公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は10月8日、トキハ会館(大分県大分市)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
アスナビは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに37社51人(内定者含む、2014年11月26日現在)の採用が決まりました。
今回の説明会は大分県との共催。県内企業を対象に行われ、53企業67人が参加しました。
冒頭あいさつに立った二日市具正大分県副知事は「本日の(説明会の)サブタイトル『夢実現。大分から世界への挑戦』。これを実現するには、まず日本トップレベルの実力を持つ本県出身選手の方が地元に就職をして、安定した形で競技に打ち込める環境を整えていくということが一番大事だと考えております。大分版のアスナビ説明会がトップアスリートの有意義な出会いの場となることを期待しています」と、地元出身選手への支援を呼びかけました。
福井烈JOC理事選手強化副本部長は「『県』と共催で行うアスナビ説明会は今回が初めてです。多大なるご協力を賜り、大変感謝しています。本日、大分県出身で、日本を代表するアスリートの生の声を聴いていただき、地元企業の皆様にも日本のトップスポーツ・アスリートのあり方について、あらためて考える場としていただきたいと思います」とアスリートの雇用検討を訴えました。
小倉義人大分県経済同友会代表幹事は「大分で育てたアスリートが世界の舞台で活躍することは、必ずや大きな元気を与えてくれると信じております。そのために世界を目指すアスリートの生活環境を安定させて、安心して競技を続けられる環境をあげたいという主旨に、経済団体として賛同しています。どうぞ皆様方の企業の活性化にもつなげる機会になると受け止めていただきて積極的なご参加をお願いします」と、説明会開催の意義を語りました。
岡野貞彦東京経済同友会常務理事の紹介が終わると、2008年北京オリンピック陸上競技代表の成迫健児選手が登壇。成迫選手は、佐伯市教育委員会に職員として勤務しながら、2016年リオデジャネイロオリンピックを目指しています。会場に集まった県内の企業関係者に向かって、「アスリートは常にスランプとの戦いであり、立ちはだかった壁に対し乗り越えていかなければならない試練を何度も経験しております。自分を高めたいという自己実現欲求も非常に強く、どの世界でも一流を目指す姿勢ができていると思います。業務を行いながら競技を続けていく環境の中でも、企業にとって貴重な人材になることは間違いないと思います」とアスリートの強みをアピールしました。
さらに、ホッケー女子代表として2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドンと3大会連続でオリンピックに出場し、現在は県内中学校で体育教諭をしている岩尾幸美さんが「私はここ大分県の地から3度の五輪出場の夢をかなえました。それはともに夢を追いかけてくれる組織や人々の存在があったからです」と、周囲への感謝を交えながら、バックアップの大事さを語りました。
八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターからのアスナビ事業説明が終わると、阪神酒販株式会社ストラテジックストリビューション事業本部の中尾亘さんが採用事例紹介を行いました。同社は2008年にセパタクローの寺島武志選手を採用。その後、アスナビを通して梶川洋平選手(陸上競技)、田中幸太郎選手、北村公平選手(ともにレスリング)の3選手を迎えるなど、多くのアスリート社員と接しています。中尾さんは、アスリートの仕事ぶりについて「非常に集中力が高く、お客様とのコミュニケーションも良くできる」と評価。短時間で高い生産性を出すための取り組み方は「非常に参考になったところがある」と話しました。
2013年5月13日入社の梶川選手は、入社後に全日本選手権で初優勝。同社の採用アスリート代表として登壇し、「会社に理解されているのは非常にありがたいです。競技に集中ができます」と感謝の言葉を語りました。社業についても「より積極的に社会に出ていくことが大事」とフルタイムで勤務。営業として新規顧客の開拓、お客様対応などに取り組む様子を語り、充実感をにじませました。
説明会の後半には、就職を希望する現役アスリート5選手がプレゼンテーションを実施。会場を埋めた企業関係者に、地元の大分県や競技への思いを語り、自己アピールをしました。
■一丸尚伍選手(自転車)
「先日のアジア大会で日本記録を更新し、銅メダルを獲得しました。今後の目標は、2年後のリオデジャネイロオリンピックで入賞し、6年後の東京オリンピックでメダルを取ることです。私は大分が大好きです。高校時代に過ごした別府競輪場で練習し、大分の選手として五輪に出場し、この素晴らしい大分県をもっとアピールしていきたいと思います。私にチャンスをください。よろしくお願いします」
■佐藤真奈美選手(アーチェリー)
「高校時代は国体の大分代表として、個人優勝、団体優勝、競技別総合優勝を経験しました。現在は日本代表として、2年後のリオデジャネイロオリンピック、6年後の東京オリンピックに向けて練習に励んでいます。私はアーチェリーで誰にも負けない集中力を培ってきました。大分の方たちに応援してもらえる選手になりたいです。所属させていただく会社には精いっぱい貢献していきたいと考えています」
■村上仁紀選手(フェンシング)
「大学時代は代表チームに所属し遠征や大会に出場しましたが、卒業後は高校で指導者をしていました。しかし今は、生徒に対して言っていた『夢を諦めるな、夢を諦めなければ必ずかなう』という言葉を自分に投げかけています。私はもう一度世界に挑戦します。この大分には素晴らしい施設があり、指導者もたくさんいらっしゃいます。自分が広告塔になり、この素晴らしい大分を世界に配信したいです」
■大石栞菜選手(フェンシング)
「(フルーレから)エペ種目に転向し、リオデジャネイロと東京オリンピックを目指しています。日本人のエペ選手では私しかできない“振り込み"が最大の武器です。現役中は東京中心の活動になりますが、引退後は地元大分に戻り、世界に挑戦した姿勢を示しつつ、次世代のジュニアの育成にも励んでいきたいです。オリンピックを目指す私の背中を、大分県の皆様にぜひ押していただければと思います」
・太田雄貴選手(フェンシング) ※応援メッセージ
「大石さんとは彼女が小学生の時に出会いました。負けん気が強い姿を、今でも覚えています。そんな彼女ももう22歳です。マイナースポーツはなかなか就職先が見つからず、夢半ばで諦めてしまう人が多いです。彼女はオリンピックに出られるチャンスが十分にあると思います。ぜひ地元の皆さんで大石栞菜をオリンピックまで導いてあげてほしいなと思います」
■板井淳記選手(パラリンピック・卓球)
「私の目標は東京パラリンピックでの金メダル獲得です。2012年ロンドンパラリンピックでは、世界のトップに勝つためには、今ある環境を離れてでも競技に集中していくことが必要だと感じました。私には障がいがありますが、限界を作らず何事にも挑戦してまいりました。私がプレーし、もっとたくさんの方に知ってもらうことで、障がい者卓球をスポーツとして楽しみ、魅力あるものにしていければと思います」
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