公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は10月14日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
アスナビは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに33社46人(内定者含む、2014年10月14日現在)の採用が決まりました。
今回の説明会は東京ニュービジネス協議会(NBC)との共催で行われ、22企業29人が参加しました。
トップアスリートが練習する味の素トレセンの施設見学後に始まった説明会。高橋ゆきNBC理事/国際人材教育委員会委員長は「日の丸を背に活躍する選手たちに何か力になれたら」と、今回で4回目を迎えるアスナビ説明会開催への思いを語りました。福井烈JOC理事選手強化副本部長は、就労や活動資金の捻出に苦心するアスリートの現状を伝え支援を願い、「トップアスリートは数々の修羅場をくぐり抜けてきて、肝も据わっています。周りの方々に良い刺激になると信じています」と、アスリートの強みを訴えました。
続いて、八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターが、採用検討にあたっての雇用形態、社名の使用、選手肖像利用などの具体的な内容を説明しました。
さらに採用事例紹介として、株式会社浅野歯科産業代表取締役の浅野弘治氏が登壇。同社では2014年2月25日付けでビーチバレーの村上斉(ひとし)選手を採用しています。浅野代表取締役は、費用面や業務面での懸念があったものの、「やれないことばかり考えずに、やれる方法を柔軟に考えてみよう」という姿勢で採用を検討。今では村上選手の応援を通じて社内に仕事とはまた違う一体感が生まれたそうで、「入ってくれて本当に良かった。彼の存在や考え方に刺激をもらい、私どもにもたらしたものが非常に大きかった」と話します。営業職として奮闘するほかに、顧客が関連する業界の講演会に呼ばれるなど、他社との差別化にも一役買っていると採用のメリットを語りました。
村上選手も競技を続けながら働ける今の環境に感謝しながら、「仕事をするからには、実際の業務で会社に貢献したい」と、社業への貢献、キャリア形成にも積極的な姿勢を示していました。
最後に、アスナビを通じて株式会社久慈設計に今春入社した19歳の小西あかね選手(ソチオリンピックアイスホッケー女子代表)が登場。「毎朝7時のミーティングに間に合うように会社に行くのが大変です(笑)。でも、社員の皆さんも優しく、とても安心して会社になじむことができました」と、早朝勤務で仕事と競技を両立させている様子を話しました。
説明会の後半には、就職を希望する現役アスリート6選手が、動画上映や実技披露を含めたプレゼンテーションを実施。参加者は身を乗り出して実技の様子を撮影するなど、選手たちの創意工夫したアピールに拍手喝采。会場は大いに沸きました。
■小黒(おぐろ)義明(スケート・ショートトラック)
「長野オリンピック以降、(日本は)メダルから遠ざかっていますが、次の平昌では私がメダルを獲得したい。それは使命だと思っています。所属会社へ貢献する方法を3つ考えました。1つめは競技で活躍し、宣伝効果に貢献すること。2つめは会社で働きながら競技を続け、社員の方々に世界で戦うアスリートを身近に感じてもらい、社内の一体感を作っていくこと。3つ目はオリンピックという高い目標に向けた考え、行動を役立てたいです。感謝の気持ちを忘れず、常に会社のことを頭に置きながら活動したいです」
■大西富士子(セーリング)
「自然相手のこの競技に魅力を感じています。競技では忍耐力を、また競技を教える仕事を通じ、だれとでも打ち解けるコミュニケーション能力を養うことができました。オリンピックは次のリオで3度目の挑戦です。また東京オリンピックも目指しています。そのためには練習時間や競技資金が必要ですが、今までのアルバイトでは不十分です。この機会に支援をいただければ必ず自分の目標に近づけると思っています。努力し強くなり、みなさんにも応援して良かったと思われる選手になります。ぜひよろしくお願いいたします」
■矢澤亜季(カヌー)
「私は大学2年のときからNHK杯(全日本選手権)を4連覇中で、日本のトップを走っています。私の強みはスピードです。リオでは金メダルを狙います。2020年に向け、今は速いだけでなく強い選手になるため、技術以外にメンタルを鍛え本番に実力発揮できるよう頑張っています。今年のワールドカップでは自己最高の10位となりました。また今月のアジア大会では銅を獲得しました。流れに逆らいながら漕ぐ私の姿は、勇気を与えることができると思います。是非応援よろしくお願いします」
■笹原友希(ボブスレー・スケルトン)
「(プレゼン用の動画は)秋田のCNA(秋田ケーブルテレビ)の市民編集室で2日かけて自分で編集しました。今の目標は(出身地の)秋田を発信しながら4年後にメダルを取ることです。このままじゃ終われないという気持ちが常にあります。ソチに出るまではお前じゃオリンピックは無理だとか、いつまで趣味を続けているんだと言われました。秋田でやるのは無理だとも言われます。そんな中で応援してくれる方々に、結果を出して喜んでもらいたいと思っています」
■池田信太郎(バドミントン)
「バドミントンは海外の大会が多く、経費も莫大で、多くの企業に支援をいただかないと厳しいです。自分でも(資金集めとして)クラウドファンディングをやり1カ月で250万円が集まりました。本当に多くの支援者の方から応援していただき、このままでは終われないと思いました。僕の目標は、男子ダブルスで世界一になること、そして新しいものに挑戦したいということです。一生バドミントンをやっていきたいのですが、年齢も34歳なので、心の中でラストチャンスだと思っています。宜しくお願いします」
■柿崎史穂(カヌー)※ビデオ出演
「風と波に左右され思い通りにいかない競技ですが、自然を味方につけ、四季折々の景色を楽しむことが競技の魅力です。私は、北京、ロンドンと目前で出場を逃し、一度は競技を離れました。しかし周りの方々が『オリンピックに行ける』と信じてくれ、私を応援してくれました。復帰後は今までにないほど集中し、その年に代表復帰。全日本選手権で初優勝し、今年のアジア大会では銅メダルを獲得することができました。何一つ妥協せず、夢をつかみたいです。社員の方々と一緒に、夢と希望を分かち合いたいと思います」
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