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意味
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「ガラスの天井(glass ceiling:グラス・シーリング)」とは、男性が組織の上層部を支配しているなかで、女性がキャリアアップを目指す際に直面する障壁(バリア)を意味する比喩的表現であり、1980年代に初めて登場した。「天井」とは女性が組織のはしごを上っていくと立ちはだかる上限を意味し、「ガラス」は透明でその先が見えているにもかかわらず、あるとは気づかない巧妙な障壁のことを意味する。
具体的には、働く女性の職場での地位や待遇が、トップにたどり着きそうで着かない現象のことをいう。特に、英語圏で広く使われる概念で、女性がキャリアアップを目指すとき、条件は整っているように見え、トップは見えているものの、その実これを阻む「見えない天井」がある(野崎, 2013)。
他の性差別を見分ける基準は?
ガラスの天井と他の性差別を見分ける基準は、
- ①仕事に関連する雇用者の特徴によって説明され得る性差ではないこと、
- ②組織の下位ではなく、より上位において大きな影響力がある性差であること、
- ③キャリアアップのチャンスに関連した男女不平等であり、高い地位における単なる男女分布を反映したものではないこと、
- ④出世するにつれて増えていく男女不平等のこと、
の4つを挙げることができる(Cotter et al, 2001)。
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解説
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2017年4月にスポーツ庁、日本スポーツ振興センター(JSC)、日本オリンピック委員会(JOC)、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)・日本パラリンピック委員会(JPC)、日本体育協会(現・日本スポーツ協会:JSPO)の5団体がスポーツ界の男女平等を目指す「国際女性スポーツワーキンググループ (IWG)」の国際的な提言「ブライトン・プラス・ヘルシンキ2014宣言」に署名した。この宣言に添付された勧告文には、スポーツ組織における女性役員の割合を「2020年までに40パーセントにする」という目標が掲げられているが、この数値に達している競技団体はほとんどない(スポーツ庁, n.d.)。
2019年9月の時点でJOCの役員には、30名中6名の女性理事(常務理事1名含む)がおり、ようやく20パーセントに達したところである。67の加盟団体で女性理事の割合が年々増加傾向にあるが、15パーセントには達していない(JOC, 2019)。スポーツ組織のトップに女性が就いているケースも稀であることから、日本のスポーツ組織は未だに分厚い「ガラスの天井」が存在していることがよくわかる。
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文献
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Cotter, D. A., Joan, M. H., Seth, O., and Reeve, V. (2001) The Glass Ceiling Effect. Social Force, 80: 655-682.
日本オリンピック委員会(2019)内閣府男女共同参画局「女性の政策・方針決定参画状況調べ-本会及び本会加盟団体役員男女比-」/平成26年〜令和元年度推移
野崎与志子(2013)ジェンダー・ダイナミクスとアメリカ社会の変化:女性の労働参加とグラス・シーリング. アジア太平洋研究(38): 39-51.