アスリートメッセージ
成長したのはもちろん精神面だけではない。ワインオープナーの螺旋を想像させることからコークスクリューとも呼ばれ、体の軸を斜めにして横に2回転する3Dエア『7O(セブン・オー)』といった大技にも挑戦し、2005年2月26日にノルウェーのボスで行われたワールドカップ決勝や同年3月23日〜27日に白馬で行われた全日本選手権で見事にこの技を決め、優勝している。
「3Dエアの技を完成させるために、昨年の5月からトランポリンを使った練習を行い、7月には地上での練習で完成度を高めていきました。もう少し足りないところはあるけれど、跳び出す角度さえ合っていれば、失敗する心配はないところまで完成しています。トリノオリンピックではスキーの技術面はあまり考えずに楽しもうと思っています。スキーで滑るということ自体に自信がないということはめったにないのです。
モーグルは転んでも痛くても、今でもとっても楽しいです。こんなに楽しい遊びはないとずっと思っていましたから、競技が大変でもスキーをやめたいと思ったことはありません」
と自信をのぞかせた。
(写真提供:フォート・キシモト)
いよいよ目の前に近づいてきたトリノオリンピック。これまでに3度ほどトリノに行ったという上村選手だが、彼女の目にトリノという町はどう写っているのだろうか。
「実は自分たちがオリンピックで滑るコースはトリノから車で約1時間ぐらい離れたところにあるため、市内の近くまでしか行ったことがないのですが、ご飯がおいしいという印象です。もともとイタリアンが好きですし、食で困ることはないでしょう(笑)」
上村選手自らが近況などをつづるブログの名前も『Road to Torino』。
「応援してくれている人に向け、自分の近況や心境も書け、しかもみんなが書き込んでくれたコメントも読める。応援してくれている人たちの声が聞けるのがいいんですよ」
とイキイキとした表情で上村選手は語った。
オリンピックは『人生の華』だという上村選手。
「自分が好きでやってきたことで日本代表に選ばれて、ラッキーな人生だと思います。長野オリンピックに出場したときは、メディアで全国的に取り上げてもらい、いろんな人から応援してもらえるようになり、幸せに思うと同時に“将来、どうなるんだろう”と不安になった時期もありました。でも今は応援してくれている人や自分を支えてくれている人に感謝したいです。
スキーにモーグルという競技があり、それがオリンピックの種目で、しかも続けられる環境でよかったな、とも思います。ただ地球温暖化で雪が少なくなってきているのは寂しい。今後、雪がなくなり自分たちのやってきたことが歴史上のものとして語られてしまうのは嫌です。今は環境のためにごみの分別ぐらいしかできていませんが、誰もができることは私も実行しているつもりです」
(写真提供:フォート・キシモト)
泰然とした風格さえ備え、強い芯を持つ印象の上村選手。トリノオリンピックに向けての意気込みを力強く語ってくれた。
「トリノオリンピックでは、応援してくれた人たちが“この子を応援してよかったな”と幸せな気持ちになってもらえるように、いい滑りをしたいと思います。将来、モーグルができなくなってもまた何かやりたいことが見つかればいいし、仮になかったとしても、オリンピックの出られることで、自分の人生は最高だったと思えるでしょう」
1979年12月9日 兵庫県伊丹市生まれ。156cm、48kg。
1998年長野オリンピック冬季大会7位、2002年ソルトレークシティーオリンピック冬季大会6位、2005年ワールドカップ・フリースタイルモーグル・ボス大会(ノルウェー)優勝、2005年フリースタイル世界選手権大会デュアルモーグル3位。
トリノオリンピック冬季大会内定選手。北野建設スキー部所属。