日本オリンピック委員会(JOC)は27日、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を経団連会館で行いました。アスナビとは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに25社33人(内定者含む、2014年5月27日現在)の採用が決まりました。
今回、初めて説明会を開いた日本経済団体連合会(経団連)では、昨年11月にスポーツ推進委員会を設けるなど、支援体制を強化しています。冒頭にあいさつに立った竹田恆和JOC会長は、「日本のアスリートが世界のアスリートと真剣に戦う姿は、国民、特に若い方々に感動や活力を与える大きな力を持っています。ぜひとも皆さんにご支援いただきたく、心からお願い申し上げます」と、アスリートが持つ“力”をアピールし、支援を訴えました。
■2人のオリンピアンが事例を紹介
中村芳夫経団連副会長・事務総長のあいさつに続き、アスナビを担当する福井烈JOC理事・選手強化本部副本部長が活動詳細を説明。アスナビで就職をしたアスリートを代表し、北京オリンピックとロンドンオリンピックの2大会に出場したビーチバレーの朝日健太郎さんと、ロンドンオリンピックの競泳女子400mメドレーリレーで銅メダルを獲得した上田春佳さんが自身の事例を紹介しました。
大学卒業後に新卒としてキッコーマンに入社をした上田さんは、「大学卒業後はそのままスイミングクラブに就職するかたちもありましたが、それでは自身が成長できないと思ってアスナビに登録しました」とアスナビ活用の動機を明かし、引退後の現在は正社員として人事と広報に携わっていると話しました。また、競技生活の終盤でインターネット関連企業のフォーバルに就職した朝日さんは、「企業とアスリートの接点は様々で、こうでなければいけないというものはありません」と述べ、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を機に新たな展開が生まれることに期待を寄せました。
■7選手がプレゼンテーションでアピール
そして、八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターのコーディネートの下、就職を希望する7選手によるプレゼンテーションがスタート。選手たちは緊張した面持ちながらも、これまでの実績や現在の練習環境、自身の強み、企業への貢献度などを熱心に説明しました。
谷口令子選手(7人制ラグビー)
「高校3年生の春、セブンズラグビーがリオデジャネイロオリンピックから正式種目に選ばれるということを耳にし、オリンピックに出場して金メダルをという目標を持つようになりました。代表チームの中での役割は、『最も大事な場面で、トライを確実に決めてくれるところ』だとヘッドコーチに言われています。採用いただきましたら、会社の看板を背負い、しっかりとアピールしたいと思っています」
横尾千里選手(7人制ラグビー)
「私はラグビーから人を思いやるということを学びました。その思いやりはグラウンドの上だけではなく、普段の生活にもつながり、信頼関係につながっていくものだと感じています。ご支援いただいた際には、その相手を思いやる気持ちと、勇気を持って前に進み続ける気持ちを持ち続けて、精いっぱい努力し続けたいと思います」
岩本憧子選手(スキー・フリースタイルモーグル)
「4年後の平昌オリンピックには、必ず日本のエースとして出場し、メダルを獲得したいと思っています。私は11年間モーグル競技を続けてきて、3つのことを学んできました。魅せるという意識を持つことの大切さ、勝負強さ、忍耐強さです。社員のみなさまに目標に向かって努力している姿を見ていただくことで、刺激や元気を感じていただけたらと思っています。会社の看板を背負って、全力で挑みたいと思います」
大橋里衣選手(フェンシング)
「大学卒業後は、地元の高校で保健体育の非常勤講師として競技を続けてきました。効率的なやり方を自分で探して頑張ってきたのですが、オリンピックを目指すには、東京のナショナルチームでの練習にできるだけ多く参加しないと上には行けないと痛感したため、今は仕事をやめ、貯金を切り崩しながらできる限り上京して練習しています。ご支援していただける企業様に少しでも刺激になるような活動をしていければと思います」
山口学選手(トランポリン)
「現在は指導者をつけず、自らプランニングしてトレーニングを行っています。練習メニューに創意工夫を加える事によって練習の効率化を図ることができ、昨年の世界選手権ではシンクロ種目で金メダルを獲得できました。自主性や創意工夫をする能力は社会生活においても十分生きるのではないかと考えています。この能力を発揮し、企業のPDCAサイクルをフル回転させていきたいと思っています。企業活性化の起爆剤として是非ご検討をよろしくお願いします」
千田健太選手(フェンシング)
「ロンドンオリンピックでは団体で銀メダルを獲得しました。現在はリオデジャネイロオリンピックに向けて競技生活を送る毎日ですが、競技に専念できる環境とは言い難いです。アスリートとして限界に挑戦する姿や、可能性を信じる姿勢を身近に感じていただくことによって、社員のみなさまが元気になって、結束感や士気を高めていただくことに貢献したいと思います。また、オリンピックの活動を通して全世界に印象付ける事にも貢献していきたいです」
矢澤亜紀選手(カヌー)※遠征中のためビデオによるプレゼンテーション
「ロンドンオリンピックの出場権を逃した悔しさをバネにリオデジャネイロオリンピックでも、東京オリンピックでも金メダルを取りに行きます。私は人よりも速く体を動かすことができるのが強みで、スピードを持ち味としています。流れに乗っているときはもちろん、流れに逆らって漕ぐ私を応援していただくことで、社員の方々に元気と勇気を感じていただけると思います」
説明会の最後には鈴木大地JOC理事・日本水泳連盟会長が登壇。アスナビで採用を決めた第1号、競泳の古賀淳也選手を例に挙げて「彼は世界選手権で金メダルを取ったこともある選手ですが、その後低迷していた時期がありました。それでも今年4月に結果を出し代表に復帰。彼がここまで続けられたのも支援のおかげです」と、就職先の支援に感謝。より多くの選手の未来がつながるよう、オリンピアンのひとりとして、集まった企業担当者に訴えました。
JOCでは、今後も一人でも多くの選手と一社でも多くの企業が双方にとってプラスになる雇用関係を実現できるよう、「アスナビ」を通じた就職支援を行っていきます。
【写真提供:アフロスポーツ】
■プレゼンテーション動画
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