場する人はまずいない。皆がそこへ1点集中してくるんです。だからオリンピックこそが、本当の世界との差を自分で感じられる所で、自分が4年間やってきたことを自信にすることができる所だと思うんです。細かいことを言えば1年1年も大事なんですけど、何かをやろうとしても1年ですぐに良くなるということはないので。そういう意味でも4年間というのはちょうどいいくらいの期間だし、自分の成長をハッキリ見ることができると思います」

そんな思いを持った選手たちが一堂に会して戦う大会だからこそ、競技が終わった後も素直な気持ちで互いを讃い合えるのだと。

アスリートメッセージ一覧へ