日本オリンピック委員会(JOC)は2月22日、「平成27年度総務委員会フォーラム」を味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。このフォーラムは、昨年度までそれぞれの専門部会で開催されていた「JOC女性スポーツフォーラム」「JOCスポーツと環境担当者会議」「JOCアントラージュフォーラム」の3つを合同で実施したもので、今年度はJOC、加盟競技団体(NF)の役職員ら56団体125名が参加しました。
開会にあたり平岡英介JOC専務理事からあいさつがあり、「スポーツは社会の中で大きな存在となっています。国際オリンピック委員会(IOC)ではアジェンダ2020でそれに伴う改革をしていますが、JOCとしてもスポーツの価値を共有し、社会に発信していかなければなりません。全員が強固な連携のもと議論を深めて同じ方向性に進んでいかなければなりません。みなさまにとっても有意義な議論、そして勉強になることを願っています」と話しました。
午前中に行われたのは女性スポーツ専門部会のパート。スポーツ庁の先卓歩競技スポーツ課課長から「国が進める女性活用政策〜女性アスリートに対するスポーツ庁の支援・取組について〜」と題して、女性アスリートや女性メダリストが増えてきている現状と競技面における女性アスリートの強化の重要性、行政における女性スポーツ支援の取り組みが紹介されました。そして最後に、「女性の団体役員等への積極的な登用を各競技団体に期待します」という、鈴木大地スポーツ庁長官からのメッセージが付け加えられました。
続いて、平成26年度JOCスポーツ賞「女性スポーツ賞」受賞団体活動報告として、日本女子テニス連盟の飯田藍会長が登壇。女性スポーツ賞は平成26年度から新設された賞で、日本女子テニス連盟が初めての受賞団体となります。飯田会長からは、連盟が発足に至った経緯や、発足当初は家庭婦人にテニスを広めることを率先して実行したこと、それが次世代での選手強化につながったことなどが話されました。今後の課題としては、次世代のリーダーの育成を挙げ、「各競技にも女性で活躍されている方はいますが、まとまることが重要です。女性が自分たちでやろうとしないと、他力本願ではできません」と他の競技団体に向けて訴えました。最後に、「今回の受賞を3万3000人の会員はすごく喜んでいますし、やってきたことへの誇りを持つことができたことに感謝しています」と謝辞を述べました。
女性スポーツ専門部会の最後は、山口香部会長による「JOC女性スポーツ専門部会の歩み−変化と今後に向けて−」のスピーチ。女性スポーツ専門部会の発足の経緯を3つの時期に分けて説明し、特に各競技団体の役員構成における男女比が取り上げられました。女性役員がいない団体からは、女性の競技者比率が低いこと、家庭の事情などで引き受け手がいないこと、競技寿命が長い競技では現役にこだわる人が多く、役員になりたがらないことなどが理由として挙げられました。逆に、ここ数年で女性役員が増えた団体からは、組織改革の際にスポーツ界以外からの人材活用が進み、それに伴って女性役員が増えた経緯が紹介されました。そして、山口部会長からは自身が日本バレーボール協会の理事を務めている事例が紹介され、他の競技団体やスポーツ界以外の女性の起用を薦めました。
午後から行われたスポーツ環境専門部会のパートはグループディスカッションが行われました。最初にIOC持続可能性とレガシー委員会の委員でもあるJOCスポーツ環境専門部会の田中丈夫部会員から、IOCの「スポーツと環境」に関する現状が報告されました。プレゼンの冒頭では、IOCの取り組みが環境だけではなく、持続可能性となったこと、またその持続可能性とは、将来世代のことを考えて環境や社会、経済のバランスを考慮した行動を選択することであるという説明があり、続いてIOCの取り組み、そして東京2020大会においての持続可能性に配慮した運営計画などが報告されました。
その後は9グループに分かれて事前に用意された「指導者を通じたアスリートへの啓発」、「スポーツと環境に関するNFでの目標設定」、「環境啓発ポスターの大会プログラムへの掲載」、「スポーツと環境に関するアスリートメッセージ映像の作成」、「NFと連携したスポーツと環境啓発イベントの開催」という5つのテーマについて議論が行われました。「スポーツと環境に関するアスリートメッセージ映像の作成」を選択したグループからは、SNS等が発達している状況から映像による情報発信の重要性が挙げられ、NFとJOCが連携した映像の制作を訴えました。また、「NFと連携した、スポーツと環境啓発イベントの開催」を選択したグループからは、ゴミ拾いなどのイベントが提案され、そういったイベントを個々のNFだけではなく、地域別にNFやNPOの団体と一緒に取り組むことでさらに可能性が広がる、といった意見が出されました。
最後に行われたのは、指導者、保護者などアスリートを取り巻く環境について検討するアントラージュ専門部会のパート。冒頭に高橋尚子部会長からあいさつと、「JOCアントラージュガイドライン」の策定、「アスリートの育成環境の改善に向けたフォーラム」の開催、そしてコーチ向け/保護者向け教材の開発といったアントラージュ専門部会の活動報告が行われ、高橋部会長は「アントラージュの教育プログラムができましたので、今日はみなさんにどういったものかを見ていただいて、活発なご意見、有意義な時間になるようにお願いします」とコメントしました。
続いて、「あらゆるリスクに関する情報提供 警察庁・警視庁との連携」として、警視庁組織犯罪対策第3課担当者から、平成22年の大相撲の野球賭博と八百長事件の事例紹介があり、反社会的勢力との接触を避けることはもちろん、仮に何か事件に巻き込まれた場合でも「安易な対応をさせない。1人で悩ませない」ことの徹底を訴えました。
続いては、出席者が実際に指導者向けの教材の一部のワークシートを実施。自身が指導者になったと仮定して、各質問に答えて自身の指導スタイルを見つめ直しました。そして、これからの指導者に求められる「資質や能力」についてのディスカッションが行われ、コミュニケーション力、アスリートからの信頼、さまざまなことの危機管理など競技のことだけではない部分の知識も挙げられました。
高橋部会長は「信念や哲学といったものを扱う教材はあまりありません。トップ選手の指導者だけでなく、ジュニアの指導者やその家族にもやっていただきたいと思います」と教材の広い利用を訴え、齋藤泰雄アントラージュ専門部会副部会長からは「選手を守るのもアントラージュですし、選手の能力を生かす立場にいる人もアントラージュです。NFもJOCもアントラージュですので、同じ立場からそれぞれ共有し合って、選手を第一に考えてやっていきたい」と選手の周囲にいる人々の連携を訴えました。
フォーラムの最後には、松丸喜一郎総務委員長が「それぞれの専門部会の役割、目標、NFにとって何をやっていけばいいのかということが伝え切れていない部分がありましたので、今回は皆さんに具体的にどういうことをやってもらいたいかを工夫して実施したつもりです」とフォーラムの狙いを説明。そして「国際スポーツ界が求めているものに答えられるようにNFとJOCが一緒になってがんばっていきたい」と締めくくりました。
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