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2024.10.08 Paris2024 Medalists’ Voices

アニメの主人公になりたい ー 幼なじみとの夢をともにかなえ、亡き父に捧げる金メダル(レスリング・清岡幸大郎)

レスリング男子フリースタイル65kg級金メダリストの清岡光大郎選手(PHOTO:Kazuyuki OGAWA/PHOTO KISHIMOTO)

清岡 幸大郎

パリ2024オリンピックで大活躍を見せたレスリングTEAM JAPAN。中でも、高知県出身の幼なじみとして切磋琢磨してきた女子フリースタイル57kg級櫻井つぐみ選手とともに金メダルを手にしたのが、男子フリースタイル65kg級の清岡幸太郎選手だった。

幼なじみと手にした金メダルの喜び

――清岡選手、おめでとうございます。初めてのオリンピック、そして金メダルを獲得された今、どんなお気持ちですか。

 約20年間レスリングを続けてきましたが、ずっと夢見てきたオリンピックという舞台で一番いい色のメダルを自分のものにすることができて素直にうれしいです。自分が優勝したことで、今度は皆さんに夢や元気や勇気を届けることができたのかなと思っています。

――周りの反響も大きいのではないでしょうか。

 普段の大会とは全くレベルが違いますね。本当にたくさんの反響やメッセージをいただいてすごくありがたいです。試合が終わって3日しかたっていないこともあり、なかなか実感がまだ湧いていなくてふわふわした感じなのですが、そのたびにメダルを見て、「あ、本当に夢を達成したんだな」とうれしい気持ちになっています。

――ケガされた目の具合はいかがですか。

 はい。でも結構普段からよく、パンダみたいに腫れてしまうこともあって。誕生日プレゼントでパンダのマグカップをもらうこともあるくらいなので(笑)、いつも通りです。

――それが勲章であり、トレードマークなのかもしれませんね。

 はい、本当にその通りです。

――高知県出身の選手によるオリンピックでの金メダルは92年ぶりとなりました。幼なじみの櫻井つぐみ選手とともに、歴史的快挙を達成することになりましたね。

 そうなんですよ。92年ぶりにつぐみがとりましたが、僕はそこから2日ぶりということになりました(笑)。こうして幼なじみと同じオリンピックで優勝できたことはすごくうれしいですし、高知県がこの二人の金メダルによって、さらに盛り上がってくれたらいいですね。

――二人で漫画『ドラゴンボール』のかめはめ波のポーズなども見せていて、仲の良さを感じました。改めて、櫻井選手の存在はどのようなものなのでしょう。

 ライバルとしての気持ちはずっと抱えて競技生活を送ってきました。これまで彼女の方が良い成績を残すと当然悔しさもすごくあったのですが、今回のオリンピックは「二人で優勝を目指す」といって臨んだので素直にうれしいです。つぐみの方が先に試合が行われるということだったので、「優勝して自分にプレッシャーをかけてくれ」という言葉はずっと掛け続けてきました。二人で優勝することができて、本当にうれしいです。

清岡光大郎選手は幼なじみの櫻井つぐみ選手とともにかめはめ波ポーズを見せて喜びを爆発させた(PHOTO:Enrico Calderoni/AFLO SPORT)

父とともに立った表彰台

――ノーシードからの戦いで、「勝てると思っていたのは俺だけだっただろう」ともおっしゃっていました。反骨精神のようなものを秘めていたのでしょうか。

 僕は基本的に目立ちたがり屋なんです。よく「アニメの主人公になりたい」と言っているのですが、ノーシードで名前も知らない選手が勝ち上がっていくことで、「こいつは誰だ」というように世界をざわつかせ、驚かせることができたと思います。自分自身、攻撃的なレスリングをする方だと自覚しているのですが、実際に試合の中でそれを実現することができて、さらに優勝という結果も残せたこともあって、いろいろな意味で衝撃を残せたのではないかと考えています。

――試合の出番がパリ2024オリンピックの最終日でした。仲間の皆さんがプレッシャーから解放されていく中、最終日までずっと待ち続け、プレッシャーを抱えていたと思います。そのつらさはなかったのでしょうか。

 どちらかといえば、僕はプレッシャーを力に変えられるタイプです。みんながいい波をつくってくれたので、そこは「ありがとうございます」という気持ちでした。ただ、最終日ということもあって、パリでいろいろなことを行うことができなかった寂しさはありましたね。それでも、金メダルがとれたことでチャラかなとは思います。

――2年前、48歳という若さでお父様がお亡くなりになりました。このオリンピックでの戦いを見てほしかったという思いもありますよね。

 父が生きている間に、海外で活躍したり、オリンピックで戦ったりする姿を届けることはできなかったのですが、ずっとそばにいてくれる存在だと感じています。表彰式の時も、表彰台の一番上からの最高の景色を一緒に見られたと思います。それは本当によかったですし、「夢を達成することができたよ」と伝えたいです。

――ありがとうございます。残念ながらお時間がきてしまいました。最後に伝えたいメッセージがあれば教えてください。

 レスリングの競技をやっている選手……、とくに男子選手は話しかけづらくて、怖がられてしまうことが多いのですが、実際は意外とめちゃくちゃ気さくで、面白くて、個性的な人たちがたくさんいます。ぜひ、レスリングをしている選手たちに注目していただきたいですね。レスリングの競技自体もまだまだマイナーです。これから自分たちでももっと発信していきたいと思いますので、皆さんにも興味を持っていただければうれしいです。

――私たちも微力ですが、その思いに応えていければと思います。お忙しい中ありがとうございました。そして、おめでとうございます。

 ありがとうございます。

清岡光大郎選手(PHOTO:Kazuyuki OGAWA/PHOTO KISHIMOTO)

■プロフィール

清岡幸大郎(きよおか・こうたろう)
2001年4月12日生まれ。高知県出身。中学3年の時に全国中学生選手権47㎏級で優勝、高校2年生の時にはインターハイ55㎏級で頂点に立った。大学4年時には、全日本学生選手権男子フリースタイル65㎏級で2連覇を果たす。23年全日本選手権男子フリースタイル65㎏級で優勝。24年パリ2024オリンピックアジア予選男子フリースタイル65㎏級で優勝し、初のオリンピック切符を手にした。同年パリ2024オリンピック男子65㎏級で金メダルを獲得した。三恵海運(株)所属。

注記載
※本インタビューは2024年8月14日に行われたものです。

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