日本オリンピック委員会(JOC)は10月9日、JOC女性スポーツ担当者会議を開催した。各競技団体の女性委員会や女性ワーキンググループの担当者や役員など約60名が参加し、意思決定機関に女性を増やすことや女性役員の育成等について活発な議論を交わした。同会議は、「女性とスポーツ」に関する議題をJOCと各競技団体が共有し、解決に向けたネットワーク作りをするのが目的で、2003年4月から始まり、第3回目。
第1部は、女性スポーツに関するJOCの取り組みについて事例紹介が行われた。JOCではナショナルトレーニングセンターの開設に伴い、2008年から行っている選手強化事業「JOCスポーツアカデミー」の1つに「JOCキャリアアカデミー」がある。現役選手がより集中して競技に取組むためにも、引退後の生活設計などをサポートしようというプログラムだ。このJOCキャリアアカデミーで選手の引退後のキャリア支援を行っている小川みどりさんが、取り組みを紹介した。
小川さんは、女性アスリートの受講状況や実際のキャリア事情を紹介。月平均25人のキャリア相談のうち9割が女性で、引退後に何をしたらいいのか分からなくなる傾向があるという。価値観や志向をチェックすることで、やりたいことを探す支援を行っていると報告した。
また引退後のキャリアの事例として、アトランタオリンピックの陸上女子5000mで4位に入賞した志水見千子選手を挙げた。オリンピック後に引退した志水さんは、京都産業大学陸上部のコーチに就任するが、新しいことに取組もうと、妹と横浜市内にカフェを開業。そのカフェを地盤にして市民ランナーに少人数制のレッスンを行うようになって、改めて走ることの楽しさを再認識できた、というエピソードを紹介した。小川さんは「男性は指導者になる人が多いが、女性は結婚・出産のリミットもあり、人生の選択肢はさまざま。長い人生のなかで競技をしている時間はそれほど長くないので、やりたいことを見つけることが大切」と話した。
引き続き、共同通信社の三木寛史運動部次長による「記者の目からみた女性スタッフの活躍について」の講演が行われた。スポーツを取材する記者が登録している東京運動記者クラブの女性数は、全国紙3紙では125人中5人と少なく、女性の少ない職場であることを紹介。その原因として、深夜労働が多く、就業時間の短いシフトも組みにくいことを挙げ、「結婚や出産で一度離職すると戻るシステムがないのが現状」と話した。
一方で、「編集会議も男性ばかりで、男性視点でのニュース配信にならざるを得ない。読者層を広げるためにも女性視点は必要で、メディアは解決法を模索中だ」と、女性記者の必要性を強くアピール。「昔に比べて女性登用は進めている」と話した。
第2部はグループディスカッション。3つの班に分かれ、A班「各競技団体における女性役員・スタッフの受け入れについて」、B班「女性グループの組織について」、C班「スポーツ界への貢献に対する問題と対策について」をテーマに議論を行い、最後に発表が行われた。
「各競技団体における女性役員・スタッフの受け入れについて」では、女性が受け入れられなかった時代の役員が理事に残っていることで、女性が入る余地がない現状を問題提起。語学を身に付けたり、審判などの資格を取得したりすることで、道を切り開こうとの意見が出された。
「女性グループの組織について」では、女性委員会の有無は競技団体によって違うことが報告された。日本サッカー協会では、組織改革で女子委員会が出来た事例も紹介され、意思決定機関に女性を増やすためにも、積極的に女性グループが動く必要があるとした。
「スポーツ界への貢献に対する問題と対策について」では、女性のライフイベントに対する環境づくりや、女性の資質向上の機会を、スポーツ界で広げる必要性があると提案。大会でのチャイルドルームの設置やテレビ会議システム、さらに女性のキャリアデザインに関わる情報の提供などの対策が挙げられた。
田辺陽子JOC女性スポーツ専門委員は「個人で出来ることと、競技団体でできること、JOCが出来ること、それぞれが具体的に進めていきましょう」とあいさつ。平松純子JOC女性スポーツ専門委員長は「今回シェアできたそれぞれの競技団体の問題を、今後の改善への助けにしてほしいです」と締めくくった。
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