日本オリンピック委員会(JOC)は20日から22日までの3日間、味の素ナショナルトレーニングセンターで、2014年ソチ冬季オリンピックに向け、競技間連携を促進し、チームジャパンの一員としての自覚と責任、連帯感を強めることを目的とした合宿形式の研修会「The Building up Team Japan 2013 for Sochi」を開催し、日本代表選手団候補選手・スタッフ200名以上が参加しました。
■パズルやゲームで和気あいあい
初日、選手たちは緊張の面持ちで研修室に集合しました。開会にあたり、JOCの古川年正理事兼ソチ対策プロジェクト副委員長は「ロンドンオリンピックは選手たちの大活躍で、国民に多くの感動を与えましたが、ソチ冬季オリンピックでもみなさんの活躍を大いに期待しています」とあいさつしました。
まずはチームビルディングとして、参加者同士で出身地などお互いの共通点を探すゲームが行われ、異なった競技の選手が積極的に会話をする様子が早くも見られました。
次に選手たちはバレーボールコートへ移動し、1月1日から12月31日まで誕生日順に並ぶゲームに挑戦。当日が誕生日という選手もいて、会場は大いに盛り上がりました。
グループごとに分かれ、大きな板を使って見本通りに組み上げる速さを競う立体パズルではチームワークが試され、自ら リーダーとなって指示を出す選手もいました。
続いて行われたのは、竹筒やビールケースなど様々な物を使用したボール飛ばし装置作り。各チームが製作したオリジナルの装置を用いてボールをカゴに入れるゲームでは、成功したチームから歓声が上がるなど、盛り上がりを見せました。フィギュアスケートの羽生結弦選手は「工作が好きなのでとても楽しかったです」と笑顔で語りました。
その後、研修室に戻り、オリンピックに向けた肖像権、メディア活動、アンチ・ドーピングなどの情報提供セミナーが行われ、初日は終了しました。
■ロシア語講座や宇宙の話に選手たちも興味津々
2日目は開催地ソチの母国語であるロシア語講座からスタート。ロシア人の講師を迎え、約30人で1組になって、競技会場や街で役立つロシア語を学びました。参加者たちは実際に現地で使う可能性が高い言葉ということもあり、楽しみながらも真剣な表情で受講。最後は講師にロシア語で「スパシーバ(ありがとう)」と全員であいさつしました。
続いて、「夏から学ぶ」と題して、ロンドンオリンピック競泳日本代表の上野広治監督、平井伯昌ヘッドコーチ、松田丈志選手、寺川綾選手の講演が行われ、戦後最多11個のメダルを獲得した昨夏の活躍の秘訣を学びました。寺川選手は「笑顔で日本に帰って来られるように皆さんもがんばってください」とエールを送りました。
午後の講演ではJAXA宇宙飛行士の野口聡一さんが登場。野口さんは厳しい訓練に挑む際に「ただ焦って取り組むのではなく、『Slower is faster』(急がば回れ)の気持ちで取り組みました」と語り、選手たちは興味津々な様子で耳を傾けていました。フリースタイルスキー・モーグルの伊藤みき選手は「すごくシンプルだけど、奥が深いなと感じました」と野口さんの言葉に感銘を受けていました。
野口さんの講演終了後、人気アニメ「宇宙兄弟」から、参加選手にオリジナルTシャツのサプライズプレゼントが発表されると会場は割れんばかりの歓声に包まれました。
座学の後は、卓球場に移動して「ラリーに挑戦」と題しチーム対抗ゲームが行われました。参加者たちは1グループ8人で、続いたラリーの回数がどれだけ多いかを競い、慣れない卓球に悪戦苦闘する様子も見受けられました。終了後には同じ場所で練習中だった卓球の福原愛選手、石川佳純選手との記念撮影が行われました。
研修室に戻った一同は、日本体育協会スポーツ科学研究室の伊藤静夫室長から海外移動の時に悩まされる時差調整について対処法を学び、日頃から海外遠征が多い選手たちは真剣な面持ちで話を聞いていました。
この日の最後のプログラムはメディア・トレーニング。フリーアナウンサーの平井理央さん進行のもと、オリンピック出場の際に必要になるメディア対応を学びました。
■ロンドンの成功から学ぶ
最終日は3つの講演が行われ、まずは卓球のJOCナショナルコーチを務める前原正浩さんが登壇。ロンドンオリンピックでオリンピック史上初の銀メダルを獲得した卓球日本女子代表チームの戦略として、「シナリオをどう描くかが勝負でした」と語り、メダル獲得のために練った秘策を紹介しました。これには多くの指導者が関心を寄せていました。
続いて、人材教育などを手がける小田全宏さんが、太陽のように明るく物事を思考する「陽転思考」という考え方を紹介し、脳の働きの素晴らしさを実演しました。30個の言葉を順番通りに暗記し、復唱してみせた小田さんに対して選手たちは感嘆の声を上げ、中でもスピードスケートの加藤条治選手は「脳の使い方の実演は手品みたいでびっくりしました。ぜひ教えてほしいです」と驚きを隠せない様子でした。
そして最後は、サッカー女子日本代表・佐々木則夫監督の講演が行われました。佐々木監督は銀メダルを獲得したロンドンオリンピックについて「自分を信じ、仲間を信じる。それがなでしこの最大の戦術です」とチームワークの重要さを語り、オリンピックで勝つための心構えを力説しました。同じチームゲームでもあるアイスホッケーの大澤ちほ選手は「なでしこに続き、笑顔で帰国できるようにソチで頑張ります」と佐々木監督と固い握手を交わしていました。
総括および閉会のあいさつにはJOCの橋本聖子理事兼ソチ対策プロジェクト委員長が立ち、「バンクーバーでは、チームジャパンという形で臨めたことがいい結果につながりました。ソチに向けてもぜひ、自信と誇りを持って臨んでほしいです」と参加者への激励メッセージを送りました。
2泊3日にわたる研修会を終えて、スキーフリースタイル・モーグルの上村愛子選手は「このような研修合宿は初めて参加しましたが、座学はとても勉強になりました。チームジャパンとして一緒に戦えたらいいなと思っています」と語り、スキー・ジャンプの梨沙羅選手は「いろいろな競技の人から刺激をもらって、一緒に代表選手になりたいと思いました。この合宿でいろいろな人と交流できて視野も広がりました」と感想を述べました。
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